もしも…地元にいるはずの歳下幼馴染が家に押しかけてきたら…
大学進学を機に一人暮らしを始めて
もうすぐ1年。
ようやく家事やら身の回りの事が慣れてきた。
大学もバイトも今日は休み。
これといって趣味もない。
何の為に大学に行ってるか
最近はわからなくなって来た。
そんなこと考えていても腹は減ってくる。
腹は減ったがなにも作る気になれず、
カップラーメンをすすっていた。
ピンポーン
〇〇:誰だろう…
宅配で頼んでたものもないし、
親とか友達も連絡してこないから
なんかの勧誘だろう。
ピンポーンピンポーン
〇〇:うるさ。
ピンピンピンポーン、
ピンピンピンポーン。
ピンピンピンピンピンピンピンポーン!
〇〇:なんで三三七拍子?
近所迷惑になるだろうと思い、
出る事にした。
ガチャッ
〇〇:はい…
??:あー!やっと出たー!
〇〇:えっ!?理子ちゃん!?
扉を開けると地元にいるはずの
1個下の幼馴染である理子が立っていた。
理子:いるなら早く出てよね!〇兄!
〇〇:どうしてここへ?
理子:おばさんに聞いてきた!
〇〇:あぁ、なるほど…
理子:ということで…お邪魔しまーす♪
〇〇:え、あ、おい!
理子は俺の制止を気にせず上がっていった。
理子:あー!カップラーメン食べてる!
〇〇:ま、まぁ…
理子:こればっかり食べてたら体に悪いよ!
〇〇:まぁこれが楽だし…
理子:もぅ!今晩はりーが作るからね!
〇〇:あぁ…って、今晩!?
理子:うん。
〇〇:なんで今晩なの?
理子:だって今日りー泊まるもん。
〇〇:どこに?
理子:ここに。
〇〇:えぇ!?
理子:だーかーらー!こーこーに!!
〇〇:なんで?
理子:〇兄がどんな暮らし
してるかなって気になったから!
〇〇:どんなって…別に普通だよ?
理子:こんなカップラーメンのストックが
あるのに?
〇〇:…。
理子:とにかく!
今日の夜ご飯の買い物行くよ!
〇〇:う、うん…。
--
と言う事で俺と理子は
近所のスーパーに来ていた。
理子:なんか懐かしいね!
昔よく近くの駄菓子屋に一緒に行ったよね〜。
〇〇:あぁ、そんなことあったな。
小学生の頃だったかな…
理子ちゃんと2人で
よく駄菓子屋に行っていた。
それだけでなくどこ行くにも一緒で
兄妹に間違われることも
少なくなかった。
ま、兄弟のいない俺にとっては
理子ちゃんは
本当の妹みたいもんなんだよな。
理子:ふんふふ〜ん♪
そんな事を思い出してる横では
理子ちゃんが食材をカゴに入れて行く。
〇〇:ところで今日は何作るの?
理子:今日はね〜ヒミツ!
〇〇:え?
そうは言っているが、
カゴを覗くと…
〇〇:もしかしてだけど…カレー?
理子:ヒ、ヒミツはヒミツなの!
〇〇:あぁ…そう…
その後は焦った様子でカレールーを
カゴに入れ、精算をして店を出た。
--
帰ってくるなり理子ちゃんは
キッチンに直行した。
〇〇:あの〜手伝おうか?
理子:りー1人でできるもん!
〇兄は座って待ってて!!
〇〇:う、うん…。
理子ちゃんの迫力に押され、
俺はソファに座ってスマホをいじり始めた。
トントン…ジュー
キッチンから小気味いい音が聞こえてくる。
俺の記憶では理子ちゃんは
あんまり料理してなかったはず。
会わない間にやり始めたのかな…、
--
理子:お待たせ〜!!
キッチンから両手にお皿を持った
理子ちゃんがやってきた。
理子:りー特製のカレーだよ!!
〇〇:おぉ…。
正直カレーが出てくる事は
予想出来ていたが、
想像以上に美味しいそうだった。
理子:それじゃ…
〇理:いただきます!!
パクッ
〇〇:ん!
理子:どうかな…
〇〇:美味しい…美味しいよ!!
理子:ほんと!?よかった〜…
〇〇:頑張ったね!
理子:えへへ〜
〇〇:でもほんと美味しいよ。
理子:ねね!なんか気づく事ない?、
〇〇:もしかして…少し醤油入れた?
理子:そう!正解!
おばさんが〇兄はよくお醤油入れるって
聞いたから入れてみた!
〇〇:どうりでなんか
懐かしい感じがしたよ。
理子:おかわりもあるからいっぱい食べてね!
--
〇〇:ごちそうさま。
理子:お粗末さま!
食器片しちゃうね!
〇〇:いいよ、それくらいやるよ。
理子:でも…
〇〇:いいから休んでな。
理子:…うん!
ジャー
理子:ジー
〇〇:どうしたの?
理子:ううん。なんでもなーい。
〇〇:そう…。
理子:あ!お風呂準備しちゃうね!
〇〇:え、あ、うん…。
そう言って理子ちゃんはお風呂場に行った。
…と思ったら。
理子:〇兄!!
〇〇:!?
理子:何で歯ブラシが2つあるの!?
しかも女の子っぽいやつ!!
〇〇:え、あぁ…
前に家の近くでバイト先の奴らと
飲んだ時、終電逃した女の子を
泊めた事があった。
きっとその時のものだろう。
理子:まさか…彼女?
〇〇:い、いや違うよ?
前に一回泊めたバイト先の子のやつだよ?
理子:…その人とは何も無い?
〇〇:何って…ただのバイト仲間だよ?
向こうも彼氏いるらしいし。
理子:ほんとに?
〇〇:う、うん…。
理子:よし!じゃオッケー♪
理子ちゃんは再びお風呂場に向かった。
〇〇:何なんだろう…。
--
"お風呂が沸きました"
〇〇:お、理子ちゃん先に入ってきていいよ。
理子:うん!
風呂が沸いたので理子ちゃんは
風呂場に向かった。
理子:…一緒に入る?
〇〇:へ?あ、いや!!
そういう訳には…
理子:昔は一緒に入ったじゃん。
〇〇:幼稚園の時ね!
今は流石に…
理子:〇兄なら…
〇〇:いいから入ってきて!!
理子:むぅ…
理子ちゃんは何故かすこし
怒りながら風呂場に向かった。
〇〇:何だろう…様子がおかしい…
--
理子:〇兄!上がったよ!
〇〇:うい…って…
理子:えへへ〜借りちゃった!
振り返ると俺の服をきた理子ちゃんが
立っていた。
理子:着替え…忘れてきちゃったから。
〇〇:そう…。
理子:〇兄も入ってきな!
〇〇:うん…。
--
風呂も上がり2人で少しまったりしていた。
理子:そういえば〇兄!
〇〇:ん?
理子:りー、大学決まったよ!
〇〇:お。おめでとう!
理子:ちなみに〇兄と同じとこだよ!
〇〇:え!そうなの!
理子:りー頑張ったよ!
〇〇:そっか…
てことは1人暮らしになるよね?
どこに住むとか決めてるの?
理子:うん!ここ!!
〇〇:そっか〜ここか〜…
ってえぇぇぇ!?
理子:お母さんもおばさんもそっちの方が
安心だって言ってた!
〇〇:え、いや、でもいいの?
いくら幼馴染とはいえ、男と2人って…
理子:いいの。
〇〇:え?
理子:〇兄だからいいの!
〇兄と一緒に暮らしたかったから
同じ大学受けたの!
〇〇:えぇ!?
理子:りー…〇兄のことが好き。
幼馴染とか友達とかじゃなくて
1人の男の人として好き。
そんな人と一緒にいたくて
お勉強も頑張ったし、お料理も覚えたの…。
〇〇:どうりで美味しかったわけだ…。
理子:それとも〇兄はりーと
一緒にいるのは嫌?
りーを〇兄の彼女にしてくれませんか?
〇〇:…ありがとう、理子ちゃん。
俺からもよろしく。
理子:いいの…?
〇〇:今日ちょいちょい様子が変だなって
思ってたけど理由を聞いたら
何だか愛おしくなってきてね。
それにそんなに好きでいてくれるって
聞いて嬉しいよ。
理子:…やったー!!
〇〇:だからこれからよろしくね。
理子:うん!!!
それから理子ちゃんの荷物が俺の部屋に
運ばれてきた。
迎えた4月。
理子ちゃんと並んで登校したら
同期から色々質問攻めにあった。
バイトも俺と同じところにした。
何でもあの歯ブラシの件を
気にしてるらしく、自己紹介の時…
理子:はじめまして!
〇に…〇〇の彼女の遠藤理子ですっ!
…って紹介したもんだから
周りからはイジられてしょうがなかった。
バイトが終わり、2人並んで
手を繋いで帰る。
この手の温もりを感じる度に
大学に行く意味…生きていく意味が
ここにあるんだなと実感する。
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