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天と地 と 破獄

天と地

僕が「寒獄」を完登した数日後、「寒獄」初登者の遠山さんがこの岩の中央直上ライン「天と地」を完成させた。

その投稿を見て居ても立っても居られなくなり、
前から「寒獄」の話をしていた三上さん、えーすけに声を掛け週末に登りにいくことにした。

するとなんと、僕のストーリーを見てすぐラインをくれた遠山さんもjoinすることに。

何も登れなくても絶対に楽しくなるのが確定した。


当日は他の岩でアップをした後に「天と地」の岩へ。


この岩はいつ見ても美しい。

早速「天と地」ラインの確認。

「寒獄」ラインは途中で左に抜けていくため、
「天と地」ラインがかなり高く見えた。

それに加え、下からだと上部のホールドが見えづらい。手順はなんとなく分かるが、どういったホールディングなのかが分からないだけで一気に緊張感が増した。

長いオブザベーションが終わり、遂にトライ開始。

寒獄はこの左手のちょい下から左に抜ける

寒獄と天と地の分岐点に到着。

ここまでは寒獄トライ時に触った事があるし、今回はマットを敷いているため問題なかった。

ここからは自分にとっての空白地帯。

落ち着いて呼吸し突入。

寒獄から抜けた瞬間、保持感が一気に上がった。
何故か嬉しかった。

この後のデッドは下からいくら見ても形状が分からず、現場処理するしかないと思っていたパート。
しっかり握り込んで取り先を覗いてみたが、カンテになっているので全く分からず…

ここでの無理は禁物。一旦降りることに。

思っていたより保持感が悪かった事、取り先が分からない状態でランジしなきゃいけない事が分かり正直ビビった。

ただ落ち着いていけばランジパートまでは大丈夫。

ランジパートを止めればたぶん落ちることはない。
てか、落ちたらアウトな高さ。

一度上がったテンションを戻すためレスト。

あのランジパートをどうするか考えた。
もしかしたらランジしなくても、カンテを刻んでいけば攻略出来るかもしれない。ただ、上部のホールドが脆いという事と、初登者遠山さんのような格好良いランジムーブの方がこの岩にも合っている。

格好良い岩には格好良い登りでこたえる。

その拘りを捨てることは出来なかった。

レストも出来た。テンションも落ち着いた。
再度トライ開始。

寒獄パート通過。保持感が悪くなったがもう驚きはなかった。

呼吸を整えて問題のパートへ。

取り先をチラッと確認したがやはり見えない。

もし取り先を外したとしても右手を軸にバランスを取って足から着地できるように、しっかり持ち直した。
あとはもし何も無かったとしても絶対に耐えるという気持ちで、飛びついた。

止まった。
そこからマントルまでは一瞬。

最高の時間だった。



クライミングの大きな魅力の1つである「心理面の駆け引き」。

10歳あたりから本格的にクライミングを始め今年で約18年。こんなに駆け引きをした事は無かったし、ここまで楽しめたこともなかった。

岩の見た目、内容共にパーフェクトすぎるラインだった。


破獄

パーフェクトライン「天と地」を堪能した後は、「天と地」の左側にあるプロジェクトを紹介してもらった。

そのラインの抜け口は「寒獄」と同じ。
そこまではクリンプを繋いで「寒獄」「天と地」よりも左側に移動し、最後にリップに大ランジという核心が待っている。

ライン的には左に追いやられた感があるが、その強度の高さや派手さ、格好良さは「寒獄」「天と地」とは違った良さがあった。

ラインを確認し、トライ開始。

核心は最後の大ランジだが、中間部にも強烈なガストンパートが潜んでいる超攻撃型。

トライしていくうちにガストンパートを攻略出来て、
遂にランジパートへ。

左側の変な保持感のカチを握って取り先を見上げると、下で見ていたよりも傾斜と距離を感じた。

この写真でイメージしてもらうと分かりやすい。

両手とも保持感が悪かったし、とにかく遠かった。
この高さでこの距離か〜 と中々思いきって手が出せずに降りてくるを何回も繰り返した。

そうこうしているうちに暗くなってきて、いよいよ残り数回で終わりかなというところで、
「マットはあるし、スポットもいる。一度思い切り出てみよう。」と思いタッチを目標に飛び出してみた。

タッチは出来た。距離は出せることが分かった。

しっかりレストを入れて次は止めるつもりでトライ。

第一核心のめちゃくちゃ格好良いガストンパートを通過し核心へ。

両手ともしっかり持ち直して、足をセット。

しっかり勢いをつけて発射した。

ようやく止める事が出来た。リップを止めた瞬間、左手のたるいカチが効かなくなり危なかったが気合いで耐えた。

格好良いラインを初登する事が出来た。
名前は「破獄」。


色んなことを経験させてくれたこの岩にラインを刻む事が出来て本当に嬉しい。

インスタでも書いた通り、グレードは付けない。
難しい事は確かだが、グレードを知った状態でやるのではラインの見え方が変わってくる。
あーでもないこうでもないと言ってる時間からその岩とのセッションは始まっている。

あーでもないこうでもない。


この美しい岩を発見、掃除、初登、紹介までしてくれた遠山さんやしのさん、スポットや応援してくれた三上さん、えーすけ、寒獄ノーマットセッションしてくれた大木さん、いつも応援してくれる妻に本当に感謝。


昨年の「水の記憶」初登からクライミングの価値観がかなり変わったが、このタイミングでこの岩と格好良いクライマーに出会えて良かった。

もし数年前にこの岩に出会っていたら、この岩の価値をそこまで理解出来ていなかっただろう。

素晴らしい経験が出来た。





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