SIX(ミュージカル「SIX」)

作品タイトル曲にして、真骨頂。
歴史に違う角度から光を当てるのではなく、
新たな歴史を創造する。
歌詞の中には、原作者から観客に直接向けられたメッセージも…?


・作品全体の構造として
 1曲目 Ex-Wives
 2曲目から4曲目まで ソロ曲(1番目から3番目までの王妃)
 5曲目 Haus of Holbein
 6曲目から8曲目まで ソロ曲(4番目から6番目までの王妃)
 9曲目 SIX
(10曲目 (アンコールとしての)Megasix)
となっており、構造的にも内容的にもSIXはEx-Wivesと対比的。

・We’re one of a kind
 No category
 Too many years
 Lost in history
 We’re free to take
 Our crowning glory
 For five more minutes
 We’re SIX!
 「私たちはみんな同じで
  区別は必要ない
  長い間
  歴史(男性の話)に埋もれてきたけど
  私たちは、最高の栄誉に値する
  価値がある
  あと5分だけ
  私たちはSIX」の意味。
 歌詞の中で「one(1)」「Too(2)」「free(3)」「for(4)」「five(5)」「SIX(6)」とカウントアップされている。振り付けとかで分かるようにできそうなものだが、いちいち強調しないのがおシャレなんだよな。
 historyはもちろん「his story」と掛けられている。
 「Ex-Wives」では繰り返し「six wives」と言っていたのがwivesがなくなったことから、6人の王妃が自らを(ヘンリー8世との関係性なしに)完結した「6人の人間(女性)」であると自覚するようになったことが示されている。
 これは「Ex-Wives」の「History's about to get overthrown」(歴史はひっくり返されようとしている)を「History’s about to get "over throne"」(歴史は今、王位(ヘンリー8世)を乗り越えようとしている)と解釈するのと整合的。
 「crowning glory」は、もちろん王冠(crown)とリンク。

・He got down on one knee
 But I say "No way!"
 「彼は膝をついてプロポーズ
  でも私は『まさか!』と言って断った」
 Catherine of Aragonのパート。「Get Down」で「dirty rascal」と言われたヘンリー8世が、命令されたとおり実際に「got down」している。
 また、「No Way」の中の「You’ve got me down on my knees」(膝をついて謝るから・意訳)という歌詞では、ヘンリー8世がCatherine of Aragonに膝をつかせていたのに対し(実際に膝をついて、ヘンリー8世の言葉を待つシーンがありましたよね)、この歌詞では、ヘンリー8世が彼女のために片膝をついている、というのが対比的。

・moved into
 Nu-nu-nunnery!
 Joined the gospel choir
 「修道院に入って、ゴスペルに加わった」の意味。
 ミュージカル映画「天使にラブソングを」のオマージュ。

・Henry sent me a poem
 All about my green sleeves
 I changed a couple words
 Put it on a sick beat
 The song blew their mind
 「ヘンリーが私の緑色の裾について
  詩を贈ってきたから
  ちょっとやりとりして
  イケてるビートに乗せて曲にしたら
  めっちゃ受けた」の意味。
 Ann Boleynのパート。イケてるビートのGreen Sleevesのアレンジ曲って、本作品の中にもありましたよね?ということは…?(※こちらは海外の考察サイトに載っていた話。気付かなかった…。)

・I’m writing lyrics
 For Shakesy-P
 「今は、シェイクスピーのために
  歌詞書いてる」
 Shakesy-Pはシェイクスピアのもじりで、あだ名みたいなもので呼んでいるという趣旨か。Shekesyとsexy(「Ex-Wives」で「I’m that sexy」の歌詞あり)とで韻を踏んでいる。

・The Tudor Von Trapps
 「テューダー朝のトラップ一家」の意味。
 Jane Seymourのパート。
 ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」のトラップ一家のオマージュ。

・Royalling Stones
 「ロイヤリング・ストーンズ」(そのまま)。
 Rolling Stonesのもじりで、royal(王室)と「Heart of Stone」のstoneと掛けている。

・Now on my tour of Prussia
 Everybody "Gets down"
 「今はプロイセンのツアー中
  みんな盛り上がってる」の意味。
 Anne of Clevesのパート。
 ソロ曲のタイトルを入れ込んでいる。

・Music man tried it on
 And I was like "Bye!"
 「音楽の先生はしつこく口説いてきたけど
  私は『バイ!』って感じでお断りした」の意味。
  Katherine Howardのパート。
  1番目のHenry Manoxからやり直し、関係を持たなかった、という別の人生。

・I learned everything
 Now all I do is sing
 And I’ll do that until I die
 「すべてのことを学んで
  今は歌うことに集中している
  死ぬまで歌うつもり」の意味。
 1番目の男に教わらなくても、十分な音楽の勉強ができ、歌うことに喜びを見出した世界線。個人的には一番グッとくる。

・Heard all about these rockin’ chicks
 Loved every song
 And each remix
 So I went out and found them
 And we laid down an album
 「ロック好きのみんなのことを聞いた
  曲は最高で
  リミックスもとても良かった
  だから、私はみんなを探し回って
  みんなでアルバムを作った」の意味。
 Catherine Parrのパート。
 (あれ、ということは、私たちが今聞いている音楽って…?
  この続きはまた別の機会に。)

・Now "I don’t need your love"
 All I need is SIX!
 「今はもうヘンリー8世の愛なんて要らない
  私に必要なのはSIX!」の意味。
 ソロ曲のタイトルをそのまま入れ込んでいる。

・It’s the end of the show
 Of the historemix
 (中略)
 Before we drop the curtain
 「もうすぐ、この歴史の再解釈のショーはおしまい
  (中略)
  このショーをおしまいにする前に」の意味。
 物事には終わりがあることを明言することで、人生の喜びの刹那性を感じさせる(一旦死んでる人の言葉は説得力がありますね(笑))。

・We switched up the flow
 And we changed the prefix
 「私たちは流れを変えて、
  歴史上の注釈も変えてきた」の意味。
 「Ex-Wives」では「Switching up the flow As we add the prefix」(流れを変えよう 歴史上の注釈も追加して)と、これからやることとして語られていたことが、本曲で過去形になり、達成されたこととして語られる。

・But we want to say
 Before drop the curtain
 Nothing is for sure
 Nothing is for certain
 All that we know is that
 We used to be six wives
 「でも言っておきたい
  このショーをおしまいにする前に
  確かなことは何もなく
  明らかなことも何もない
  私たちが知っているのは
  私たちが6人の妻だったということだけ」の意味。
 6人の王妃が自ら自分の話をするのであれば、それなりに確かなことや明らかなこともあるはずだが、ここで歌詞が「確かなことは何もなく、明らかなことも何もない」と言い切られていることを考えると、観客と同じく現代に生きる第三者としての視線が垣間見える。
 そうすると、最後の2行は「今分かっていることは、6人の妻がいたということだけ」という客観的な立場からの言葉と解釈できる(日本の来日版の字幕はそうだった)。
 この第三者としての視線が垣間見える「Nothing is for sure Nothing is for certain」は、原作者が観客に直接投げかけたメッセージなのでは。


※ 単なる一ファンによる考察又は妄想です。

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