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注目の感想:山の客席にただ坐る
この記事を読んで「山って、こんなにも自由で優しいものなんだな」と心が温かくなりました。
都会のど真ん中でカフェを営む70代の女性と、マタギとして山を案内する宿の主人。
一見、まったく違う世界で生きている二人が、山での時間を通して交わしたやり取りが、とても印象的でした。
山は決して人の期待に応えるためにあるものではない。
山が「好きなように楽しんでいる姿」に、たまたま私たちが立ち会っているだけ。
そんなメッセージが、じんわりと心にしみわたる素敵なエピソードでした。
70代女性の「マタギへの憧れ」から始まる物語
今回の主人公は、東京で長年カフェを営む70代の女性。
「昔からマタギに惹かれているんです。なんだか神話みたいじゃない?」
その一言で、この物語にグッと引き込まれました。
マタギというと、山の厳しさや孤独と向き合うイメージがありますが、都会育ちの彼女が山に何を求めているのか、とても気になります。
しかも、小型のザックひとつで山に挑む身軽さ!
この自由さと好奇心にあふれた姿勢が、物語全体を柔らかくしてくれていました。
「最高!」のひと言が教えてくれた山の魅力
翌朝、夜明けの森を見たいと6時に出発した二人。
しかし、天気は曇り空。霧も立ちこめ、小雨まで降るあいにくのコンディション。
「これはちょっと可哀想だったかな…」と思った案内人の心配をよそに、彼女は足を止めてこう言います。
「なんだか最高!」
その理由がまた素敵でした。
「東京でどれだけ“いい音楽”に囲まれていても、こういう“無数の自然音”は味わえないわ。」
雨が木の葉をすり抜ける音、土に吸い込まれる音、風の流れの中で何かが囁くような音…。
どれもバラバラなのに、一緒になると不思議と調和している。
「絶景」や「ドラマチックな瞬間」ではなく、何気ない自然の音や気配に価値を見出す。
そんな彼女の感性に、案内人も思わず感心してしまいます。
「あったかい」の一言が伝える、自然とのつながり
さらに森の奥で獣道を発見した場面も印象的でした。
雨上がりの地面には獣の足跡がくっきりと残っていて、「怖くないんですか?」と聞かれた彼女はこう答えます。
「コーヒーを運ぶ最中にオーダーが重なって、お客さん全員が文句を言い始めるときの方がずっと怖いわ。」
このユーモアたっぷりの返答に思わず笑ってしまいました。
さらに、足跡に手を当てて「あったかい」とつぶやく彼女。
実際には冷たいはずの足跡から、そこを通った生き物の「ぬくもり」を想像する。
自然を難しく考えず、素直な好奇心で接することで、山の世界がもっと身近に感じられる。
そのことを、彼女は自然と体現していたのです。
山が見せた、誰のためでもない「色のショー」
物語のハイライトは、朝の8時過ぎに訪れました。
霧が一気に晴れ、眼下に広がったのは紅葉のモザイク模様。
雨に濡れた葉がより鮮やかに色づき、雫が光を受けてキラリと輝く。
さっきまでの「音の世界」が、今度は「色の世界」に変わった瞬間でした。
その絶景を前に、案内人が「きれいですね」と声をかけたとき、彼女が言った一言が心に残ります。
「こういうのは、誰のためのショーでもないのね。山が勝手に楽しんでいるところに、私たちがたまたま居合わせただけなのね。」
この言葉が、この話のすべてを表しているように思いました。
山は誰かに見せるためにあるのではなく、
山自身が自然のリズムで楽しんでいる。
その一瞬に「たまたま」立ち会えたことが、何よりの奇跡。
最後に:自然を楽しむ理由は、人それぞれでいい
下山後、彼女は慣れた手つきでコーヒーを淹れながら、静かな時間を過ごします。
案内人も、これまでの「山は厳しさを学ぶ場所」という思い込みから解放されたような気持ちになります。
この記事を読んで改めて感じたのは、「自然を楽しむ理由に正解なんてない」ということ。
▶ なんとなく惹かれるから
▶ ただ静かに過ごしたいから
▶ 写真を撮りたいから
▶ 誰かと一緒に歩きたいから
どんな理由でも、山は思いもよらないショーを見せてくれる。
それは決して派手な絶景だけではなく、音や香り、風の動きといった、静かな奇跡なのかもしれません。
まとめ:山がくれる「何気ない奇跡」を楽しむ心
✔ 70代女性の自然への素直な好奇心が心に響く!
✔ 「音の世界」から「色の世界」へ、山が見せてくれたショーが美しい。
✔ 自然を楽しむ理由は人それぞれ。山はいつでも予想外の表情を見せてくれる。
この記事を読み終わった後「山に行ってみようかな」とふと思いました。
絶景や特別な体験を期待するのではなく、ただ風の音を聞いてみる。
それだけでも、きっと自分だけの「山の楽しみ方」が見つかる気がします。
自然がくれる静かな驚きを、次はあなたも感じてみませんか?