冬の静寂③

それは平凡な冬の朝のはずだった。しかし、美咲の中で何かが決定的に変わろうとしていた。

午前七時。保育園の送迎準備。息子の服を着せながら、美咲の手は震えていた。昨晩の感情の渦は、疲労と共に彼女の骨の髄まで染み込んでいた。

突然、息子が彼女の頬に小さな手を触れた。

「ママ、だいすき」

その言葉が、美咲の硬直した感情を溶かした。愛おしさと、申し訳なさが入り混じる。

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