貴女に届いて欲しい
〇〇:お待たせしました。
ショートケーキとチーズケーキです。
母親:ありがとうございます!
子供:ママ!はやくかえってたべよー!
カランカラン
〇〇:ありがとうございました!
俺はパティシエの見習い。
料理の専門学校を卒業した後、
このパティスリーで働いている。
俺と店長、あと2,3人のバイトが働いている。
??:〇〇く〜ん。
〇〇:あっ、店長!お疲れ様です!
??:もう!店長じゃなくて麻衣ちゃんって呼んでっていってるじゃん!
この人は白石麻衣。
このパティスリーの店長であり師匠。
〇〇:いや、でも…
麻衣:昔は麻衣姉ちゃんって
呼んでくれたのに!
〇〇:まぁそれは…せめて麻衣さんで…
カランカラン
〇〇:いらっしゃいま…
ってなんだ姉ちゃんか。
今入ってきたのは僕の姉の秋元真夏。
麻衣さんとは昔からの幼馴染で
俺も昔遊んでもらったりした。
ここで働いてるのもその伝だ。
真夏:なんだとはなによー!
麻衣:真夏ー!どしたの?
真夏:クリスマスケーキの予約ついでに
弟の様子を見にね。
〇〇:ちゃんとやってますよ。
麻衣:〇〇くんももう一人前よ!
〇〇:いや、麻衣さんに比べたら…
麻衣:大丈夫!真夏よりは全然できるから!
〇〇:姉ちゃんは料理は出来るけど
お菓子に関しては全くですからね。
真夏:むぅ…
〇〇:てかもうクリスマスか…
麻衣:今年も忙しいよ〜!
クリスマスといえばケーキは必須。
という事はこの店にとっては掻き入れ時だ。
真夏:という事で、ケーキよろしくね?
〇〇:へーい。
真夏:じゃまたね〜。
カランカラン
〇〇:ったく…少しは弟離れしてくれ。
麻衣:まあまあ笑 それだけ心配なんでしょ笑
〇〇:早く男でも作って結婚してくれ…。
麻衣:そーいう〇〇くんは彼女はいるの?
〇〇:いや、いないですよ?
今は一人前になる為に必死ですから。
麻衣:でもケーキとかお菓子を作るには誰かを思って作った方がいいよ?
その人に美味しいって言ってもらいたい…
そういう事を考えながら作ると美味しくなるよ?
〇〇:麻衣さんはそういう人いるんですか?
麻衣:私は〜…お、お客様の事を思って作ってる!
〇〇:さすがですね。
麻衣:いや〜それほどでも〜///
ーー
夜…
バイト:お疲れ様で〜す。
〇〇:お疲れ〜。
俺は閉店後に残って
新作のスイーツを作っていた。
〇〇:ふぅ…心を込める…か。
麻衣:〇〇くん?
〇〇:あぁ、麻衣さん。
麻衣:まだ残るの?
〇〇:はい、いいのが浮かんだんで。
麻衣:そう…
〇〇:戸締りはしとくんで
先に上がって大丈夫ですよ。
麻衣:わかった。あんまり無理しないでね?
〇〇:はい!お疲れ様です!
麻衣:お疲れ様。
麻衣さんはそう言って店を出て行った。
〇〇:俺は…誰に食べて貰いたいんだろう…
そう考えた時、ある人が頭に浮かんだ。
〇〇:…まさかな。
ーー
クリスマス当日…
〇〇:お待たせしました!
ご予約頂いたクリスマスケーキです!
この日、バイトの子らが全員休みを取ったので
麻衣さんと俺の2人で店頭に立っていた。
麻衣:〇〇くん?まだ休憩取ってないよね?
〇〇:そうですけど…この状況じゃ…
クリスマス当日という事もあり、
客がひっきりなしに来る。
麻衣:大丈夫!
今日はもう追加分も作らないし、
残ってるの捌くだけだから!
〇〇:…わかりました。
俺は裏の休憩室に向かった。
--
〇〇:ふぅ…
休憩室の椅子に座り、コーヒーを飲んでいた。
窓の外を覗くと、
家族連れやカップルで溢れかえっていた。
〇〇:…。
俺はそこで考え事をした。
〇〇:普通、クリスマスは休みで
一緒に居たい人といるよなぁ…
産まれてこの方、俺にはそういった人は
今までいなかった。
ただここ最近、
スイーツを作っている時に麻衣さんが
頭に浮かんでくる。
〇〇:まさか…いや、きっとそうだ。
俺は麻衣さんの事が…
--
麻衣:お疲れ様でしたー!
〇〇:お疲れ様でした…
この日の営業を終え、
俺は椅子でぐったりした。
麻衣:〇〇くん。この後って予定ある?
〇〇:いえ?特には。
麻衣:そしたらさ、
ここでクリスマスパーティーでもしない?
〇〇:いいですよ!
麻衣:じゃ、コンビニでなんか買ってくるね!
〇〇:僕も行きますよ!
麻衣:いいのいいの!疲れてるんだから休んでて!
〇〇:でも…
麻衣:いーいーかーら!これは店長命令!
〇〇:わかりました…、
麻衣:じゃ、行ってくるね!
麻衣さんは買い物に出掛けていった。
〇〇:…よし。
--
麻衣:それじゃ…
"メリークリスマス!!"
カンッ
俺らは麻衣さんが買ってきたお酒で乾杯した。
麻衣:今年ももう終わりだね〜
〇〇:そうですね〜。
麻衣:〇〇くんがここで働いてもう何年になるっけ?
〇〇:もうすぐ3年ですね。
麻衣:早いな〜もう一人前だね!
〇〇:いやいや、まだまだ…
麻衣:独立とか…しちゃうのかな…ボソッ
〇〇:ん?なんか言いました?
麻衣:ううん!なんでもない!
〇〇:そうだ。
ちょっと食べて貰いたいものがあるんです。
麻衣:なに?
〇〇:ちょっと待ってて下さい!
そう言って俺はある物を取りに行った。
ーー
〇〇:お待たせしました。
俺は麻衣の前に一つの箱を置いた。
麻衣:これは…ケーキ?
〇〇:はい。開けてみて下さい。
パカッ
麻衣:綺麗…
俺が作ったのは飾り付けから何まで白でまとめた
純白のケーキだった。
〇〇:俺の新作です。
麻衣:崩すのも勿体ない…
〇〇:是非食べて下さい。
麻衣:それじゃ…
パクッ
麻衣:ん!美味しい!!
〇〇:よかった…
麻衣:外からはわからないけど、
中にしっかりフルーツとか入っていい味だしてる!
これは売れるよ!!
〇〇:…このケーキ、
ある人をイメージして作ったんです。
麻衣:?
〇〇:以前に麻衣さんに誰かに美味しいって
言ってもらいたい。
そう考えながら作ると美味しくなるって
言われてからずっと考えてたんです。
そしてある人が浮かんだんです。
麻衣:…。
〇〇:それは…白石麻衣さん。あなたです。
麻衣:え!?
〇〇:麻衣さんは僕にとって大切な人です。
もちろん師匠ってことはあります。
でもそれとは違う、別の感情もあります。
麻衣:別の感情?
〇〇:それは…あなたのことが好きってことです。
麻衣:え…。
〇〇:だからこのケーキは麻衣さんに
美味しいって言って貰いたい。
その一心で作ったケーキです。
麻衣:〇〇くん…ありがとう。
とっても美味しい。
今まで…そしてこれからも超えるケーキはない。
お世辞じゃなく。
〇〇:ありがとう…ございます。
麻衣:それに…私も…〇〇くんが好き。
〇〇:え!?
麻衣:ここで一緒に働き始めた頃は
弟みたいな感覚だった。
でも、真剣に作ってる姿に見惚れて…
いつしか好きになってた。
〇〇:…。
麻衣:だから…これからも隣で…
一緒にケーキを作ってくれますか?
〇〇:…はい!!
麻衣:よろしくね!
ギュッ
〇〇:うおっ!
麻衣:このケーキ…一生好き。
今度、私も〇〇くんをイメージしたケーキを作るね?
〇〇:ふふっ笑
楽しみにしてます!
麻衣:あ!
〇〇:どうしました?
麻衣:外見て!
〇〇:…雪か。ホワイトクリスマス…。
麻衣:綺麗…。
〇〇:麻衣さんのほうが…。
麻衣:ん?なぁに?
〇〇:な、なんでもないです!///
麻衣:麻衣さんのほうが?何?
〇〇:…麻衣さんのほうが綺麗です///
麻衣:ありがと!あと、敬語禁止!
〇〇:分かりま…分かったよ、麻衣。
ーー
カランカラン
〇〇:いらっしゃいま…ってなんだ姉ちゃんか。
真夏:なんだって何よ!
〇〇:ここ最近ずっと来てるけど…暇なの?
真夏:弟とその"彼女"の様子を見に来て何が悪いのさ!
〇〇:自分も早く彼氏作れよ…
麻衣:あ!真夏〜!
真夏:あっ!まいや〜ん!
麻衣:最近よく来るね。暇なの?
真夏:2人も揃いも揃って…
〇〇:お客さん?
なんも買わないなら出てってくれません?
真夏:買うわよ!これとこれちょうだい!
〇〇:これしか買わないじゃん笑
真夏:だってこれが一番美味しいんだもん!
雑誌にも載って人気なんだし。
麻衣:おかげで大忙しよ笑
真夏:でも、2人のラブラブパワーで
乗り切れちゃうもんね!笑
〇〇:なっ!//
麻衣:もう!真夏!///
真夏:あははっ笑
このパティスリーの人気商品は
純白のケーキ「レジーナビアンカ(白の女王)」と
真紅のケーキ
「プリンスデラパッショーネ(情熱の王子様)」
ネットでこの2つのケーキを食べさせ合うと
永遠に結ばれる。
こんなジンクスが生まれるのは
もう少し先の話である。
Fin
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