もし生まれ変わるなら⑤
第三章:挑戦の序章
01 壁との闘い
通信教育の合格通知が届いた日、美咲は震える手で封筒を開けた。
IT系の学部入学。38歳。周囲からは「遅すぎる」「無理だ」と言われ続けた挑戦。娘の美優は冷ややかに、「ママらしくない」と言い放った。
夜のコールセンターでアルバイトをしながら、深夜まで勉強。パソコンの前に座り、プログラミングの難解な言語と格闘する日々。
最初の課題は、まるで外国語のように難しかった。HTML、CSS、JavaScript。専門用語の嵐。
「諦めたくなったら、いつでも諦めていい」
そう自分に言い聞かせながら、美咲は続けた。
02 仲間との出会い
オンラインの学習コミュニティで、同じような境遇の人々と出会った。
40代で転職を目指す主婦。リストラされたエンジニア。子育て中の女性たち。
匿名のチャットルームで、彼女は励まされた。
「年齢なんて関係ない」 「今が人生最高の学びの時間」
一人じゃない。その実感が、美咲に大きな力を与えた。
03 最初の挫折
3か月目。
期末課題で、美咲は最低点を取ってしまった。
ウェブサイト制作の課題。デザインも機能も、講師から厳しい評価。
「諦めるしかない…」
その夜、美咲は涙を流した。子供たちは寝ている。静まり返った部屋で、彼女は自分の無力さを呪った。
04 転機
翌朝、美咲は決意した。
佐々木健一からのメール。
「失敗は学びの始まりだ。もう一度チャレンジしろ」
彼は、美咲の課題の具体的な改善点を詳細に添削してくれていた。プロフェッショナルな視点と、温かい励ましが込められた添削。
05 小さな成功
次の課題で、美咲は驚くほど高得点を取った。
シンプルながら機能的なウェブサイト。デザインも洗練されていた。
オンラインコミュニティのメンバーが祝福のメッセージを次々と投稿する。
「すごい!」 「諦めなくて良かったね!」
娘の美優も、母の変化に気づき始めていた。
06 地域との出会い
地元の起業家交流会に参加。
38歳の美咲は、最年長者の一人。しかし、彼女の熱意と学びへの姿勢は、若い起業家たちを驚かせた。
佐々木健一の紹介で、最初の仕事の機会を得る。地元の不動産会社のウェブサイトリニューアル。
報酬は5万円。しかし、それは単なる金額以上の価値があった。
07 家族の反応
夕食の時間。
翔太が言った。 「ママ、すごいね!」
美優は、少し照れくさそうに。 「別に…でも、まあ、悪くないかも」
夫との離婚後、初めて家族が笑顔で食卓を囲んだ。
08 未来への予感
窓の外。夕陽が街を染める。
美咲は、自分の手のひらを見つめた。かつては誰かに従属していたこれらの手が、今や自分の人生を切り開こうとしていた。
「まだ、始まったばかり」
彼女は心の中で呟いた。
(第三章 続く)