水の記憶
1つ目のブログは、自分のクライミングの価値観を大きく変えた「水の記憶」の完登について。
このラインとの出会いは2023年6月。
倉上さんからこのエリアの事を教えてもらった時に紹介してもらったプロジェクトのうちの1本だった。
下地は川になっているので勿論マットは敷けず、高さが5mほどあった為、気軽にトライすることが出来ず放置していた。
それから頭の片隅にはあったが、水量の関係で中々トライ出来なかったり、他エリアの高グレードや目標課題に打ち込んでるうちに時間が経ってしまった。
2024年に入り、ある程度目標のハードラインをトライした頃、次は「新しいことに挑戦したい」という気持ちが強くなり、このラインをトライすることに決めた。
2024年10月3日。
この日は午後から天気が崩れる予報だった為、短時間のトライになるだろうと思い早朝に岩の前に到着。水量が不安だったが晴れ続きだったので初めてトライすることが出来た。
下から見た感じだと持てそうなホールドもあり、すぐに終わりそうだなと思っていたが、実際にトライしてみるとその傾斜に合った保持感ではない事がすぐに分かった。
ムーブの組み立てに失敗し着地(着水)する度にシューズが濡れる、シューズが濡れるとどんどんグレードも上がっていく、この繰り返しでかなり苦戦したが、全ムーブが完成してイメージが出来上がった次のトライでなんとか完登することが出来た。
完登出来た達成感や怪我しなかった安堵感、何でもっと早く触らなかったんだという喪失感など、色々と込み上げてくるものがあった。
岩の上でそんな事を考えていると数分後に予報通り雨が降って来た。
本当にギリギリの戦いだった。
名前については、この岩とのセッションでは水が関わりすぎていること(水量で中々トライ出来なかった、下地が川、完登直後の雨など)や、スピリチュアル界では水は周囲のエネルギーを記憶すると言われている為、色んな意味を込めてこの名前にした。
ここまでは水の記憶の完登までを書いたが、ここからは最初に書いた「クライミングの価値観を変えた」事について。
今まで10数年クライミングをやってきたが、完登までの「過程」をここまで味わう事が出来たのは初めてだった。
今までは過程よりも結果が大事で、何でも良いからとりあえず難しいラインを完登して、その数字を自分のものにする事が楽しかったが、このラインとのセッションでは、1手先の世界が未知であること、1からムーブの組み立てをする必要があること、強度が高いのにマットが敷けないため安全に着地することを常に意識しなくてはいけないことなど、自分にとって新しいことが盛り沢山だった。
こんなに完登までの過程が詰まったクライミングは初めてで自分的にはかなりの衝撃。
完登した後の充実感が今までのそれとは比べ物にならなかった。
そう感じた理由は、未知への挑戦や危険が隣り合わせだった事もあると思うが、これについてはまた今度詳しく語ろうと思う。
今までのクライミングではそこまで意識してこなかったとても大事なものを、このラインを通して得る事が出来た。
クライマーレベルが上がったのか下がったのか、それとも今までやっていたクライミングとは別種目のことをしたのか。
何であれこのラインをトライしたことにより明らかに自分の中で大きな変化が起きたのは確かだ。
グレードについてはだいたいこのくらいかな?と感じたものはあるが、公開しないことにする。
そもそもマットを使用していない時点でグレードの感じ方は大幅に変わってくるし、濡れたホールドを使って登ることは本当に難しい。
「下地を作ってマット敷けばいいじゃん。そしたらグレードも安定するし登りやすくもなる。」
個人的には、これ↑だと美しい岩が勿体無いし、こんな美しい岩は自然な状態で登ることに意味があると思っている。
※このへんのスタイルについても今後語りたい
グレードを見てトライするかしないか判断するクライマーが多いが、正直このラインは自分的にそこまで大人数にトライしてもらわなくて良いと思っている。
内容的にちゃんと悪いので見極める力を持っている方、グレードで判断せずこの岩を見て登りたいと思った方に届くと嬉しい。
書き出すと止まらなくなってしまうのでこの辺で終了。次は何について語ろうかな。