もし生まれ変わるなら③
第二章:再出発の予感
01 新たな現実
2019年3月。
離婚が成立した日、美咲は38平方メートルの狭いアパートで、新生活の準備を始めていた。
かつての豪華な一戸建てから、この狭い空間への移動。娘の美優は黙って荷物を運び、息子の翔太は、少し不安そうに部屋を見回していた。
「ママ、大丈夫?」
翔太の声に、美咲は微笑んだ。
「大丈夫よ。私たちの新しい人生の始まりだから」
02 閉ざされた未来、開かれる道
銀行の通帳を見つめる。
離婚調停で得た慰謝料と財産分与。それでも、今後の生活への不安は消えない。専業主婦として生きてきた38歳。スキルも、つながりも、希望も、すべてが途切れているように感じられた。
その夜。
子供たちが寝静まった深夜、美咲は古いパソコンの前に座った。
通信教育のウェブサイト。IT系の学部案内。
「まだ、遅くない」
彼女の指が、マウスをクリックした。
03 運命の出会い
翌日。
近所の図書館で、美咲は偶然一冊の本に出会った。
『38歳からのキャリアチェンジ』
表紙の女性の笑顔が、何かを囁いているように見えた。
本棚の隅で、彼女は最初のページを開いた。そこには、彼女の人生を変える言葉が書かれていた。
「人生は、いつでも、やり直せる」
04 予感
夕暮れ時。
アパートの窓から差し込む夕日が、美咲の横顔を照らす。
彼女の目には、かすかながらも確かな光が宿っていた。
これから始まる、まったく新しい人生への、静かな期待。
(第二章 続く)