令和6年予備試験論文式試験 再現答案【刑事訴訟法】
作成日:9/9
回答ページ数:2.7ページ
第1 設問1
1 事件②の犯人が甲であることは、刑罰権の存否を基礎づける事実に関する事柄だから、甲が事件①の犯人であることに証拠能力が必要となる(厳格な証明、刑事訴訟法(以下、法令名省略)317条)。
2 事件②の犯人が甲であることに対し、甲が事件①の犯人であることに法律的関連性が認められるか。
⑴ 甲が事件①の犯人であることから、犯人の犯罪性向を推認し、以て事件②の犯人が甲であることを推認しようとする場合、合理的な推認過程とは言えず、法律的関連性が認められない。
⑵ ア もっとも、甲が事件①の犯人であることについて、それが顕著な特徴を有し、事件②と類似していることにより、それ自体で甲の犯人性を合理的に推認できる場合には、間接事実として用いることができると解する。
イ 本件では、たしかに、どちらも夜間、一戸建ての民家が建ち並ぶ住宅街という人通りが少ない場所において行われており、時間も近接しており、場所的にも同一市内で3キロメートルしか離れていない。また、どちらも背後から黒色の軽自動車で、1人で歩行中の人に衝突し、被害者が転倒すると「大丈夫ですか」と声をかけながら近づき、バッグを奪うという手法において共通している。
ウ しかしながら、夜間に人通りが少ない場所で1人で歩行中の被害者からバッグを奪うという強盗の手法は、比較的よく見られる手法であり、顕著な特徴があるとは言えない。また、黒色の軽自動車の使用者は多数存在し、事件②においてB及びXがナンバーを目視することができていない以上、事件①と同一の自動車であるとは言えない。さらに、「大丈夫ですか」という声かけも一般的なものであり、顕著な特徴を有していると言えない。
エ よって、甲が事件①の犯人であることについて、顕著な特徴を有し、事件②と類似しているものとは言えない。
⑶ 以上から、甲が事件①の犯人であることを、事件②の犯人が甲であることを推認させる間接事実として用いることはできない。
第2 設問2
1 事件②で甲が金品奪取目的を有していたことは、強盗罪(刑法236条1項)における「暴行」を認定するうえで必要であり、刑罰権の存否およびその範囲を確定する事実に関するものだから、事件①で甲が金品奪取の目的を有していたことに証拠能力が必要となる。
2 ⑴ 事件①で甲が金品奪取目的を有していたからといって、事件②においても金品奪取目的を持っていたことを合理的に推認することはできず、法律的関連性は認められないのが原則である。
⑵ もっとも、事件②において、甲はBが持っていたセカンドバッグに手をかけており、付近にいた通行人Xと目が合ったことでバッグから手を離している事実から、事件②における甲の金品奪取目的を推認することができる。直前に起きた事件①において金品奪取目的を有していたことは上記事実と整合するため、上記間接事実の証明力に影響を与える補助事実としてであれば、事件①で甲が金品奪取目的を有していたことを用いることができる。
⑶ よって、事件①で甲が金品奪取目的を有していたことは、事件②において甲が金品奪取目的を有していたことを推認させる間接事実としては用いることができない。
以上
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