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人魚姫にはなれない

 劇団四季「リトルマーメイド」を観劇した。ミュージカル、やっぱりいいな。大勢の人が歌っている様には感動させられる。舞台の高さを使った演出にも心を掴まれた。

 四季のリトルマーメイドはグリム童話とあらすじが異なった。

 好奇心旺盛な人魚姫・アリエルは王女としての暮らしを窮屈に感じており、人間界に興味を持っていた。ある時王子様に恋したことをきっかけに、海の国の王女という地位を捨て、海の魔女の契約し、人間になることを決意する。魔女・アースラとの契約はこうだ。
「アリエルの美しい声と引き換えに3日間だけ人間に変えてやる。その間に王子様と口づけを交わせればずっと人間のまま生きられる。口づけを交わせなければ、アリエルの魂はアースラのものとなる。」
 声を失ったアリエルは王子様とうまく意思疎通できず、3日間は瞬く間に過ぎてゆく。また、アースラの悪だくみで海の世界も窮地に陥る。はたして、アリエルは無事人間になれるのか、海の世界に平和は戻るのかーー


 結論から言うとハッピーエンド。アリエルは王子様とキスして声を取り戻し、人間になる。魔女アースラは成敗され海の世界には平穏が戻り、人間界とも和平が結ばれる。
 やっぱり四季のミュージカルはハッピーエンドじゃないと!と思う。個人的には、王子様との恋は叶わず泡沫となって消えてしまうグリム童話の展開も好きだけれど、大勢の人に受け取ってもらえる話にするならハッピーエンドであることは必須だ。アリエルは物語の主人公だから、王子様と末永く幸せに暮らす。でも私がアリエルだったらどうだろう。
 最初は幸せかもしれない。愛する人と結ばれて、海の世界の住人たちとも会うことができる状況になった。もしかすると子供を身篭るかもしれない。可愛い子供に恵まれ、優しい夫と共に暮らし、家族にも会うことができる。こんなに幸せなことって他にない。
 しかし、海の世界だろうと人間の世界だろうと王室は王室だ。従者を置かなければならないし、式典にも参加しないといけない。自由に発言したり行動したりはできない。海の王女時代人間界に強く憧れたのと同じように、今度は城下町での生活を切望する姿が目に浮かぶ。

 あくまでもおとぎ話の世界だから、「王子様と末永く幸せに暮らしました」で終わらせているということを忘れたくない。
 油断すると、王子様と結ばれることで、今感じている不満も全て解消されるという勘違いをしてしまいそうになる。女性にとって結婚は、あらゆる問題を解決する奥の手に見えてしまう時があるんじゃないか。私も「仕事やだ〜〜寿退社したいー!」とこぼすことがある。でも、結婚では仕事の問題は解決されない。

 

 結婚はただのパートナーシップ契約。人生の一要素。すべてを解決する魔法じゃない。王子様と結ばれてすべてがうまくいきました、というフィクションに引っ張られることのないよう現実を見つめたい。

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