霧の中の灯台~第1話:帰郷と不気味な足音①

1. 再び霧の村へ

11月の寒風が吹きつける中、アリシア・サトウは小さな駅に降り立った。東京から3時間の電車とバスを乗り継いだ果てにあるこの漁村は、彼女が生まれ育った故郷だった。
10年ぶりに帰るその村は、記憶よりもさらに寂れて見える。朽ちかけた家屋、ほとんど人影のない商店街、そしてどこか空気全体に漂う不安感。

アリシアの胸に去来するのは、懐かしさではなく、幼い頃の忌まわしい記憶だった。村の灯台で起きた、幼なじみのレオの失踪事件。あの日以来、アリシアはレオが自分の目の前から消えていった光景を何度も夢に見るようになった。そしてそれは、大人になった今でも彼女を苦しめ続けている。

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