もしも…運ばれた先に元カノがいたら…
ピーポーピーポー…
"救急車が通ります…"
--
瞳月:もぅ!心配させないで下さいよ!!
〇〇:ごめんな?
瞳月:全く…
病院に運ばれたって聞いて
本当にびっくりしたんですから!!
〇〇:だからごめんって…
俺は休日にバイクに乗るのが趣味だ。
いつものようにツーリングに出ていたら、
事故を起こしてしまい病院に
入院する羽目になった。
コンコン
"失礼しま〜す"
〇〇:はーい。ほら検査の時間だから帰んな。
瞳月:とにかく!
早く退院して会社に戻ってきて下さいよ!
職場の後輩の瞳月が病室から出ていき、
看護師が入れ替わりで入って来た。
看護師:〇〇さん、どうですか?
〇〇:まぁ…不自由ではありますね。
事故の影響で右腕と右足を骨折している。
看護師:そうですよね…。
そこでお世話を担当する看護師を
ご紹介しますね!
??:失礼します…
〇〇:え?
入って来た看護師を見た瞬間、
雷に打たれたような衝撃が走った。
保乃:お世話を担当します、田村保乃です。
よろしくお願いします。
〇〇:よ、よろしくお願いします…
看護師:じゃ保乃ちゃん?あとよろしくね?
では私はこれで失礼します。
保乃:はい。
そう言って看護師さんは病室を出ていった。
〇〇:ひ、久しぶり…
保乃:久しぶり…元気にしてた?
〇〇:元気だったらここにいないって…
保乃:そ、そうよな…
気まずい雰囲気が流れる。
そりゃそうだ、今目の前に元カノが
いるんだから…
保乃:じゃあ、体温とか見ていくから…
〇〇:あぁ…
保乃とは高校生の頃に出会い、付き合った。
ちょっと天然だけど、可愛いらしい笑顔。
包み込んでくれる優しさ。
そこに惚れていた。
高校を卒業した後は俺は地方の大学へ、保乃は看護師になるため看護学校へ進学した。
最初は頻繁に連絡を取ったり、時間を作って
会っていたがお互い忙しくなるにつれて
連絡も取らなくなってしまい、
別れてしまった。
それ以来連絡を取っていなかった為、
保乃が看護師になったのは知らなかった。
よりによってここに運ばれるとはな…。
--
コンコン
保乃:失礼します…
〇〇:はい。
保乃:お風呂の時間やで。
〇〇:あぁ…
風呂の時間と言っても、シャワーや湯船には入れないのでタオルで身体を拭く事しかできない。
保乃:ほら…上脱いで?
〇〇:うん…
俺は上裸になった。
なんだか小っ恥ずかしい…
保乃:じゃあ拭くで?
〇〇:お願い…
フキフキ
〇〇:看護師…なれたんだな…
保乃:うん…
〇〇:そっちは元気だった?
保乃:うん…まぁ…
〇〇:そっか…
保乃:そっちは今なにやってるん?
〇〇:大学でた後はこっちに戻って就職したよ。
保乃:!?そ、そうなんや…連絡してや…
〇〇:ごめんな…
保乃:はい。終わったで。
〇〇:あぁ、ありがとう…
保乃:それじゃあ…おやすみ。
〇〇:うん…。
ガラガラ
なんだかやっぱり…気まずいな…
--
ガラガラ
瞳月:せんぱーい!
〇〇:あぁ、山下か。
瞳月:お加減はどうですか?
〇〇:まだ入院して一週間だぜ?
まだまだかかるよ。
瞳月:大変ですね〜。
それはそうと病院食ってやっぱり美味しくないんですか?
〇〇:美味しくないっていうか、味が薄い。
瞳月:そうだと思って、じゃん!
フルーツ持って来ました!
〇〇:おお!ありがとう!
瞳月:これ食べて早く戻ってきて下さいね?
先輩がいない職場は退屈なんですから!
〇〇:まぁ、頑張るよ。
瞳月:それじゃ!
〇〇:あぁ、頑張れよ。
ガラガラ
〇〇:退屈…か。
ガラガラ
保乃:食事の時間やで。
〇〇:あぁ。
保乃が食事を持って来てベッドの横に座る。
保乃:はい。あ〜ん。
利き手が折れてるので
保乃に食べさせてもらってる。
保乃:…なんか懐かしいな。
〇〇:え?
保乃:付き合ってた頃、
こうやって食べさせあってたなぁ〜って…
〇〇:そんな事あったな…
保乃:なぁ、さっき来てた女の子って誰?
〇〇:あぁ、職場の後輩だよ。
保乃:その割には随分懐かれとったなぁ。
〇〇:あいつが新人だったころに俺が教育係だったからな。
保乃:彼女…とか?
〇〇:いや?あいつとは付き合ってないよ。
保乃:他にいるん?
〇〇:いや、保乃と別れてからはいないよ。
保乃:ふ〜ん…
俺は別れた後もまだ保乃を忘れることが
できないでいた。
保乃以上の女性が現れることは無い。
そう思っていた。
--
消灯時間になったが、俺は寝付けずにいた。
ガラガラ
〇〇:?
保乃:ごめん、起こしちゃった?
〇〇:いや、なんだか目が冴えちゃって…
保乃:そう…なら少し話さへん?
〇〇:あぁ…
保乃はベッドの空いたスペースに腰掛けた。
保乃:やっぱり怪我はつらい?
〇〇:まぁ、
何するにも自由が効かないからな。
保乃:保乃な?
〇〇が運ばれて来た時、心臓が止まるかと思った…。
でも、命に別状はないって分かって心の底からホッとしたんや。
〇〇:…。
保乃:なぁ、保乃達…やり直せへん?
〇〇:え…
保乃:〇〇と会わへんようになってからも…
〇〇のことが忘れられへんねん。
やっぱり〇〇以上の人なんておれへん…。
やから…また付き合って欲しい…
〇〇:保乃…俺も同じこと思ってた。
保乃:へ?
〇〇:俺も保乃以上の女性なんていない。
だからもう一度付き合って下さい!
保乃:…はい!
〇〇:あの時はごめんな?
保乃:ううん!保乃こそごめんな?
全然連絡せえへんで…。
〇〇:ううん!こっちこそ!
保乃:いーや!こっちやって!
〇〇:ふっ笑
保乃:ふふっ笑
〇保:あはは笑
〇〇:また一緒にいような?
保乃:うん!
--
保乃:はいっ!あ〜ん♡
〇〇:ん//
保乃:もうなんで顔赤いん?笑
〇〇:いやなんか改めてされると…
保乃:もう…これから毎日するんやで?
〇〇:そうだよな…
保乃:はいっ、次!あ〜ん…
ガラガラ
瞳月:せんぱーい…って何してるんですか!!
〇〇:あ、山下…
瞳月:なんで看護師さんに
あーんしてもらってるんですか!?
〇〇:いや今手折れてる…
瞳月:そしたら私が…
保乃:いーや、これは"彼女"の仕事なんで!
瞳月:か、彼女!?
保乃:そやで?
瞳月:せ、先輩!いつの間に!?
保乃:保乃と〇〇はな?
ずぅっと前から相思相愛やったんやで?
ギュウウ
瞳月:そ、そんな…
保乃:ということでお見舞いご苦労様。
"後輩ちゃん"
〇〇:お、おい。あんまり煽んなって…
瞳月:もう知りません!!
先輩なんてずっと入院して、彼女さんと
イチャイチャしてればいいんです!!
バァン!
保乃:これで邪魔者はいなくなったで?
〇〇:仕事がしづらくなる…
保乃:それでも保乃が癒やしたるで?
チュッ
〇〇:///
その後、職場に復帰してもしばらくは山下が口を聞いてくれなかった。
でも、家に帰ったら保乃が癒やしてくれる。
白衣の天使って…いるもんだな。
Fin
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