霧の中の灯台~第5話:記憶の扉⑤
5. 再び灯台へ
夜、アリシアは母の制止を振り切り、再び灯台へ向かった。赤い影の正体を確かめ、レオの失踪の真相を突き止める必要があると感じたからだ。
灯台の扉を開けると、そこには再び地下室への梯子があった。だが、今回、彼女は下へ降りる前に異変に気づいた。霧が灯台の中にも漂い始めていたのだ。
「……迎えに来たのね。」
アリシアは覚悟を決め、梯子を降りて地下室に入った。すると、霧の中からまたあの赤い影が現れた。
「君が必要なんだよ。レオを助けたいなら、私と一緒に来るんだ。」
赤い影の言葉は甘く、どこか懐かしい響きすらあった。しかしその一方で、胸の奥底にある恐怖が再び沸き上がった。
「レオはどこにいるの?!」
アリシアの叫びに、赤い影は笑みを浮かべてこう言った。
「君の心の中に答えがある。さあ、思い出せ――レオが消えた瞬間を。」
その言葉と同時に、アリシアの頭に激しい痛みが走り、彼女はその場に崩れ落ちた。意識が遠のく中、幼い頃の光景が鮮明に蘇り始める。
霧の中で彼女が見たのは――赤い影の正体そのものだった。