令和6年予備試験論文式試験 再現答案【労働法】
作成日:9/10
回答ページ数:3.5ページ
第1 設問1
1 X組合は、労働委員会に対し、Y高校の会議室使用許可命令の申立てをすることが考えられる。
2 Y学園による使用拒否が、支配介入(労働組合法(以下、労組法)7条3号)にあたる場合、その申立ては認められうる(労組法27条1項)。
⑴ Y学園による使用拒否は「介入」にあたるか。
ア 会議室の使用可否については学校の施設管理権に基づく裁量が認められる。また、Y学園はX組合に使用を事実上認めていたにすぎず、労働協約に基づくものではなかった。さらに、Y学園の使用拒否は、本件規程どおりの運用を求めるものに過ぎないことも踏まえると、「介入」にはあたらないとも思える。
イ もっとも、X組合は学校運営上の具体的な支障が生じないことを条件として、事前に管理職であるBに対し告知したうえで、会議室を使用していたのであり、Y学園の施設管理権との衝突は生じていなかった。また、X組合にとって職場内で集まることができる場所が確保されていることは、その団結権の維持にとって重要な意味を持っている。
ウ そこで、合理的理由を欠き、手続的配慮も欠く一方的な使用拒否は、X組合の活動を妨害することになり、「介入」にあたると解する。
エ 本件では、かねてよりX組合が会議室を使用する慣行が続いていており、それはAが4月に就任してからも変わらなかったにもかかわらず、10月になってはじめて使用が拒否されている。これは、X組合とY学園が部活動の顧問を担当する教諭の待遇改善について対立を激化させていたことが背景にあると考えられ、方針変更には合理的な理由が認められない。
また、事前にX組合に対して方針変更の通知はなく、ZがBに対して使用を申し出た際に、急に方針変更を伝えられており、手続き的配慮を欠いている。
オ よって、使用拒否は「介入」にあたる。
⑵ Y学園は、X組合との間で対立が激化していたことを背景として使用拒否に及んでいるから、反組合的意思が認められ、支配介入意思が肯定できる。
⑶ よって、Y学園による使用拒否は支配介入にあたるため、X組合の申立ては認められる。
第2 設問2
1 本件戒告処分は、不利益取扱い(労組法7条1号)にあたり、無効とならないか。
⑴ Zの行為は「労働組合の正当な行為」にあたるか。
ア ZはX組合の委員長であり、部活動の顧問を担当する教諭の待遇という労働条件の改善を目的としてビラを配布しているから、主体・目的の面で「労働組合の正当な行為」にあたる。
イ 労働時間中の組合活動は職務専念義務に抵触するため原則認められないところ、Zは休憩時間のうち10分間という短い時間で、A4という大きすぎないサイズのビラを配布している。また、職員室内で、生徒等がいないことを確認したうえで配布するなど、教育という本来的業務にも配慮した方法がとられている。さらに、在席している者には組合のビラであることを告げ、受け取らない判断ができる状態で手渡ししているし、離席している者には机上に裏返して置くことで、当該職員が組合活動を支持していると受け取られないような配慮も行っている。以上を考慮すると、Zの活動は態様の面でも「正当な行為」と言える。
ウ よって、Zの行為は「労働組合の正当な行為」にあたる。
⑵ Y学園がZに戒告処分を下した背景には、教諭の待遇改善について対立が激化していたことがあったと考えられるから、反組合的意思が認められ、「故をもって」にあたる。
⑶ Zは、戒告処分を下されているから「不利益な取扱い」を受けている。
⑷ よって、本件戒告処分は不利益取扱いにあたり、無効となる。
2 本件戒告処分は、懲戒権の濫用(労働契約法(以下、労契法)15条)にあたり、無効とならないか。
⑴ 本件戒告処分は、就業規則に定められ、内容も合理的で周知もされていると考えられる(労契法7条)から、「懲戒することができる場合」にあたる。
⑵ Zの行為は、「許可なく」「印刷物」を「配布」するものだから、就業規則39条5号に該当しており、「客観的に合理的な理由」は認められる。
⑶ もっとも、前述のとおりZに対する戒告処分は不利益取扱いにあたるから、「社会通念上相当」とは認められない。
⑷ よって、Zに対する戒告処分は懲戒権の濫用にあたり、無効となる。
以上
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