霧の中の灯台~第5話:記憶の扉④
4. 母の告白
長老の話を聞いて帰宅したアリシアを、母が待っていた。彼女の顔はいつも以上に青ざめ、震える声で言った。
「アリシア……隠してきたことがあるの。」
その言葉に、アリシアは緊張した面持ちで続きを待った。
「レオがいなくなったあの日、私は村の他の人たちと霧の中で何を見たのかを聞いたわ。でも……私たち大人は何もできなかった。あの霧は恐ろしい力を持っていて、人の記憶を奪うの。」
「だから、お母さんも私に何が起きたか教えられなかったの?」
母は力なくうなずいた。
「でもひとつだけ確かなことがある。あなたは、霧の中でレオを助けようとした。そして……その代償に何かを失った。」
その言葉に、アリシアの中で断片的だった記憶がつながり始めた。