Don’t Lose Ur Head(ミュージカル「SIX」)

6人の王妃の中でも、最も有名で、本作品の登場人物としても人気の高い、
Anne Boleynのソロ曲。
2番目という立場から、1番目のCatherine of Aragonとの対立が描かれ、
曲中(そして作品全体も!)の二人のやり取りも絶妙です。


・タイトルは、「落ち着いて」と「(首を切られた私みたいにならないように)あなたは頭部を失わないで」のダブルミーニング。

・Ann Boleynがスマートフォンを操作しているところから曲がスタート。
 なお、本作品終了後には、ステージ上で記念撮影が行われるが、その時も、Ann Boleynがスマホを使って、残りの5人の王妃の姿を撮影している。

・タイトルの「Ur」や歌詞の「XO」(メールの文末などに付けられる親愛の情を示す言葉)、「LOL」(laugh out loudの略)などの言葉は、いわゆる若者言葉(「若者言葉」という言葉が古いな…)。
 1番目の妻であるCatherine of Aragonが24年の結婚生活を送り、年を重ねた後に、若いAnn Boleynが登場することから、その対比を示す趣旨か。

・All the British dudes lame
 「イギリスの男はみんなダサい」の意味。dudesは「奴、野郎」、lameは「ダサい、つまらない」のスラング。

・my daddy said
 "You should try and get ahead!"
 「うちのパパが『(ヘンリー8世を)捕まえてこい!』って」の意味。
 「ahead」の中にタイトルにも使われている「head」が隠れており、「get ahead」(先へ進め)は「get a head」(男を捕まえる)とのダブルミーニングになっている上、このheadには「1人の男」という意味だけでなく、「国のヘッド=ヘンリー8世」という意味もある。

・‘You’re a nice guy
 I’ll think about it maybe
 XO babe’
 「あなたはイケてるから、ま、考えてみる。キスとハグを送るね。ベイビー」の意味。
 「XO」はXがキス、Oがハグの意らしい。
 本当は手紙をやりとりしていたはずなのに、今時のSNS上のやり取りで表現されている。
 ちなみに、Catherine ParrもI Don’t Need Your Loveで元恋人に宛てた手紙について歌っているが、そちらは「Dear Tom,」というセリフで始まり、「All my love Catherine」で終わっており、より一般的な手紙の形式で、Anne BoleynのSNSのやり取りとは対比的。

・I was prêt à manger
 「prêt à manger」はフランス語で、ready to eat(食べ頃)の意味。
 なお、イギリスには同名のサンドイッチチェーンがあり、イギリスの観客には馴染みがあるのでは。

・Sorry, not sorry ‘bout what I said
 省略されている言葉を補って訳すと「自分の言ったことが悪いと思ってなくてごめん」(Sorry for not being sorry about what I said)。
 他方、「Sorry, not sorry」を「ごめん、いや、ごめんじゃないか(私が言っていること間違ってないから)」と解釈すると、俄然強気な性格に見えてくる。
 本作品で度々オマージュされているBeyonceの「Sorry」という曲が「I ain’t sorry」という歌詞が繰り返されることを考えると、後者の解釈もあり得るかも。

・Three in the bed
 (中略)
 Don’t wanna be some
 Girl in a threesome
 「ベッドの中で3人
  (中略)
  私は3Pの1人になんてなりたくない」の意味。
 後で「Maybe I’ll flirt with a guy or three」(私も男の1人や3人、誘惑しちゃうかも)でもthreeという数字が出てくるが、曲の中で時間が経つにつれ
 ①Ann Boleynとヘンリー8世とCatherine of Aragonとの三角関係から
 ②Ann Boleynと、ヘンリー8世ではない3人の男(そして、その背景にヘンリー8世と別の女)の多角関係に
変容していることがわかる。

・Are you blind?
 「目ぇ、見えてんの?」の意味。
 年長のCatherine of Aragonと自分とを比較して、結論は明白、という趣旨。

・Somebody hang you
 「誰か、あなたを追い出して」の意味。
 「hang」は絞首刑にするという意味もあり、後に斬首されるAnn Boleynが、邪魔なCatherine of Aragonを殺してしまいたいと言うブラックユーモアにも取れる。

・the C of E
 「the Church of England」(イギリス国教会)の略。
 ちなみに、Katherine Howardの「All You Wanna Do」の歌詞には「C to D」がある。

・曲の最後は、顔面のみ丸いピンスポで、首から下は照明が当たらない。
 ちなみに、同じ「Beheaded」のKatherine Howardも、「All You Wanna Do」の最後、種類は違うものの、同様に頭部のみ照明が当たる形になっている。
 ただ、Ann Boleynは笑顔で終わるのに対し、Katherine Howardは真顔(というか…)で終わるのが対比的。


※ 単なる一ファンによる考察又は妄想です。

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