灯台下暗し、ただ近づくとめっちゃ明るい
○○:でさぁ~こんなことがあってさ~
俺は香川○○、社会人2年目。
営業の仕事をしているが勤め先がいわゆる
ブラック企業だ。
??:あんたも大変だね。
こんな俺の話を聞いてくれてるのは賀喜遥香という女性。
大学の同期でサークル仲間で唯一仲が良かったやつだ。
賀喜は一流企業の受付嬢をしている。
○○:いいよな~遥香は。
俺みたいなブラックに勤める底辺社会人とは違うよ。
遥香:私も大変だよ?部署が多いから覚えるのに必死よ。
○○:でもあの大企業坂道ホールディングスの
受付嬢だぜ?そうとうおモテになるんでしょうね~
遥香:まぁ、確かにお誘いは受けますけど?
○○:でもお前は男に興味なさそうだもんな。
大学ん時もずっと可愛い女の子のとこ
にしかいなかったし。
遥香:べつに興味ないわけじゃないけど、
ピンとくる人がいないんだよね。
○○:じゃなぜ俺の誘いは基本来るの?
遥香:う~ん、なんだろ。
そういう感じで接してないから?
○○:なんかそれはそれでショックだな。
遥香:あはは笑
俺と賀喜はほぼ週一のペースで飲んでいる。
一流企業の受付嬢には不釣り合いの大衆居酒屋で
俺の愚痴を聞いてもらうのがほとんどだ。
遥香:そういうあんたは彼女できないの?
○○:仕事が多くてそれどころじゃねえ!
遥香:あんた顔だけはいいんだから、
その気になれば作れんじゃない?
○○:顔だけか!
・
・
・
○○:さて、そろそろ帰るか。
遥香:そうね。じゃまたね!
○○:おう。またな!
こんな感じで社会人になってからの唯一の息抜きと
なっている。
――
4月…
部長:今日から新入社員が入る。
じゃあ自己紹介よろしく!
??:は、はい。え、遠藤さくらです!
よろしくお願いしましゅ!あっ…。
社員1:なぁあの子可愛くない?
社員2:あぁ、社内で一番だな。
部長:よし、じゃあ○○!教育よろしく!
○○:え?俺っすか?
部長:あぁ、最近の業績をみてその結果だ。
確かにこんな会社に勤めていて給料を上げたいが
ために真面目にやってはいるけど…。
部長:そういうことだ。
遠藤は○○の隣のデスクを使ってくれ。
さく:あ、はい!
――
さく:香川さん、よろしくお願いします!
○○:○○でいいよ。
とりあえず、午前中は会社の中案内するね?
さく:はい。よろしくお願いします。
それから俺は会社内を回った。
○○:と、まぁこんな感じかな。
このあとはお昼たべて営業先に
あいさつに行こうか。
さく:はい…。
○○:緊張してる?
さく:人見知りなので…。
○○:慣れてくれとしか言えないな。
まぁしばらく一緒だから頑張ろ?
さく:はい!よろしくお願いします。
○○:よし!じゃ、俺の行きつけにいこう。
――
ガラガラ…。
??:いらっしゃいませ~。あ、○○くん!
○○:真夏さん、こんちは。
真夏:あれ?今日は彼女連れ?
○○:違うよ。
今日から俺が教育担当になった新人の遠藤さん。
さく:初めまして。遠藤さくらです。
真夏:さくらちゃんね!私は秋元真夏です!
○○:ここは俺が新人の時から通ってる店。
どの定食もおいしいよ!
さく:ええっと、じゃあハンバーグ定食で…。
○○:俺は唐揚げ定食で!
真夏:はい!おまちくださ~い!
――
真夏:お待たせしました~。
さく:美味しそう!
真夏:どうぞごゆっくり~。
○さ:いただきます!
○○:モグモグ…。やっぱ美味いな。どう、遠藤さん?
さく:うまっ。美味しいです!
○○:ならよかった。すこし表情も柔らかくなったね。
さく:はい!
○○:最初は不安かもしれないけど焦らずゆっくりね。
プルルルル…。
○○:ん?部長だ…。
ピッ
○○:おつかれさまです。香川です。
部長:“お疲れ。今日この後外回りだよな?”
○○:はい。遠藤さんの挨拶まわりを兼ねて。
部長:“そこで急で悪いんだが…。”
○○:…はぁ!?ちょっ、急に言われても…。
部長:“すまん!ほかに任せられるやつがいなくてな。”
○○:はぁ…。
部長:“とりあえず細かい引継ぎとかは帰ったら
するから今日は挨拶だけしといてくれ。”
○○:わかりました…。
ピッ
○○:はぁ…。
さく:どうしたんですか?
○○:担当が増えた…。
さく:噂通り、仕事できるんですね!
○○:どんな噂だよ…。
まぁ仕事が増えるのはいいけどその先が…。
――
○○:着いた…。
さく:ここが“坂道ホールディングス”ですか…。
○○:なんでよりによってここなんだよ…。
さく:なんかマズいんですか?
○○:マズいってことはないけど…。
まぁ、今にわかるよ。
俺らは受付に向かった。
○○:あのぉ~すいません…。
??:はい…。って○○!?
○○:よ、よお遥香…。
遥香:どうしたの?
○○:担当が変わって俺がここの担当になったんだ。
遥香:あぁ~そういうこと。で、横の可愛い子は?
さく:可愛い…。
○○:この子は今年入社した遠藤さん。
俺が教育担当になった。
遥香:へぇ~。
さく:遠藤さくらです!よろしくお願いします!
遥香:賀喜遥香です。ん~可愛い!
さく:あ、ありがとうございます…。
○○:遥香?一応、仕事中なんだけど…。
遥香:ああ、ごめん!
○○:まったく…。
こっちの担当さんに取り次いでもらえる?
遥香:うん分かった。
――
俺たちは先方が来るまで空いている会議室にいた。
さく:さっきの受付の方ってお知り合いですか?
○○:あぁ、大学の同期だよ。
さく:きれいな方ですね!さすが受付嬢。
○○:そういう遠藤さんもきれいだけどね。
さく:なっ!ちょ、からかわないでください!
・・・
その後先方にあいさつを済ませ受付に
入館証を返しに行った。
○○:ありがとうございました~。
遥香:は~い。今度来るときは連絡してよね?
びっくりしたから。
○○:へいへい。
さく:ありがとうございました!
遥香:さくらちゃん?こいつ仕事は真面目に
やるから遠慮なくきいてやんな。
○○:こないだは顔だけっつたのに…。
さく:はい!ありがとうございます。
○○:じゃまたな。
遥香:うん。仕事頑張って。
○○:うい。
・・・
その後俺たちは取引先を何件か回って会社に戻った。
○○:今日のとこはここまでかな。上がっていいよ。
さく:はい!お疲れでした!
○○さんは帰らないんですか?
○○:あぁ、俺は少し残った仕事やってから帰るから。
さく:何か手伝いますか?
○○:いいよ。俺の仕事だし、
慣れないことで疲れてるだろうし。
さく:わかりました。お先に失礼します。
○○:うん。おつかれ。
――
??:あれ?さくらちゃん?
さく:遥香さん?
遥香:お疲れ様!今帰り?
さく:はい!遥香さんもですか?
遥香:うん!あれ?○○は?
さく:まだ仕事が残ってるみたいで…。
遥香:そっか。ねぇよかったらこれからご飯いかない?
さく:はい!いいですよ!
私と遥香さんは近くのレストランに入った。
遥香:どう?仕事は?
さく:大変ですけど、○○さんが
くわしく教えてくれて助かってます。
遥香:やっぱ、仕事できんのねあいつ。
あの会社なのがもったいないな。
さく:あの~気になったんですけど…。
遥香:ん?なに?
さく:遥香さんと○○さんって付き合ってるんですか?
遥香:えっ、いや、別に付き合ってないけど?
さく:そうなんですね!
いや、ずいぶんと仲いいなって思って。
遥香:まあ大学からの付き合いでよく飲んでるからね。
さく:○○さんのこと好きですか?
遥香:う~ん、嫌いではないかな。いいやつだし。
さく:なるほど。
遥香:なに?笑もしかして、○○のこと好きになった?
さく:うーん、私もいい人だとは思いますよ?
遥香:そっか。早くしないととられるかもよ~?
大学の頃も人気だったし。
でもなぜか誰とも付き合わなかったんだけどね。
そんなに女の子と仲良くしてる印象もなかったし。
さく:は、はぁ…。
でも遥香さんはよく飲んでるんですよね?
遥香:うーんなんでだろ?わかんないや。
さく:ふーん。
遥香:まぁ、もし○○のことで困ったら相談して?
さく:はい!
私たちは連絡先を交換して家に帰った。
――
一か月後…。
○○:よし、今日は坂道ホールディングスに行くぞ。
さく:はい。そういえば、○○さん。
○○:ん?どした?
さく:○○さんて遥香さんのこと好きですか?
○○:遥香?なんでまた?
さく:2人の会話見てると仲いいな~って思って。
○○:う~ん。嫌いではないかな。いいやつだし。
さく:(同じこと言ってる…。)
彼女とか作らないんですか?
○○:いらないとは思わないけど。
ピンとくる人がいないんだよね。
さく:なるほど。
一か月の間一緒に仕事してわかったのは、
私は○○さんのことが好きだってこと。
かっこいいのもあるけど何より優しい…。
――
○○:すみません××商事の○○ですけど…。
遥香:待ってたよ!今呼ぶから。
○○:一応仕事なんだから敬語でしゃべろ?
この会話を見るたび私にチャンスがあるのかわからない。
ホントは○○さんも遥香さんもお互いのことが
好きなんじゃないかな。
――
今日の仕事が終わり私はある人と待ち合わせていた。
さく:すいません!おまたせしました、遥香さん!
遥香:ううん!待ってないよ?
私たちは居酒屋に入った。
遥香:どうしたの?相談って?
さく:その…。
遥香:○○のこと?
さく:はい…。
遥香:あいつから仕事で
無理難題押し付けられてるんでしょ?
今度会ったら…。
さく:ち、違うんです!!
遥香:え?
さく:その私…、○○さんのことが好きに
なっちゃたみたいで…。
遥香:そ、そうなの?
さく:はい…。
遥香:そ、そっか。うん!いいと思う!
さく:え…。
遥香:さくらちゃんかわいいし、
気遣いもできる!
あいつにはもったいないくらいだよ!
さく:いえ、そんなことは…。
遥香:頑張りな!
さく:でも…。
遥香:よーし、こうなったら飲もう!
さく:はい…。
なんだろう…。遥香さん、
今は笑顔だけど一瞬寂しい表情をしたような…。
遥香:それでいつ告白するの?
さく:ええっと、今○○さんは出張で北海道に
いるんで来週にしようかと。
遥香:いいなぁ~北海道!そだ!お土産要求しとこ。
こうなったら、絶対に思いを伝えるんだ!
――
3日後…。
出張から帰ってきた○○さんとまた外回りに出ていた。
○○:遠藤さんもだいぶ慣れてきたね。
さく:はい!○○さんのおかげです!
○○:ううん、遠藤さんの覚えがいいんだよ!
本当に○○さんはやさしい…。
こんなところに惹かれたんだろうな…。
さく:あのっ!○○さん!
今日仕事終わったら一緒に食事に行きませんか?
○○:どうしたの?急に。
さく:その…。入社して一か月経つので
もうちょっとお話したな~って。
○○:うん。いいよ。
さく:ありがとうございます!
その後の仕事を終え、私たちはレストランに入った。
帰り際に告白することを決めていた私は緊張で
味がわからなかった。
○○:あ~美味しかったね。
さく:は、はい!美味しかったです!
すいませんお誘いしたのに
ごちそうになっちゃって。
○○:いいの、いいの。たまには先輩らしいことさせて笑
さく:そんな!いつも○○さんには助けてもらって…。
言うんだ…。今の気持ちを!
さく:あの…。○○さん?
○○:ん?
さく:実は…。前から○○さんのことが好きです…。
○○:え…。
さく:返事は今しなくて大丈夫です!
私…、待ってますから!
私はそう言って走って帰った。
――
まさか遠藤さんから告白されるとはな…。
嬉しい。嬉しいんだけど…。
プルルルル…。
○○:もしもし?
――
○○:お前から呼び出すなんて珍しいな。遥香。
遥香:別にいいでしょ?たまには。
○○:んで、なんだよ話って。
遥香:こないださくらちゃんに告白されたでしょ?
○○:え!?なんでしってんの?
遥香:まぁずっと相談されてたからね。
それで?OKすんの?
○○:まだ迷ってる…。
遥香:はやく決めな!
どっちにしたってあんまり待たせるのは失礼だよ!
○○:わかってるけど…。
遥香:それにあんないい子いないよ?
逃したら一生できないよ?
○○:確かにいい子だけど…。
遥香:よし、じゃ決まりだね。
よ~し今日は飲むぞ~。
○○:お、おい!
遥香:だって彼女が出来たらこうして飲むことも
ないんだからさ。
なんだよ…。
応援してんならそんな寂しそうな顔するなよ…。
そのまま遠藤さんの話とは別の話をして解散となった。
遥香:じゃ、お疲れ!
○○:あぁ、お疲れ…。
遥香:○○!
○○:ん?
遥香:幸せになれよ!
そういって遥香は去って行った。
――
家に帰り、俺は気持ちを整理していた。
こんなに答えが出しづらい問題は今まで
直面したことがなく、2時間以上悩んでいた。
――
次の日…。
今日は俺は外回り、遠藤さんは会社で
書類整理をしていた。
今日の仕事終わりにこないだの返事を
することを伝えていた。
○○:ごめん遠藤さん!お待たせ!
さく:いいえ!今来たばっかりですから…。
○○:それでこないだの返事のことだけど…。
――
遥香:お疲れ様でした。
はぁ…。今頃あいつはさくらちゃんと
付き合い始めたんだろうな…。
大学の頃から一緒だけど、その頃は異性としての
意識はなくってただの気の合う友達としてあっていた。
そして就職しても飲みに行っていたのは
最初は大学の頃の延長だと思ってた。
でもいつからだろう、あいつとの飲みが
楽しみに変わったのは…。
きっと私もあいつのことが…。
??:遥香!!!
遥香:えっ!?○○!?
○○:はぁ、はぁ…。お疲れ…。
遥香:お疲れって…、
さくらちゃんとの話はどうしたの?
○○:そのことでお前に話がある…。
私たちは近くの公園に移動した。
遥香:さくらちゃんの返事どうしたの?
○○:そのことなんだけど…。
断った…。
遥香:えっ?
――
○○:それでこないだのことなんだけど…。
さく:はい…。
○○:ごめん、遠藤さんの気持ちは嬉しいんだけど
その気持ちには答えられないや…。
さく:…そうですよね。
○○:え?
さく:なんとなくわかってましたよ?
たぶん断られるんだろうなって…。
○○:なんで…。
さく:だって、○○さん。
遥香さんのこと好きですよね?
○○:…。
さく:たまにする遥香さんの話の時の顔。
すごい楽しそうでしたよ?
そんなの勝てるわけないじゃないですか…。
○○:遠藤さん…。
さく:でも、伝えずに終わるのは嫌だったんで
伝えさせてもらいました。
○○:ごめん…。
さく:謝らないでください。
私がけじめとしてやっただけなんで。
それより早く遥香さんのとこに
行ってあげてください!
○○:えっ?
さく:遥香さん、きっと○○さんのこと待ってますよ?
○○:遥香が?
さく:いいから行ってください!
○○:う、うん!
さく:○○さん!
○○:ん?
さく:幸せになってください!!
○○:遠藤さん…、ありがとう!
そういって○○さんは走って行った。
さく:…グスッ…。
――
○○:というわけなんだ…。
遥香:そうだったんだ…。
○○:俺さ、遠藤さんに告白されたあと
いろいろ考えたんだ。
最初は単純にうれしかった。
でも、いろいろ考えてるうちに遥香の顔が
浮かんだんだ。
遥香:えっ!?
○○:俺気づいたんだ…。
遥香のことが好きだって…。
遥香:…。
○○:大学の頃から一緒にいすぎてて気づいてなかった。
遥香:○○…。
○○:だから、遥香…。
僕と付き合ってくれませんか?
遥香:…グスッ。
○○:えっ!?なんで泣いてるの?
遥香:嬉しい…。私も気づいたの…。
さくらちゃんから相談受けたときに
私も○○のことが好きなんだって。
○○:じゃ、じゃあ!
遥香:こちらこそよろしくお願いします!
○○:よかった~…。
遥香:私もよかった…。
――
それからは翌日が二人とも休みと
いうこともあり俺の家で飲んでいた。
遥香:○○…。
○○:ん?
チュ…。
○○:ちょ、遥香!?
遥香:ごめんなんか我慢できなくて…。
○○:いいよ。俺もしたい…。
遥香:…えっち。
○○:そっちからしてきたんだろ!!
遥香:ふふっ笑これからよろしくね?
灯台下暗しとはよく言ったものだ。
やっとわかった君の存在。
当たり前すぎて気づかなかった。
俺はそんな君を一生大切にする。
Fin…
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