心の拠り所
社会人になり3年目。
浮き沈みも無く平凡な毎日を過ごしている。
周りは彼女だとかそんな話をしているが、
俺には関係ない話だ。
週末の今日も家で1人、
コンビニで買った缶ビールで晩酌するところだ。
ピンポーン
夜のこの時間、宅配を頼んでなければ
俺の場合、この家に訪れる可能性があるのは
たった1人だ。
ガチャ
??:こ、こんばんわ…
〇〇:はぁ…また来たのか…"遥香"
遥香:うん…
そのたった1人とはこの"賀喜遥香"と言う
女性だ。
〇〇:ま、とりあえず上がれ。
遥香:お、お邪魔します…
--
〇〇:ビールでいいか?
遥香:うん…
カシュッ
遥香が俺の家を訪ねる理由、
それもたった1つ。
〇〇:んで?今度はなんで別れたんだ?
遥香:それがね…
男と別れたからだ。
俺と遥香は大学のサークルで知り合った。
その頃から気の合う奴でよく話していた。
しかし、遥香はなんと言うか…男運が無い。
遥香は普通に美人だ。
それもあり遥香に好意を寄せる男も少なくなかった。
ただ、遥香は他に類を見ない程にピュアだ。
ちょっとした事でキュンとなるらしい…
いつか騙されるんじゃないかと心配になる。
遥香:はぁ…なんでこんな上手くいかないんだろう…
〇〇:ちょっとした事で好きになるからだろ。
遥香:だってぇ…
〇〇:そのうち騙されて取り返しのつかない事になるぞ?
遥香:うん…気をつける…
それから俺たちはたわいもない会話して解散した。
--
私は男運がない。
優しくされるとすぐ好きになっちゃう…。
でも、私の何かがいけないのか…
「つまらない」
「楽しくない」
そう言われて別れを切り出される…。
私はその度に
大学の同期の〇〇のとこに行った。
〇〇といると気が楽になるというか、
素の自分でいられる。
ピロンッ
遥香:ん?
〇〇からメッセージが届いた。
開くと…
遥香:…え?
--
〇〇からあのメッセージから来て1か月…
あれを見たときから心に
ぽっかり穴が空いたように思う。
今まで何回も別れを繰り返しても
こんな事はなかった。
でもそれは〇〇と言う存在がいたから…
その〇〇も誰かのものになっちゃった…
これで気づいた。
私は…〇〇の事が…
ピンポーン
遥香:?
今日は特に宅配とか来る予定はない。
親とか友だちからも連絡は無い。
遥香:誰だろう…
ガチャ
遥香:えっ!?
〇〇:よぅ…
扉を開けるとさっきまで頭に浮かんでいた人が疲れ切った顔でいた。
遥香:ど、どうしたの!?
〇〇:あはは…まぁ…ちょっとな…
遥香:と、とにかく入って!
〇〇:うん…
--
私はリビングに〇〇を座らせた。
遥香:で…どうしたの?
〇〇:…彼女と別れた。
遥香:え!?
〇〇:今日彼女の家にいったら
別の男がいた。
聞いたら"本命"だってさ。
遥香:え…
〇〇:あはは、バカだよね。
向こうは遊びでしか無いのに
本気になっちゃってさ…
遥香:…
〇〇:今まで彼女いた事ないからさ…
こんなあっさり騙されるんだね…。
ひどい…
いつも私の別れ話や仕事の愚痴なんかも
文句言わずに聞いてくれて励ましてくれる。
そんな人を…
〇〇:それで心に穴が
空いたみたいになってさ…
気づいたらここに足が向いたって訳。
これじゃいつもと逆だな笑
あんだけ騙されんなよって言ってたのに笑
遥香:…。
ギュッ
〇〇:え…
私は気づいたら〇〇を抱きしめていた。
〇〇:あの…遥香…。
遥香:私も心に穴が空いたの…。
〇〇からあのメッセージが来てから…。
〇〇:遥香も…?
遥香:その時に気づいたの…。
私には〇〇が必要だって。
〇〇:え…。
遥香:他の男の子と付き合ってても
どっかで〇〇のことが浮かんでた。
多分それが原因で別れてた。
〇〇:…。
遥香:〇〇は私にとって…
心の拠り所だったの。
〇〇:…。
ギュッ
遥香:え…
〇〇は私を抱きしめ返した。
〇〇:俺も…気づいた。
あの女の家から出た時に思い浮かんだのは
遥香の顔だ。
遥香:えっ!?
〇〇:実はさ、遥香が別れたって話を聞くと
どっかでほっとしてたんだ。
だから多分…俺も遥香が必要なんだ。
遥香:〇〇…。
〇〇:別れてすぐ言う事じゃないかも知れないけど…
ギュッ
〇〇は抱きしめる力を強めた。
〇〇:俺と…付き合って下さい。
遥香:…うん。
〇〇:こんな近くにいたんだな…お互い。
遥香:うん…そうだね。
〇〇:人という字は支え合って出来ているって
よく言ったもんだな…。
遥香:気づいたらお互い支え合ってたんだもんね。
〇〇:これからもよろしく。
遥香:うん!
Fin
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