令和6年予備試験論文式試験 再現答案【実務基礎科目(民事)】

作成日:9/10
回答ページ数:3.8ページ

第1 設問1
 1 ⑴について
   賃貸借契約終了に基づく本件建物収去本件土地明渡請求権
 2 ⑵について
   被告は、原告に対し、本件建物を収去して本件土地を明け渡せ。
 3 ⑶について
  ①Xは、令和2年7月1日、Aに対し、本件土地を賃料月額10万円の約定で賃貸した。
  ②Xは、令和2年7月1日、Aに対し、①に基づき本件土地を引き渡した。
  ③Aは、令和5年3月17日、Yに対し、Xに無断で本件土地を引き渡した。
  ④Xは、令和6年3月31日、Aに対し、①を解除する意思表示をした。
 4 ⑷について
  賃貸借契約のような当事者の信頼に基づく継続的契約は、単に債務不履行があっただけではその債務不履行は「軽微」であるとして解除できず、信頼関係を破壊するような特段の事情が必要である。一方で、無断転貸がなされた場合は、通常当事者の信頼関係を破壊するような事情が認められ、それが認められない特段の事情がある場合には解除することができない。
  本件で、AはYに対し本件土地を無断転貸しているものの、YはAが全額を出資し、Aが代表取締役を務める会社であるうえ、A以外に従業員はおらず、Aが一人で営業にあたっていたため、実質的にAと同一と考えられる。また、実態としても引き続き腕時計販売店として事業を営んでおり、使用目的にも変更はなかった。
  よって、AとXの間の信頼関係を失わせないような特段の事情が認められ、Xによる解除は不当である。

第2 設問2
 1 ⑴について
 ⑴ⅰについて
   ①再抗弁として主張すべきである。
   ②Xは、令和2年7月1日、Aに対し、賃料月額10万円、毎月末日に翌月分払いの約定で本件土地を賃貸したにもかかわらず、Aは、令和5年6月分から令和6年3月分までの10か月分100万円を支払っていない。
 ⑵ⅱについて
   ①再抗弁として主張すべきでない。
   ②既に請求原因で主張している。
 2 ⑵について
  ①Aは、令和4年11月9日、Xに対し、本件商品を引き渡した。
  ②相殺の再再抗弁を主張しようとする場合、自働債権を基礎づける売買契約についても主張することとなり、同時履行関係があらわれてしまうため、あらかじめその存在効果を打ち消すべく、引渡しの事実を主張する必要がある。

第3 設問3
 1 ⑴について
  ①Xは、(い)の事実について訴訟で援用した。
  ②和解契約は、裁判外で行われる私法契約であるため、訴訟法上の効果を発生させるためには、抗弁として援用する必要があるから。
 2 ⑵について
  ⅰについて
  ①裁判所は、Qに対し、本件合意書のAによる手書きの署名部分がAの意思に基づくものではないとする理由を確認すべきである。
  ②私文書は、本人の署名があるとき、真正に成立したものと事実上推定される(民事訴訟法228条4項)ので、真偽不明にするための反証を求めている。
  ⅱについて
  本件合意文書は、当事者の意思を表示する処分証書であり、その成立の真正が認められれば、基本的には実質的証拠力を議論する余地がなくなる。そして、民事訴訟法228条4項は、経験則に基づく事実上の推定を定めた法定証拠法則であるから、Qは反証によって真偽不明にすれば推定を覆すことができる。
  ⑴Qが反証に成功した場合
  本件合意書の成立の真正の推定は覆るから、Pは積極的な立証活動により、本件合意書の成立の真正を証明する必要がある。具体的には、令和5年4月10日、AとXが話し合いを持ったことや、Aがそれ以降、令和6年3月20日まで支払いを求めてこなかった事実などから、和解の成立を証明する必要がある。
  ⑵Qが反証に失敗した場合
  民事訴訟法228条4項による推定は覆らないから、本件合意書の成立の真正は事実上推定され、Pは積極的な立証活動までは要しない。もっとも、この推定に反する判断を裁判所が行うことも可能であるため、Pは可能な限りの立証活動は尽くすべきである。

第4 設問4
 ①Xが本件確定判決の債務名義(民事執行法22条1項1号)を得ても、Zに対しては執行することができず、あらためてZに対する訴訟を提起をする必要が生じる。
 ②Xは、本件建物の所有権について処分禁止の仮処分命令(民事保全法23条1項)を申立てるべきであった。                                                                                    

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