Get Down(ミュージカル「SIX」)

実際は白人女性ばかりの6人の王妃について、
本作品では、多様な人種・多様な体型のキャストが選ばれています。
その意義がよく表れているのがこの一曲で、
強いメッセージが隠されています。


・Bring me some pheasant
 「キジ肉持ってきて」の意味。
 キジは、オスが複数のメスと繁殖するらしく、ヘンリー8世のことを例えているのでは。ヘンリー8世には腹が立つので焼いて食べちゃうぞ、ということの暗喩か。

・I wanna go hunting, any takers?
 「狩りに行きたいんだけど、ついてくる人?」の意味。
 huntingは男性の趣味であり、女性であるAnna of Clevesがこれを趣味としているところに、男性との対等な関係性を感じさせる。

・Release the bitches
 「雌犬を放って」の意味。
 男性に文句をいう6人の王妃を「くそ女」という意味のbitchに掛けており、その後、ensembleが「Woof(ワンワン)」と受けている。

・Head back for a round of croquet, yeah
 ‘Cause I’m a player
 「クロッケーをやりに行こう
  私がプレーするの」の意味。
 クロッケーは、Wikipediaによると、イギリス発祥のスポーツで、のちのゲートボールに繋がったもの。「不思議の国のアリス」で女王がアリスと共にフラミンゴを使ってプレイしていたアレ。
 体力的なハンディキャップがないスポーツらしく、ある意味で男女平等なスポーツと言えるかも。

・You, you said that I tricked ya
 ‘Cause I, I didn’t look like my profile picture
 「あなたは、私があなたを騙したって言う
  私がプロフィール写真に似てないからって」の意味。
 一瞬、肖像画は英語で「profile picture」か?と思ってしまったが、portraitが正しい。つまり、profile pictureということで、マッチングアプリのプロフィール写真が盛りすぎだ、という話をしている(実際に、「Haus of Holbein」でフリックでマッチングする様子が演じられている)。

・I’m the queen of the castle
 Get down, you dirty rascal
 「私がこの城の主
  ひざまずけ!この悪党が!」の意味。
 調べてみると、イギリスの童謡で「I’m the king of the castle, and you’re the dirty rascal!」というものがあるらしく、そのkingをqueenに変えてもじったもののよう。
 また、「Get down」は、ひざまずけ、という意味のほかに、スラングとして、パーティーで盛り上がろう、踊れ、という意味や性的なニュアンスもある(馬に乗る振り付けがありましたね?)。
 Anne of Clevesが「悪党」呼ばわりしている相手は、直接的にはヘンリー8世のことだと思われるが、ここのフレーズ全体で、“自分は、自分以外の皆から敬意を払われて然るべき“という、健全な自尊感情を肯定している、とも考えられる。

・As he takes my fur
 As you were
 「彼が私の毛皮を脱がせる
  ありのままの姿で」の意味。
 「takes my fur」の後に、音楽がストップし、ensembleがAnne of Clevesの服を脱がせ、ドレッシーなランジェリー姿に変身させる。
 SIXのパンフレット(ブロードウェイ版と日本版の共通部分)には、歴史家?の伝えることとして、Anne of Clevesが「豊満な(full figured)」体型をしていたと記載されており、それを意識してか、彼女のキャストは、少なくともsuper-skinnyな体型ではない(ように見受けられる)。
 そのAnne of Clevesが本作品で衣装を脱いで体型の見えるランジェリー姿を見せ(それを観客が賛美す)ることで、全ての体型を肯定する、Body Positiveの理念を見せる。
 この後の「No criticism」(批判は受け付けない)は、このBody Positiveの理念にもかかっているのでは。

・Okay ladies, let’s get in reformation
 「OKみんな、改革に取り掛かろう」の意味。
 Beyonceの「Formation」のフレーズが引用されている。
 今もはびこっている、「痩せ型原理主義」(「Haus of Holbein」のウエスト9インチ)みたいな古い価値観を、これからみんなで変えていこう、というメッセージとも受け取れる。

・I’m a Wienerschnitzel, not an English flower
 「私は、イギリスの草食っていうより、ドイツの肉食なわけ」の意味(だいぶ意訳)。
 日本の来日版では「花より団子」と訳されていた。
 Wienerschnitzelは、正式にはドイツ料理のウィーン風子牛のカツレツだが、アメリカに同名のホットドッチェーンがあるらしく、bitchに続く犬例えか。
 English flowerは、王妃を例えるTudor rose(テューダー朝のバラ)のこと。
 要するに、「イギリスが私に合わなかった!(ヘンリー8世が悪い!)」
 無駄な自責をしない健全な他責って、ブンダバー!


※ 単なる一ファンによる考察又は妄想です。

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