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おとなりさんは…



業者:じゃ以上ですね!

〇〇:はい!ありがとうございました!

引っ越し業者が帰っていく。

〇〇:よしっ…

社会人2年目、この春からこの街に転勤してきた僕。

これから荷物も整理しなきゃだけど…

〇〇:とりあえず近所に挨拶に行くか…

僕は手土産をもって挨拶回りに向かった。

ーー

〇〇:とは言ったものの緊張するな…

ピンポーン

??:は〜い!

女性か…より緊張するな…

ガチャッ

??:はい…ってえっと〜

〇〇:今日から隣に引っ越してきた〇〇です!
これよろしかったら…

??:わざわざすみませ〜ん。
私、山下美月です!

〇〇:これからよろしくお願いします!

美月:よろしくお願いします!

バタンッ

〇〇:緊張したぁ〜…

でもすごい綺麗な人だったな…

ーー

〇〇:やべっ、こんな時間!

荷物を整理してたら夕食の時間になってきた。

〇〇:とりあえずコンビニで済ますか…

ガチャッ

〇〇:あ。

外に出ると買い物帰りだろうか、
荷物を持った山下さんと会った。

美月:あ、こんばんは〜。
さっきぶりですね!

〇〇:そうですね。
…お買い物帰りですか?

美月:そうなんですよ〜。
じゃがいもが安くてつい買いすぎちゃって〜。

〇〇:へぇ〜。

美月:〇〇さんはこれからですか?

〇〇:えぇ、荷解きの途中なんですけど
疲れたんでコンビニで弁当でも買おうかと…

美月:もしよかったら食べていかれます?

〇〇:え!?

美月:肉じゃが作ろうと思うんですけど
1人分で作るの大変で…

〇〇:でも…

美月:さっき頂いたお菓子美味しかったんでそのお礼です!

〇〇:じゃあ…

ーー

〇〇:お、お邪魔しま〜す…

美月:どうぞ!狭いところですが…って同じ間取りか笑

〇〇:そうですね笑

美月:すぐ作るんでくつろいで下さい!

〇〇:わかりました…。

ーー

美月:お待たせしました〜。

〇〇:おぉ〜美味しそう!

目の前に美味しそうに盛り付けられた料理が並ぶ。

〇〇:いただきます!

美月:めしあがれ〜。

〇〇:モグモグうまっ!美味しいです!

美月:よかったです!
ところで荷解きって終わりました?

〇〇:それが…最低限のものはやったんですけど他のものがまだ…

美月:もしよかったら手伝いましょうか?

〇〇:い、いえ!大丈夫ですよ!

美月:困った時はお互いさま!
2人でやった方が早く終わりますし!

〇〇:い、いいんですか?

美月:はい!明日は特に予定もないので!

〇〇:じゃあ…お言葉に甘えて…

美月:はい!

ーー

ピンポーン

〇〇:は〜い

ガチャッ

美月:おはようございます!

〇〇:おはようございます!
今日はよろしくお願いします!

美月:よしっ!じゃあ早速やっちゃいますか!

〇〇:そうですね!

ーー

僕が棚とかの組み立て、
山下さんがダンボールの中を出しながら
整理してくれていた。

美月:〇〇さん!
こっちのダンボールは終わりましたよ!

〇〇:ありがとうございます!
ちょっとまとめてきますね。

美月:そしたらその間にこの箱の中を…
何が入ってるかな〜

ガサゴソ

美月:漫画とか雑誌かな…って

〇〇:ふぅ…ってああ!!

山下さんの開けた箱の中には
ちょっといかがわしいものが…

美月:ご、ごめん!
わ、私何も見てないから!
文字も写真も何も…って手遅れか…

〇〇:そ、そうですね…

美月:ま、まぁでも男の子だし…
別に変じゃないし!

〇〇:お気遣いありがとうございます…
言ってなかった僕が悪いし…

美月:いや、不躾に開けまくった私も悪いし…

〇〇:じゃあ、とりあえずお互い様ってことで!

美月:そうだね…ところでお腹空かない?

〇〇:そうですね…

美月:こんなことをあろうかと作ってきました!

〇〇:えっ!?ほんとですか!?

美月:じゃ〜ん!

山下さんが広げたお弁当箱には
美味しそうなおにぎりが詰められていた。

美月:めしあがれ!

〇〇:モグモグうまっ!

美月:よかった〜。

〇〇:昨日の肉じゃがといい、料理上手ですね!

美月:そんなことないよ〜!
あ、いつのまにか敬語外れてましたね…

〇〇:あぁ、気にしないで下さい!
全然タメ口でいいですよ!

美月:じゃあ…少しずつ…ね?

ーー

僕らはお昼ご飯を食べた後、話をしながら作業を続けた。

美月:よし…こんなもんかな?

〇〇:はい!ありがとうございました!

美月:でも力仕事は任せちゃったよね?

〇〇:僕の部屋だから当然ですよ!

美月:テキパキやっててカッコよかった…

〇〇:え?

美月:いえいえ!何でもないです!
じゃあ帰りますね?


なんだろう…すごい名残惜しい気がする…

きっと今日がすごい楽しかったんだろう…

〇〇:あ、あの!

美月:ん?

〇〇:その…こ、恋人とかっていますか?

美月:え…

な、何聞いてんだ僕…

会って2日目の人にこんなことを…

美月:…いないよ?

〇〇:え?

美月:私…恋人いないから…

〇〇:え…

美月:そ、それじゃ帰るね!

〇〇:あ、はい!ありがとうございました…

ガチャッ

いないのか…

ってなんであんな事聞いたんだろう…

ーー


あれからこっちでの仕事が始まった。

山下さんとは生活のリズムが少し違うのか中々会わなかった。

いつも仕事から帰ってくると隣からいい匂いがしてくる。

山下さんの方が早く帰ってるんだろう。


ーー

〇〇:はい、はい、わかりました!
お疲れ様でした!

ピッ

今日は取引先にプレゼンだった。

終了の連絡をすると直帰でいいとのこと。

いつもより早い時間で帰れる。

〇〇:おっ、ちょうどバスが…

僕は家の方面に行くバスに乗った。

美月:あ、〇〇さん!

〇〇:あ、山下さん!

美月:今日は仕事早いんですね!

〇〇:取引先から直帰なんで…

美月:いつもはもうちょっと遅いですもんね…って、なんかストーカーみたいな話し方になっちゃいましたね笑

〇〇:あ、いえ…

美月:うちの壁薄いから…
ドア開けた音とか聞こえるんです。
それを聞いていつも心の中で
「おかえり」って言ってるんですよ?

〇〇:そ、そうなんですね!
僕もいつも帰ると山下さんの部屋から
いい匂いがしてくるんでついつい
誘われちゃいそうになるんですよ笑

美月:そのまま誘われてもいいのに…ボソッ

〇〇:え?

美月:い、いや!なんでもないよ!
あ、そうだ!
今日久しぶりにうちでご飯食べない?

〇〇:いいんですか!?

美月:いつも1人で寂しいし…ボソッ

〇〇:?

美月:じゃあちょっとスーパーに
寄っていきましょう!

ーー

僕らはバスを降りてスーパーに入った。

美月:今日は〇〇さんの好きなものにします!
何が食べたいですか?

〇〇:ん〜ハンバーグ!

美月:ふふっ笑

〇〇:…今子供みたいって思いました?

美月:ううん?でも可愛いなって笑

〇〇:絶対思ってるじゃん…

美月:じゃあハンバーグにしよう!

ーー

スーパーを出た後、山下さんの部屋に入った。

〇〇:お、お邪魔しま〜す…

美月:もう!
2回目なんだから緊張しなくていいのに〜

〇〇:女性の部屋ってだけで緊張しちゃって…

美月:すぐに作っちゃうから待ってて!

〇〇:はい…

トントン、ジュー

キッチンから
小気味いい料理の音が聞こえてくる。

たまに山下さんの方を見てみる。

綺麗な人が料理している姿はすごい絵になる。

美月:ニコッ

目が合うと少し微笑んでくれる。

こんな人が家にいたらどんなにいいだろうか…

美月:お待たせしました〜!

そんな事を考えていると
山下さんの料理が完成した。

〇〇:おぉ〜

美月:〇〇さんってハンバーグ食べる時
何付けて食べます?ケチャップ?ソース?

〇〇:実は…塩胡椒です…

美月:えぇ!?本当!?

〇〇:はい…

美月:私もなの!やっと同じ人がいた〜!

〇〇:えっ!?そうなの!?

美月:あんまりいないんだよね〜
これが一番美味しいのに…

〇〇:だよね!

美月:うん!

ーー

〇〇:ご馳走様でした!

美月:どうだった?

〇〇:とってもおいしかったです!

美月:よかった。じゃあお皿片しちゃうね?

〇〇:あぁ、それは僕がやりますよ!

美月:でも…

〇〇:ごちそうになったお礼です!

美月:そう…じゃあお願いしちゃおうかな…

〇〇:はい!山下さんはくつろいでて下さい!

美月:うん…優しいなぁボソッ

ーー

〇〇:ふぅ…

皿を洗い終えた僕はソファで
くつろいでいる山下さんのとこに向かった。

〇〇:山下さ〜ん。終わりましたよ!

美月:ありがとう!…ちょっとこっち座って?

山下さんは自分の隣をポンポンと叩く。

〇〇:えぇっと…

美月:仕事終わりで疲れてるでしょ?
少し休もう?

〇〇:はい…

僕は山下さんの隣に座った。

美月:…やっぱりいいなぁ…

〇〇:え?

美月:今日みたいに誰かと
一緒にご飯食べるって…

〇〇:はぁ…

美月:私、実家から出てほとんど
1人で食べてたからさ…
〇〇さんが引っ越してきた日に
一緒に食べた時…ちょっと嬉しかった…。

〇〇:…

美月:あの日後ね?一人暮らしには
慣れたと思ってたけど
やっぱり寂しくなっちゃったんだよね…

〇〇:山下さん…

美月:それも…
〇〇さんが素敵な人だったから…

〇〇:えっ…

美月:引っ越して来た時、
今時は隣に挨拶なんて来ないのに
しっかりくるってちゃんとした人なんだなって…

〇〇:そんな…こと…

美月:それにお部屋のお片付けの
お手伝いした時、テキパキやってて
カッコよかったし…
今日だって私が誘ったのに
お皿洗ってくれたし…

〇〇:…

美月:ねぇ〇〇さん?
これからも一緒にご飯…食べてくれますか?

〇〇:え…

美月:しょ、食事の趣味も合うみたいだし…
それに…

〇〇:?

美月:よ、良ければ…こ、恋人に…

〇〇:え!?

美月:あぁ変…ですよね…きゅ、急にそんな…

〇〇:…いいですよ。

美月:え!?

〇〇:さっき山下さんが料理してる姿を
見て思ってたんです。
こんな人が側にいてくれたらいいなぁ…って。

美月:えぇっとじゃあ…

〇〇:僕も山下さんとご飯を
一緒に食べたいです!

美月:…うん!

チュッ

〇〇:っ!?山下さん!?

美月:美月って呼んで!敬語も禁止!

〇〇:み、美月…

美月:うん!それでよし!

チュッ

美月:ねぇ〇〇?

〇〇:ん?

美月:食べ物とかその辺の相性が
いいのはわかったからさ…

ドサツ

〇〇:!?

美月:"こっち"の相性も試してみない?

〇〇:…ゴクリ


こうして引っ越した先の隣の部屋の人が人生でずっと隣に居てくれる人になりました。




あ、ちなみに相性はバッチリでした。

何がとは皆まで言いませんが、


Fin

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