38 深海魚 コピペwiki 次世代バトル漫画賞 18679文字
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深海魚
2深海魚の進化と系統
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魚類の深海への進出が始まったのはいつごろか、はっきりしたことは分かっていない。深海はきわめて安定した環境であり、少なくとも真骨類の著しい多様化が起きた中生代白亜紀より前には、すでに魚類は深海の住人になっていたと見られている[97]。古生代石炭紀後期(約3億年前)の地層から出土したヌタウナギ科の唯一の化石種 (Myxinikela siroka) は、多くの点で現生種と変わらない形態を有していたが[98]、その眼球は現存するヌタウナギ類とは異なる機能的なものであった[99]。深海への適応がどのように進んだのかを知るためには、化石記録に基づく経時的な解析が必要となるが、これまでに知られる深海魚の化石は非常に乏しい[注釈 9]。
現生の深海魚の大半を占めるのは条鰭綱に属する魚類、とりわけ真骨類の仲間である。真骨類の中でも原始的なグループが多いという特徴があり、特に中層遊泳性の深海魚ではその傾向がはっきりと認められる[101]。より進化の進んだ高位群であるスズキ目は、現代の浅海でもっとも繁栄するグループであるが、含まれる深海魚の割合は著しく少ない。
このように、早期に出現したグループに深海魚が多く、比較的新しい群には少ない理由として、浅海での生存競争に遅れをとった古い魚類が逃げ込んだ、いわば「安息の地」が深海であったためと考えられてきた[9]。しかしこの説は1950年代に否定され、以降深海魚は進化系統的に大きく2つの世代(一次性 ancient および二次性深海魚 secondary)に分けて考えられるようになっている[1][9][11]。
一次性深海魚は外洋性深海魚とも呼ばれ、ワニトカゲギス目やハダカイワシ目など遊泳性深海魚が主に含まれる。彼らは出現初期から深海に進出し、管状眼・発光器など浅海魚からかけ離れた特異な形態、および日周鉛直移動など独自の生態を、非常に長い時間を掛けて特化させたと見られている[9]。
二次性深海魚は陸棚性深海魚の別名を持ち、タラ目やアシロ目など底生魚が所属する。彼らは初期の進化を浅海の海底で経験したあと、一次性深海魚よりも遅れて深海底に進出するようになったと考えられている。このため、二次性深海魚が所属する分類群には浅い海で暮らす魚類も多く含まれるほか、形態的にも浅海魚と極端な変化が見られないことがしばしばある[9]。
以下のリストは、魚類(無顎類・肉鰭類を含める)の生物分類の中から、深海魚を中心に構成される科を系統順位に従って配列したものである。分類方法はNelson(2006)の体系に基づいている。
無顎類
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現生はヌタウナギ目・ヤツメウナギ目の2目のみで、後者は主に淡水産。
軟骨魚類
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軟骨魚類にはいわゆるサメ・エイおよびギンザメの仲間が所属し、底生性の深海魚が多く含まれる。
ギンザメ目 Chimaeriformes 約30種の全てが深海の底部で生活する。強靭な顎を持ち、貝類・甲殻類など硬い殻を持つ埋在動物を捕食する。
ネズミザメ目 Lamniformes 表層から深海にかけて広い生活範囲を持つ種類が多く、純粋な深海性魚類は少ない。
メジロザメ目 Carcharhiniformes サメ類として最大のグループであり、多くは浅海で生活しているが、トラザメ科の一部の属(ヘラザメ属・ナヌカザメ属・ナガサキトラザメ属・ヤモリザメ属)に深海魚が含まれる[102]。多くは大陸棚で暮らす底生魚で、ほとんど泳がない。
カグラザメ目 Hexanchiformes 含まれる5種すべてが中深層の海底付近に住む深海魚。
キクザメ目 Echinorhiniformes 以前はツノザメ目に含まれていたグループ。所属する2種はいずれも底生性深海魚。
ツノザメ目 Squaliformes 約100種の大半が深海底生性。アイザメ科には6,000メートル以深からの採取記録もあるが、その信頼性は疑問視されている[102]。
トビエイ目 Myliobatiformes 多くは大陸棚から大陸斜面にかけて住む底生魚で、分布範囲は浅海から深海まで多岐にわたる。
条鰭類
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条鰭綱には現生の硬骨魚類のほとんどが含まれ、所属する約40目のうち半数は深海への適応が見られる。
ソトイワシ目 Albuliformes ソコギス亜目の大多数が底生性深海魚。ソコギス科の仲間は深海性の表在動物(イソギンチャクやクモヒトデ、ウミユリ、ウニなど)を選択的に捕食する。
ウナギ目 Anguilliformes 主としてアナゴ亜目に深海魚が多数含まれる。シギウナギ科・ノコバウナギ科は中層遊泳性、その他のグループは底生性。
フウセンウナギ目 Saccopharyngiformes 所属する28種のすべてが深海魚で、中深層から漸深層を漂泳する。
ニギス目 Argentiniformes かつてキュウリウオ目に所属していた一群。約200種のほとんどが中深層漂泳性の深海魚で、一部に底生魚も含まれる。
ワニトカゲギス目 Stomiiformes 所属する約400種のほぼ全種が中深層遊泳性。個体数がきわめて多量で、発光器官を持つ種類も多い。
シャチブリ目 Ateleopodiformes 12種が含まれ、すべて底生性。
ヒメ目 Aulopiformes チョウチンハダカなどの底生性魚類と、ミズウオなど遊泳性深海魚をともに含む。雌雄同体の魚類が多数含まれることが特徴。
ハダカイワシ目 Myctophiformes およそ250種が所属し、ワニトカゲギス目魚類と並ぶ中深層遊泳性深海魚の代表的存在。ほぼすべての仲間が発光器を有する。極海を含めた全世界の海洋に分布し、その総生物量は莫大である。
アカマンボウ目 Lampriformes 約20種の大半が深海性で、まれな種類が多い。
ギンメダイ目 Polymixiiformes 10種のみを含む小さなグループで、全種が中深層底部に生息する。
タラ目 Gadiformes 所属する500種超の多くが深海魚。ソコダラ・チゴダラの仲間は中深層から深海層に幅広く分布する底生性魚類で、種類・個体数ともに多い。
アシロ目 Ophidiiformes アシロ科の魚類はソコダラ類と同様、数の多い重要な底生性深海魚である。
アンコウ目 Lophiiformes 記載される300種あまりのほとんどが深海で生活する。チョウチンアンコウ上科の仲間は、漸深層遊泳性の深海魚として代表的な存在である。ほかのグループは底生性。
クジラウオ目(カンムリキンメダイ目)Stephanoberyciformes 体型や体色に特色が多く、ほかの目との区別が容易な一群。中深層から漸深層で遊泳生活をし、特にクジラウオ科魚類は1,800メートル以深で支配的な存在である。
キンメダイ目 Beryciformes サンゴ礁域から深海まで幅広い分布域を持つ。オニキンメ類は漸深層遊泳性で、ヒウチダイ・キンメダイの仲間は底生性。
マトウダイ目 Zeiformes 所属する30種あまりの多くは大陸棚から大陸斜面にかけて生息する底生性深海魚で、分布範囲の広い種類が多い。
カサゴ目 Scorpaeniformes 多くは広い分布域を持ち、深海に特化した科は少ない。クサウオ科には海溝深部に生息する超深海種が含まれる。
スズキ目 Perciformes 現代の浅海でもっとも繁栄し、最大の魚種(約1万種)を誇るグループである。深海魚も多数含まれるが、カサゴ目同様に科レベルでの深海への適応例は少ない。北部大西洋における試算では、スズキ目魚類は遊泳性深海魚の6%、底生性深海魚の9%を占めるに過ぎない[35]。200種以上を含むゲンゲ科は北半球の深海底に広く分布する重要な底生魚で、濃密な群れを形成することもある[51]。
カレイ目 Pleuronectiformes 上記2目と同じく、多くの科は浅海種・深海種を満遍なく含む。ウシノシタ科に所属する2亜科のうち、アズマガレイ亜科は深海性である。
フグ目 Tetraodontiformes 浅海魚が多いが、ベニカワムキ科の約20種は底生性の深海魚である。
肉鰭類
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肉鰭綱に属し、四肢動物の祖先と考えられている一群。現生種を含むのはハイギョ類とシーラカンス類のみ。
シーラカンス目 Coelacanthiformes 生きている化石とも呼ばれ、現生種は2種。
脚注
注釈
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^ Cohen(1970)は深海産の魚類を2,400 - 2,900種と概算している。
^ 一つの科には底生性・遊泳性いずれかの深海魚のみが含まれ、両者が混在することはほとんどない。
^ これら2目には合わせて約650種が所属し、中深層遊泳性魚類の大半を占めている。
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