駆け抜ける坂道 2nd Stage ーSector9ー
2nd Stage ーSector9ー
〈ゴーストの正体〉
〇〇と菜緒のバトルは3本目を終え、
休憩に入っていた。
〇〇:ふぅ…マジでキツイ。
友香:お疲れ。どんな感じ?
〇〇:ラインがわからない…
相手のラインが1本目と3本目で違うから…
友香:そっか…
〇〇:そうだ。ゆか、これまでのタイムって見れる?
ゆか:あぁ、ちょっとまって。
〇〇:相手のラインがバラバラで結構ばらつきがあると思うんだけど…。
ゆか:おいおい!ばらつきがあるのはお前だぞ!
〇〇:えっ!?
ゆか:見てみろ。相手の方がきっちり揃えてるだろ?
〇〇:そんな…ありえねーよこんなの!
由依:わかった?これが"ゴースト"の正体。
〇〇:これが…。
由依:相手の狙いはラインの撹乱。
でも、それがわかればあとは単純な腕の勝負。
〇〇:はい…。
由依:そんな気負わずに行きな?
センスなら引けを取らないから。
〇〇:…はい!
--
美玖:菜緒〜ちょっと引っ張りすぎじゃない?
菜緒:これでもいっぱいいっぱいやで?
美玖:その割には余裕そうな顔だけど?
菜緒:どのみち次で終わらすで。
タイヤもそんなに長くは持たんやろうし。
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ブン、ブン…
ひかる:ゴー!
ブーン…
友香:4本目…
保乃:いつまで続くんやろ…
土生:でも〇〇くん、
タイム見た時すごいショックを受けてたような…
由依:そりゃね。
相手が本気じゃなかったってわかればね。
保乃:えっ!?
ひかる:本気じゃない!?
由依:それがあのワンハンドステアの理由に繋がる。
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ブーン…
〇〇:嘘だろ…あれで本気じゃなかったなんて!
菜緒:さて、どっから行こうかな〜。
--
由依:どの峠もポイントさえ押さえてれば
ラインがどうであれ、ある程度のタイムは出る。
ひかる:でもそれって…
由依:そう。本気の走りじゃない。
ある程度の予定調和があるからこそ
ワンハンドステアが出来る。
保乃:本気じゃなくてあれって…
勝てるんでしょうか…
由依:勝つには相手の予定調和を崩すしかない。
友香:崩せるかな…
--
ブーン…
2台は中盤に差し掛かっていた。
〇〇:そろそろ離さないと…
菜緒:そろそろやな…
ブーン…
〇〇:何!?
ヘアピンに入るところで菜緒が並んでくる。
菜緒:いくでぇ!!
〇〇:やばい!
キャャァァァァァ…
同時にコーナーに入るが菜緒の方が
若干早くコーナリングに入った為、
ラインの優先権を取った。
〇〇:くっ…抜かれる!
菜緒:よしっ!
コーナーを立ち上がった時には菜緒が前に出ていた。
〇〇:しまった!
菜緒:このまま行くでー!
--
ピツ
理佐:〇〇くん、抜かれたって…
友香:そんな…あっさり…
ひかる:抜き返すチャンスは…
由依:あとは〇〇くんに任せるしかないね…
保乃:〇〇くん…
由依:(頼むよ〇〇くん…もう作戦なんて関係ない。
自分のセンスを信じて。)
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ブーン…
〇〇:マズイな…抜かれてからペースが上がってる…
菜緒:まだ付いてくるか…もっと行くで!
ブーン…
〇〇:加藤さんとは比べものにならないくらいのペースだろうな…抜き返すチャンスなんて…
ブーン…
〇〇:…いや、まだ半分近く残ってる。
ブン、キャャァァァァァ…
〇〇:ここで諦めてたまるか!何が何でも抜き返してやる!
ブーン…
--
ブーン…
菜緒:ふぅ…もう結構離れたやろ。
菜緒がバックミラーを見ると…
菜緒:なっ!?すぐ後ろ!?
--
理佐:2台の差はほとんどないみたい。
由依:やっと〇〇くんの"本能"が役に立つ時だね。
ひかる:その…"本能"ってなんですか?
由依:〇〇くんが勝ってきたバトルはどれも後追いから抜き返して勝ってるよね?それで勝つにはまず相手にずっと食いついてないと不可能。それを可能にするのが〇〇くんの"本能"
保乃:食いついていくのがですか?
由依:正確に言うと先行する相手のラインを見て自分の速さにする。それが彼の"本能"。自分でも気づいてないと思うけど。
友香:だけど今回はそれに苦しめられることになる。
由依:相手がラインを撹乱してる時はね。でも相手が抜いた今、向こうは全力で引き離しにくる。
友香:それがこっちにとってチャンス!
由依:でも抜かれてる今、後ろにピッタリくっついてても意味がない。
友香:(〇〇…頑張って!)
--
ブーン…
2台はくっついたまま終盤に来た。
〇〇:勝負のポイントはあそこしかないけど、さっきの方法は通用しないだろうな…
ブーン…
〇〇:…そうだ!あれしかない!
2台は2本目に〇〇が抜こうとしたコーナーに来た。
〇〇:チャンスは一回…頼むぜ、86!!
あ〇〇は2本目と同じようにアウト側から抜こうとする。
菜緒:その手は…無理やで!
菜緒は〇〇の進路を塞ごうとする。
〇〇:…今だ!!
ブーン…
菜緒:!?
菜緒のアウト側のミラーには86は写っていなかった。
菜緒:86が…消えた!?
〇〇:…そこだ!!
ブーン…
菜緒:!?
〇〇はブレーキングでアウトから咄嗟にインに入った。
菜緒:し、しまった!
菜緒はそれまで片手で操作していたハンドルを両手で持つ。
〇〇:いっけぇ!!!
菜緒:くっ!
コーナーを立ち上がった時に前にいたのは
〇〇の86だった。
Next Sector…
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