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Khushi

今年の1月17日にKhushiの新譜『Strange Seasons』がリリースされた。

私が今年聴いた中でも上位にくるアルバムだった。アルバム全体に漂う”繊細さ”や”脆さ”の中に、確かに存在する”秘めたる力強さ”を感じた。

なんせ彼は、ほぼ無名のアーティストなので、日本語それから英語でもあまり情報が出ていないので、数少ない文献を基に紹介していきたいと思う。

まず"Khushi"の読み方だが、「クシ(ー)」と読む。ヒンディー語で「幸せ」という意味だ。Khushiは幼少期のニックネームだったらしい。本名はKalim Patel。そして、彼がソロ活動する前は、Strong Asian Mothersというエレクトロ・トリオとしてロンドンで活動していた。彼はこのバンドでステージでパフォーマンスする楽しさを感じ始めたと言っている。

ここでブッ込むと、彼は昨年James Blakeが出したアルバム『Assume Form』のミキシング作業に携わっていた。

そこでのコネクションもあってか、Khushiが昨年出したシングル「This Is, Pt. I」のリミックス版を手掛けた。

『Strange Seasons』はロンドンにある小さな家で6年かけて作られたアルバムとなっている。しかし、昨年既にシングルとして、「This Is, Pt. I」、「From Me」それに「Freedom Falls」はリリースされていた。

特に、「Freedom Falls」は思い入れが強いらしく、10年間温めていたという。さまざまなバンドで演奏されたが、一番最初のバージョンはインディー・バンド風で、もう一つは、さらにグルーヴィでか弱いJai Paulのようなサウンドだったという。そして、アルバムにあるバージョンは、コードのアイデアなどを友達に見せるために作ったデモ音源から浮かび上がってきたとも言っていた。この経験が理想型のアルバムを作ると言うプレッシャーから解放してくれたのだ。

James Blakeとの対談では、Jamesに

「ワーナー(Khushiが所属するレーベル)は君の次のアルバムに何年くらい待ってくれると思う?」

と質問したところ、Khushiは

「我慢してほしい。10年後にまた聞いてくれ」

と答えた。そして、こう続けた。

音楽を作るのに多大な労力を要するかというと、それは場合によりけりだ。RadioheadやFrank Oceanのように製作に何年にもおよぶアプローチをする人もいれば、The White Stripesのように2週間足らずで素晴らしいアルバムを作る人もいる。

Khushiが「アルバムは完成に近い状態だが、もう一捻りしなければならない」時に、Jamesの彼女である女優のジャミーラ・ジャミルの紹介でJamesが製作に加わったという。そこで、プレッシャーを感じていたKhushiに、自身も感受性が高いと自負するJamesが彼にこう声をかけたという。

"Stop being a pussy. Such a coward."

いろんな人のサポートもあり、このアルバムは完成されたのだ。

ちなみにジャミーラはJamesがグラミー賞を逃した時に撮られた写真で一緒に嘆いていた人だ。

さらに、この対談の最後には、こうも言っている。

仕事量と生産性と創造力はそれぞれまったく違うものだ。多くの創造力豊かな人たちが何かを形にしようとする時の「仕事量」は、なぜ自分が不幸せなのかを考えている時間に置き換えられると思う。

何かを生み出すには、何かを失わなければならない。

そのような根本的なものをこの対談で再確認できた。

今回、Khushiのアルバムが製作された経緯について書くつもりだったが、面白い記事を見つけて、このような終わり方になった。

製作、または創造するという行為は身を削るおもいで取り組まなければならない。(自分に言い聞かす)

《参考文献》


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