見出し画像

駆け抜ける坂道 Sector6

駆け抜ける坂道 Sector6 <勝負勘>


森田が先行したまま、2台は峠の半分を走った。

森田:あと半分…。まだまだ気は抜けない。


○○:ここから後半…。
   こっからは勾配がきつくなってくる。
   勝負はこれからだ!

二台の差は徐々に詰まってくる。

森田:やっぱり後半勝負に来るよね!
   でもこっちにもプライドってのがあるからね!

○○:焦るな…。
   勝負のポイントはこの先の3連ヘアピンだ!

――

土生:今頃どうなってるかな~


菅井:多分、まだ森田さんが先行してるかな…。


土生:そうなの?

菅井:この峠の前半は勾配が緩い。
   ヘアピンも多いけど直線も多いから、
   森田さんの車の方が得意だね。

土生:じゃあ、峠の後半はどんな感じなの?

菅井:後半に行くにつれて勾配がきつくなる。
   ブレーキとタイヤにかかる負担も多くなって、
   車の重さがネックになってくる。

土生:どっちの車が重いの?

菅井:森田さんの車の方が重い。
   ただ、それだけで有利とは言い切れない。
   最後はドラテクと勝負勘の差になってくる。

――

3/4を走った頃には2台の差はほとんどない。

森田はルームミラーで後ろの○○を確認する。

森田:やっぱりこの重たいボディだときついね…。
   ぴったり張り付かれてる…。

○○:ここまでは何とかついていけた…。勝負はこの先!

――

3連ヘアピンの一個前のコーナー…

森田:ここを抜ければ私の得意なヘアピン!

○○:勝負はこの先のヘアピン…。
   そこに並ぶには…ここだ!!

森田の車にピッタリくっつく。

○○:この先で勝負するには立ち上がり重視で曲がる!

2台がコーナーを立ち上がる。

森田:…くっ!

○○:よし!並んだ!

2台が並んだまま3連ヘアピンの一個目に向かう。

森田:ギリギリまで減速しない!?何考えてるの!?

○○:このままいけばブレーキングでは
   こっちに分がある。
   勝負だ!!

一個目のヘアピンを○○が森田を抑える形で
曲がっていく。

森田:しまった!押さえつけられてスピードに乗れない!!!

○○:よし!向こうのスピードが落ちた!

立ち上がって二個目のヘアピンに向かう。

○○:向こうは回転が落ち込んでる。
   こっちはスーパーチャージャーのトルク
   でフル加速だ!!

先にコーナーに突っ込んだのは○○だった。

森田:まずい!ここで離されたら…。

○○:ここで一気に離すっ!!

○○は驚異のスピードでコーナーをクリアしていく。

森田:は、早い…。

3連ヘアピンを抜けた頃には2台の差は
15メートルほどだった。

森田:やっぱり早いや…。くっ…。

――

ゴール地点…。

ブーン…

森後輩1:あ!そろそろ来るぞ!

森後輩2:まぁ、森田さんが先にくるだろ。

先に現れたのは○○の86だった。

森後輩1:げっ!86!?

森後輩2:そんな!森田さんが負けた!?

○○:…よし。

森田:…くっ!

そのまま○○が先行して、ゴール地点を超えた。

キキーッ

久々のバトルを終え、○○は車の中でぐったりしていた。

○○:何とか…。勝てた…。

しばらくすると菅井達の車もやってきた。

菅井:神本君!!

○○:あぁ、菅井さん。

菅井:どう…だった?

○○:うん。勝ったよ。

菅井:ほんと!?おめでと!!

土生:おめでと~

○○:ありがと。

――

田村:ひーちゃん!!

森田:保乃…。

田村:どうやった?

森田:ダメ…だった…。

田村:そう…。

森田:やっぱり“土田○○”…いや神本○○は速かったよ…。


森田と田村が話してるところに○○達がやってきた。

○○:森田さん…。

森田:?

○○:今日はありがとうございました。
   おかげで分かりました。

森田:わかったって?

○○:やっぱり…自分は走ることが好きなんだって。
   森田さんと走ってる時、
   バトルのことにずっと集中してました。

森田:…。

○○:普通に考えたら峠であんだけスピード出してれば
   恐怖心とかあると思うんですけど、
   それよりも楽しいって感情が出てきました。

森田:○○くん…。

○○:だから本当にありがとうございました!

森田:こちらこそ…。ありがと!楽しかったよ!
   “神本○○”くん!

○○:やっとそれで呼んでくれた。

2人は握手を交わした。

しかし、その後…

森田:うっ…うっ…。

○○:?

森田:うわぁーーーーーん!!

○○:えぇ…

森田が突然泣き出した。

それを見て○○は茫然としていた。

田村:ひーちゃんはな?悔しがるとああやって泣くねん。

○○:それはまだわかるとして…。
   なんで菅井さんに抱き着いてるんですか?

森田は泣いた勢いそのままに菅井に抱き着いていた。


田村:ふふっ笑 子供みたいやろ?

○○:ま、まぁ…。

田村:何?彼女とられて嫉妬しとるん?笑

○○:か、彼女じゃないですって!///

田村:あははは!顔真っ赤やで?

○○:もう…。

田村:まぁでもこれからもここで走るんやったら
   私らもいると思うからそん時はよろしくな?

○○:はい。お願いします。

一つのバトルを終え、打ち解けた○○達。
○○はこのバトルを通して一つ殻を破った。

――

??:あれが話題の…。ふ~ん、やるじゃん。

Next Sector…
                         

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?