星降る丘の約束②

2. 反発する娘

美咲が慌ただしく帰宅すると、リビングでは中学生の娘・菜月がスマートフォンを片手にソファで寝転んでいた。

「菜月、明日から田舎に行くわよ。おじいちゃんの様子が悪いって病院から連絡があったの。」
美咲の声は抑揚を抑えて冷静に聞こえたが、どこか緊張感を含んでいた。

「え?急に?行きたくない。」菜月は顔を上げ、眉をひそめる。
「反抗しないで。行くの。」
「ママだって全然行ってなかったくせに、今さら何よ。」

母娘の間に冷たい沈黙が流れる。菜月の口調には苛立ちと諦めが混ざり、美咲はため息をついてキッチンに向かう。

「おじいちゃんが最後かもしれないのよ」と、背を向けたまま呟いたが、それ以上の言葉は出てこなかった。

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