ドン底にいた俺が後輩に偶然再会した話。
カランコロン♪
〇〇:いらっしゃいませ〜
ここは都内にあるカフェ。
俺の今の職場だ。
とある事情で路頭に迷っていた
俺をここのマスターが拾ってくれた。
カランコロン♪
〇〇:ありがとうございました〜
拾ってくれた恩義はあるが、
元からカフェ店員を目指して上京したわけではない。
だが、その夢も追いかける事すらできなくなり、
こことボロアパートを
行き来するだけの毎日になった。
--
カランコロン♪
〇〇:いらっしゃいませ〜
女子大生だろうか…
若い女性が入ってきたので
コップに水を注ぎ持っていく。
〇〇:ご注文決まりましたらお呼び下さい。
??:!?
うぇっ、あ、はい!
〇〇:?
その女性はなぜかびっくりした様子で
返事をした。
だけどその声にはなぜか聞き覚えがあった。
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??:す、すいませ〜ん。
さっきの女性に呼ばれた。
??:コーヒーとサンドイッチのセットを一つ…
〇〇:かしこまりました。
コーヒーはアイスとホットどちらに致しますか?
??:アイスで…
〇〇:かしこまりました。
それではお待ち下さい。
俺はキッチンに戻りマスターに注文を伝えた。
--
〇〇:お待たせ致しました。
コーヒーとサンドイッチです。
??:ありがとうございます…。
〇〇:では、ごゆっくり…
??:あ、あの…
〇〇:?
カウンターに戻ろうとした所で
声に聞き覚えのある女性に呼び止められた。
??:あの…人違いだったら申し訳ないんですけど…
〇〇…さんですか?乃木坂高校にいらっしゃった…
〇〇:そう…ですけど…
??:お久しぶりです!
私です!
先輩が3年生の時に1年生だった中西アルノです!
〇〇:中西…あぁ!
軽音楽部で一緒だったあの中西か。
アルノ:そうです!
〇〇:久しぶりだな。元気にしてたか?
アルノ:はい!
〇〇:あれ?でもここ地元から離れてるだろ。
アルノ:私も大学生になったんで
こっちに来たんですよ!
〇〇:なるほどな。
アルノ:色々お話ししたいんですけど…
お仕事中ですよね?
〇〇:あぁ、そうだな。
マスター:あぁ、それなら〇〇くんは
休憩にしてもらっていいよ。
せっかくの再会だしね。
〇〇:あぁ、すみません…
マスターのご好意に甘え、中西のテーブルに座る。
アルノ:先輩は元気でしたか?
〇〇:まぁ…ぼちぼちかな。
アルノ:バンドの方は順調ですか?
〇〇:…
アルノ:あれ、聞いちゃマズかった…ですか?
〇〇:あぁいいんだ。
バンドは解散したよ。
アルノ:えぇ!?
〇〇:色々あってさ…
それから俺は中西に経緯を話した。
俺が上京した理由は地元で組んでいたバンドで
成功する為。
地元のクラブハウスではそれなりの人気で、
お客様はそれなりに入っていた。
高校卒業するタイミングで
とあるレコード会社の人の目に留まり、
デビューさせてもらえることになった。
…だけど、デビュー直前でボーカル担当のやつが
暴力沙汰を起こし、契約も解除。
バンドもそのまま解散した。
〇〇:…ていうことがあったのさ。
それで路頭に迷ってた頃に
ここのバイトとして雇ってもらったって訳。
アルノ:大変…でしたね。
〇〇:まぁあいつは元々気性が荒かったし、
遅かれ早かれこうなってたかもね。
アルノ:でもこのカフェ、雰囲気いいですね。
〇〇:うん。すごい落ち着くよ。
アルノ:…あれ?
店内を見回していた中西があるものに気づく。
アルノ:カフェなのにステージがあるんですか?
〇〇:あぁ、ここは夜はバーとして営業してるんだ。
その時たまに演奏する人がいるんだ。
アルノ:先輩もここでギター弾いてるんですか?
〇〇:ほんとに暇な時にだけね。
アルノ:私…先輩のギター久しぶりに聴きたいです!
〇〇:えぇ…
アルノ:お願いします!!
〇〇:うん…マスターに聞いてみる。
マスターに確認し、
俺はステージに上がりギターを弾いた。
〇〇:♪〜🎸
アルノ:上手い…
中西は俺のギターを弾く姿を眺めていた。
アルノ:…きっと誰だって誰だってあるだろう〜♪
すると中西は俺のギターに合わせて歌い始めた。
アルノ:…ハモれ〜♪
パチパチ👏
マスター:さすがだね。
〇〇:マスター…
マスター:〇〇くんのギターはもちろんだけど
そちらのお嬢さんの歌声も見事だね。
アルノ:あ、ありがとうございます…
〇〇:ほんと、
高校の頃より上手くなったんじゃない?
アルノ:そんな…先輩まで…
マスター:どうだい?
君もここで働いてみるかい?
アルノ:えぇ!?
マスター:〇〇くんとお嬢ちゃんの歌。
これがあればうちの名物になるよ!
アルノ:い、いいんですか?
マスター:もちろん!
アルノ:ちょうどアルバイト探してたんで…
お願いします!!
〇〇:これからよろしくな。
こうして中西はここで働き始めた。
昼間に出勤の時はカフェ店員として。
夜は俺のギターに合わせ歌う。
中西の歌声は好評でお客さんは次第に増えていった。
--
中西が働き始め、半年が経った頃…
カランコロン♪
アルノ:ありがとうございました〜。
〇〇:よし。これで昼間の営業は終わりだな。
アルノ:疲れた〜。
〇〇:そしたら早く片付けて休憩するぞ。
アルノ:はいっ!
カタッ…カタッ…
アルノ:よいしょ…
〇〇:お、おい。そんな一気に皿持たなくても…
アルノ:大丈夫ですっ…あぁ!!
ガシャーン
〇〇:おい!大丈夫か!?
アルノ:いてて…
〇〇:ったく…だから言ったろ…
アルノ:す、すみません…
カランコロン♪
〇〇:あ、すみません。
昼間の営業は終了してまして…
男1:あぁ、申し訳ない。
実はちょっとお話しがあって…
〇〇:お話し?
入ってきた男性は中西の方に向かった。
男1:君が夜の営業の時に歌っている子かい?
アルノ:はい…そうですけど…
男1:突然押しかけて申し訳ない。
実は私こういうものでして…
男性は名刺を出した。
アルノ:…えぇ!?
〇〇:どうした?
アルノ:ま、〇〇さん。こ、これ…
〇〇:ん?って…えぇ!?
名刺を見ると、
超大手レコード会社のソヌィミュージックレコードの
取締役・今野と書かれていた。
今野:実は先日君の歌声を聞いていてね。
君の歌を日本…いや世界に届けてみないか?
アルノ:えっ…
今野:君の歌声にはそれほどの魅力がある!
どうだろう?
アルノ:…クルッ
中西は俺の方を向く。
〇〇:いいんじゃないか?
アルノ:えっ…
〇〇:お前の歌声は唯一無二のものだ。
絶対成功する。
近くで見て来た俺が保証する。
アルノ:〇〇さん…。
〇〇:まっ、こうして一緒に
できなくなるのは寂しくなるけどな笑
今野:いや、君にも一緒にいてもらう。
〇〇:え?
今野:実は君のことはバンド時代から知っていたよ。
君のギターも彼女の歌声のような魅力がある。
こんなユニットは今後絶対現れない!
〇〇:…中西、どうする?
アルノ:私は…
〇〇さんと一緒ならやってみたいです!
〇〇:俺も…同感だ。
今野:ほんとかい!?
〇〇:はい。
〇ア:よろしくお願いします!!
こうして俺たちは
メジャーデビューした。
--
3年後…
アルノ:ここまで…来ましたね。
〇〇:あぁ…
俺たちの前には目標の一つである、
日本武道館がそびえ立つ。
アルノ:…。
俺は武道館を見つめる中西の姿を見つめていた。
アルノ:〇〇さん?どうかしました?
〇〇:ん?あぁ、いやなんでもない。
2人でデビューした頃から俺にはとある感情が
芽生えていた。
アルノ:ほら、行きますよ!絶対成功させましょう!
〇〇:…あぁ。
俺はその感情をしまって武道館に入った。
--
〇ア:お疲れ様でしたーー!!
カーン🍺
デビューしてからの慣例でスタッフさんとの打ち上げの後は必ず2人だけで打ち上げを行っている。
場所は俺らが働いていたカフェだ。
アルノ:それにしてもここまで色々ありましたね〜
〇〇:そうだな…
アルノ:まさか〇〇さんがドラマに出るなんて笑
一度ドラマ風のMVを公開した時のこと。
その時の演技が思いのほか好評で
それから演技の仕事を頂いていた。
〇〇:そういう中西もバラエティに
結構呼ばれてるじゃん。
デビュー当初、楽曲も評価されていたが、
中西のルックスも評価されていた。
しかし、ルックスや歌声からは想像できないほど
中西は鈍臭い。
世間はその姿すら可愛いと評し、
バラエティ番組に引っ張りだこ。
まさにアイドルのような人気だった。
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打ち上げ終了後、俺らは近くの川辺を歩いていた。
アルノ:武道館ライブ楽しかったですね!
〇〇:あぁ…。
アルノ:よ〜し、次はドームだ!!
〇〇:…。
俺は夢を語るその横顔を見つめる。
ずっと隣にいるが、人気は中西の方が断然ある。
なんだかな…。
アルノ:ん?どうかしました?
〇〇:え、あぁ、いやなんでもない。
アルノ:嘘だ。
その顔はなんか考え事してるときの顔ですよ?
〇〇:え…
アルノ:私達の仲に隠し事は無しですよ!
〇〇:考え事って言ってもくだらない事だよ。
アルノ:どんな事ですか?
〇〇:なんか…お前がなんか遠くに感じてな。
アルノ:私が…遠くに?
〇〇:一緒にデビューして一緒のユニットだけど
人気はお前の方が高いからな…。
アルノ:…そんなことですか。
〇〇:へ?
アルノ:…昔の話ですけど、
私がなんで軽音楽部に入ったか知ってますか?
〇〇:いや?
アルノ:当時新入生向けにやってたライブで
〇〇さんを見たんです。
その時に聞いたギターソロに感動したんです。
この人と一緒にやりたい。
そう思って入ったんです。
〇〇:…。
アルノ:でも高校にいた時は叶いませんでした。
そしてあのカフェで偶然会った時思ったんです。
運命だな…って。
〇〇:運命…か。
アルノ:その時からずっと〇〇さんの隣に
居たいって思ったんです!
一目惚れの人だから!
〇〇:えぇ!?
アルノ:これはあんまり言いたくなかったんです…。
それで気まずくなって活動がしづらくなるが嫌だったんです…。
〇〇:なるほど…な。
アルノ:す、すいません!!
こんな話をして…。
〇〇:いや、いいんだ。
…俺も同じだから。
アルノ:ふぇっ!?
〇〇:最初はただの後輩だった。
でもカフェで再会して…一緒に働いて…
2人でデビューして…
そうやって一緒にいるうちに
なんだか愛おしく思えた。
だからは俺は言う。
俺は中西アルノが…好きだ。
アルノ:う、嬉しい//
〇〇:だからユニットとしてだけじゃなく。
これからの人生も2人で一緒にいてくれませんか?
アルノ:はいっ!喜んで!!
こうして俺たちは恋人同士としての人生も始めた。
後日のテレビ番組にて、2人の呼び方が
呼び捨てになっていた事でネットでは
付き合っているんじゃないかとの憶測が飛び交った。
そして付き合い始めてから2年後…
アルノ:今日はこのドーム公演に
来ていただきありがとうございました!!
ワァァァァァ!!!
アルノ:そしてここで私達から発表があります!!
ワァァァァァ!!!
アルノ:私、中西アルノとギターの●●〇〇は…
結婚します!!!!
ワァァァァァ!!!!!!!
と、念願だったドーム公演にて発表した。
今では夫婦ユニットとして活動している。
アルノ:ねぇ〇〇?
〇〇:ん?
アルノ:さっきマネージャーさんから
聞いたんだけど…
"今度アメリカでパフォーマンスが決まったって!"
〇〇:マジで!?
アルノ:目標…どんどん達成していくね。
〇〇:あぁ。
アルノ:だからさ…
アルノ:これからもずっとそばにいてね!!
Fin
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