どん底にいた僕を救ってくれたのは…
○○:社長、次のご予定は…。
道真:うむ…。
この方は菅井道真。
世界的大企業菅井コンツェルンの社長であられる方です。
私○○は今、その秘書をしております。
――
○○:今日もお仕事お疲れさまでした。
今日の業務は以上になります。
道真:よし、帰るか。
私は社長を車の後部座席に乗せ、ご自宅に向かいました。
道真:今日も疲れたな~。
○○:本当にいつもいつもお疲れ様です。
道真:でも、君も立派に務めてくれてるよ。
○○:いえ、社長の仕事量に比べれば…。
道真:君はいつまでたっても謙虚だな~
社長と世間話をしてる内に社長のご自宅に
到着いたしました。
社長のご自宅は都内の高級住宅街の一等地に
大きくございます。
○○:到着いたしました。
道真:うん。ご苦労。
私は社長が家に入ったのを確認し、
お庭にある小屋に入って室内着に着替え
ご自宅に向かいます。
なぜ社長のご自宅に私の着替えがあるかですって?
それは私の家があの小屋だからです。
この生活ができるのは…。
??:○○さん!こんばんは!
そうこの方社長の一人娘、菅井友香さんのおかげです。
○○:友香さん。こんばんは。
友香:もうすぐお夕飯ですよ?ご一緒ですよね?
○○:はい。ご一緒させていただきます。
なぜ、友香さんのおかげかというと…。
私の命の恩人だからです。
――
約1年前。
僕は大学3年生で就活をしていたがなかなか内定を
もらえずにいた。
○○:はぁ~。今回も手ごたえが無いな…。
僕は面接会場から自宅に帰っていた。
○○:う~寒っ。
季節は12月。空気も乾燥している。
○○:早く帰ろ。
凍えながら自宅に向かっていると。
“おい!あっちで火事だぞ!!”
○○:火事?
その大声に周りの人が導かれる。
○○:えっ…そっちって…。
嫌な予感がして、僕は急いで帰った。
○○:あぁ…あぁ…。
目の前に広がるのは真っ赤に燃え上がる自宅だった。
○○:あぁ…。そんな…。
僕は膝から崩れ落ちた。消防隊が必死に消火している。
僕はそれを眺めていることしかできなかった。
しかし…。
○○:…そうだ!父さんと母さんは!?
僕は近くにいた消防士にしがみついた。
○○:あの!中にいるはずの父さんと母さんは!!
消防士:…残念だが。
○○:う…うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
僕はその場で泣き叫んだ。
――
僕は現実を受け止めきれずにさまよっていた。
○○:父さん…。母さん…。
朝、“就活がんばれよ”と見送ってくれた両親がいない。
生まれた時からの思い出の詰まった家がない。
○○:もう…。どうすれば…。
さっきまでずっと泣いていた。
就活の疲れと相まって意識が遠のいていく。
○○:ふらふらする…。僕もこのまま…。
次第に僕は意識を手放した。
――
○○:う、ううん…。
気が付いた時、僕は見知らぬ部屋にいた。
○○:ここは?
??:気が付きましたか?
声のする方を見ると一人の女性が立っていた。
○○:あなたは?
友香:私は菅井友香。もう、びっくりしましたよ~。
○○:へ?
友香:大学から帰っていたら、倒れてるんですもん。
あぁそうか。僕はあのままたおれたのか。
友香:あの~大丈夫ですか?
○○:?
友香:何か事情がおありですか?
○○:実は…。
僕は家が燃えた事やそれによって両親を失い、
すべてを失った事を…。
○○:…というわけです。
友香:それは大変でしたね…。
○○:いえ…。
あの、助けていただいてありがとうございます。
友香:当然のことをしたまでです。
これからどうされるんですか?
こういう時は普通親戚のとこに行くだろう。
だが、僕にはそんな親戚もいない。
○○:親戚とか行く当てもないのでとりあえず
ネットカフェとかに行ってそれから
考えようかと…。
友香:もしよろしければ…
しばらく泊まっていきませんか?
○○:そんな!ここまでしていただいたのに
これ以上は申し訳ないです!
友香:困っている人を放っておけません!
○○:それにご両親の許可も必要じゃないですか?
友香:確かに…。ちょっと待ってくださいね!
そういうと、友香さんは携帯で電話しだした。
友香:お父様?お手すきでしたら来れます?
電話が終わりしばらくすると友香さんのお父様がきた。
友香:お父様!わざわざありがとうございます!
道真:どうした?急な話って?
友香:こちらの方が…。
友香さんはお父様に僕の事情を説明した。
道真:ふむ。なるほどな。
友香:何とかなりませんか?
道真:よし○○くん。落ち着くまでうちにいなさい。
○○:しかし…。
道真:これから役所の手続きとかいろいろあって
何かとわからないこともあるだろう。
それも手伝おう。
○○:…。
確かに家もない上、手続きなど頼る人もいない。
○○:ありがとうございます。
なるべくこれ以上ご迷惑かけないように
努めますので短い間ですが、
よろしくお願いします。
こうして僕は菅井家にお世話になることになった。
それからというもの道真さんの会社の方が手伝ってくれて財産の整理や両親の葬式の手配までスムーズに出来た。
両親の葬式…。
○○:父さん、母さん。
僕…二人の分まで必死に生きるよ。
だから見守っていて。
親戚もいない為、小さいお葬式だったが僕は
十分に送り出せたと思う。
全ての手続きが終わった後、
僕は道真さんの部屋に向かった。
○○:失礼します。
道真:おぉ、○○くんか。
○○:何から何までありがとうございました。
道真:どうってことないよ。
それよりこれからどうするんだ?
○○:バイトとかしながら暮らそうかと…。
道真:家はどうする?
○○:遺産があるんで最初はそこから出してアパートでも
借りようと思ってます。
道真:一つ提案だが、このままここで暮らさないか?
○○:え!?
道真:なに。息子もほしかったんでね笑
○○:しかし…。
道真:ただし。条件がある。
○○:条件?
道真:私の秘書として働くこと。
○○:秘書ですか…。
道真:職を探しているんだろう?
ちょうど秘書を増やそうと思ってたところでな。
○○:しかし、僕に務まるでしょうか?
道真:君を手伝っていた者から聞いたが君は
要領がいいみたいだし適任だと言っていた。
○○:…。
この数日間、ずっとお世話になりっぱなしだ。
僕に出来ることならなんでもやる。
○○:…これからもよろしくお願いします。
道真:こちらからもよろしく!
細かいことはまた追って伝えるよ。
ということで住み込みで道真さんの秘書として
働かせていただいてます。
――
とある日…
○○:今日の予定は13時から役員会議、
その後は△△商事の社長との会食です。
道真:わかった。
社長の出社の車内で今日の予定を確認。
これから一日が始まる。
道真:ところでもうすぐ友香の誕生日だな。
○○:そうでしたね。
道真:そして君の誕生日でもあるな。
○○:はい。ですがその日から社長の海外出張に
同行の予定ですが…。
道真:いや、君は休め。
○○:え!?
道真:君はこの約1年間、ほんとによく頑張った。
誕生日くらい休んだって罰は当たらない。
○○:しかし…。
私は助けてもらった恩を返してるだけで…。
道真:ならその命の恩人である友香の為に
使ってくれないか?
○○:?
道真:友香は幼稚園の頃から女子高育ちでな。
そろそろ彼氏の一人でも作って欲しいんだがな笑
○○:それが私ですか?
道真:君だって友香に惚れてるだろう?
○○:…!!
そう。私は友香さんのことが好きだ。
しかし、友香さんは私にとって命の恩人。
ましてや大企業の社長の一人娘。
一度すべて失った私がそんな人の隣に立つ資格がない。
そう思っていた。
道真:君は私にとって、社長と秘書という関係の前に
親子だと思っている。
自分の子供の幸せを願わない親などいないだろう。
○○:でも、友香さんがどう思っているか…。
道真:君のことが嫌なら私にとっくに言っている。
友香はしっかり自分を持ってる人間だ。
○○:しかし…。
道真:もし君がまだ恩を返しきれていなくあの家で
邪魔者だとおもっているのなら大きな勘違いだ。
君は会社にとってもあの家にとっても
必要なんだよ。
○○:ありがとうございます…。
道真:だから誕生日は友香と過ごしてくれ。
○○:はい…。ありがとうございます!
私はその日から誕生日を待ち遠しくなっていた。
――
誕生日当日…。
社長の自宅は道真さんの計らいなのか私と友香さんの
2人きりになっていた。
私は朝食を作る為、キッチンに向かった。
コンコン…。
キッチンから音がする。
○○:友香さん?
友香:あっ、○○さん!おはようございます!
○○:おはようございます。何されてますか?
友香:○○さんがお誕生日なので朝食を作ろうかと…。
○○:そんな!友香さんも誕生日なのに!
私が作りますよ。
友香:いえ、しかし…。
○○:そうしたら…一緒に作りますか?
そうすればお互いの為になりますし!
友香:いいですね!そうしましょ!
それから私と友香さんと2人で朝食を作った。
○友:いただきます。
○○:ん!おいしい!
友香:よかった~。ちゃんとできて。おいしい!
2人で作った朝食。いつもと大きく変わらない
メニューなのにいつもよりおいしく感じた。
○○:今日は朝食たべた後、何なされますか?
友香:う~ん。ちょっとお買い物とかしたいですかね。
○○:わかりました。お車は出しますね。
友香;あの~。
○○:どうされました?
友香:もしよかったらなんですけど、
お互い敬語は無しにしませんか?
○○:?
友香:同い年ですし、一緒に暮らし始めてから
一年くらい経ちましたし…。
○○:わかりました。いいですよ。
友香:ほんと!やった!
喜ぶ顔がほんとにかわいらしい。
――
朝食を食べた後、僕たちは準備をして車に向かった。
○○:じゃ友香さん、乗って。
僕はいつもどおり後部座席のドアを開ける。
友香:その…今日は助手席でいい?
○○:いいけど…。
友香:そっちの方が楽しそうだし!
○○:わかった!
僕は友香さんを助手席に乗せて出発した。
着いた先はいつも行っているデパートではなく、
ショッピングモールだった。
その中にある大学生に人気のあるプチプラのショップに
入った。
○○:ほんとにここでよかったの?
友香:うん!いつも服、値段で選んでる訳じゃないし…。
あっ!これどうかな?
そういって、友香さんはパーカーをとった。
○○:うん!いつもの友香さんとは違った雰囲気だけど
すごい似合ってるよ!
友香:ほんと?じゃあこれ買おう!
その調子で僕たちは買い物を楽しんだ。
時間は夕方。
○○:友香さんこの後なんだけど…。
友香:ん?
○○:ちょっと離れた所のレストランを
予約してるんだけど行こ?
友香:うん!行く行く!
そうして僕らは都内から横浜にあるレストランに
移動した。
友香:うわ~!きれいな景色!
そのレストランはきれいな夜景が楽しめると有名だった。
友香:ありがと!連れてきてくれて!
○○:喜んでくれてよかったよ。
その後、テーブルにワインが運ばれてきた。
といっても僕のだけノンアルだが。
○○:それじゃ、誕生日…。
友香:おめでとう!
カチン
普段、社長の会食の同行で様々な高級料理を口にしたが、それとは比にならないくらいおいしく感じた。
きっと目の前においしく食べる友香さんの顔が
あるからだろう。
――
夕食を食べた後、僕らは山下公園を歩いていた。
○○:どうだった?今日は?
友香:すっごい楽しかった!
○○:よかった。考えてみれば二人で出かけたのこれが
初めてだったね。
友香:そうだね。あっ!
友香さんはバックから小包を出した。
友香:はい!誕生日プレゼント!
○○:えっ…あっ、ありがとう!
友香:開けてみて?
小包も開けると中から深緑のストライプの
ネクタイが出てきた。
友香:このネクタイの色は相手に穏やかな印象を
与えられるの!
そして、ストライプは勤勉の意味があるの。
○○さんのイメージにピッタリだと思ったの。
あと裏見て!
裏を見ると僕の名前の刺繍が入っていた。
○○:友香さん…。ありがとう!大切に使うよ!
友香:フフッ笑よかった!
○○:そしたら僕も…。
カバンから用意していたプレゼントを渡した。
○○:開けてみて。
友香さんは僕のプレゼントを開けた。
友香:きれい…
中にはクレッセントムーンのピアスが入っている。
○○:このピアスは成長や発展の象徴。
これからの友香さんの発展を願ってこれに
したんだ。
友香:ありがとう!大切にするね!
○○:友香さん…。
友香:?
○○:本当にありがとうございました。
友香:えっ…?
○○:友香さんに出会わなければ今の僕はいません。
僕にとって友香さんはどん底から救ってくれた
命の恩人です。
友香:そ、そんな大げさだよ///
○○:感謝してもしきれません。
でも一つだけわがままを言ってもいいですか?
友香:?
○○:友香さん。僕はあなたのことが大好きです。
僕とお付き合いしてくれませんか?
友香:…はい。喜んで!
○○:ほんとに!?
友香:嬉しいよ!私も好きだったから…。
○○:え!?
友香:一緒に暮らしてるうちに素敵な人だなって
思って…。
お父様に秘書の提案したのも私なんだよ?
○○:そうなの!?
友香:うん。もっと一緒にいたいと思って…。
○○:友香さん…。
友香:…って…んで。
○○:?
友香:友香って呼んで!
○○:ゆ、友香…。
友香:フフッ笑な~に○○!
そういって友香は抱き着いてきた。
〇〇:うおっ!
友香:これからもよろしくね!
○○:うん!よろしく!
2人の誕生日が今まで以上に大切な日になった。
後日、道真さんに事の次第を報告すると
すごい喜んでくれた。
ただ、それからというもの移動の車内で友香とのことを
ずっと聞いてくるのはちょっとしんどい。
――
冬のあの日、僕はすべてを失った。
でも捨てる神あれば拾う神あり。
どん底にいた僕は友香のおかげで人生が楽しくて
しょうがない。
父さん、母さん。どうか天国で温かく見守っていて
ください。
友香:○○?どうしたの空見つめて。
○○:あぁ、ごめん!ちょっと考え事。
ギュッ…
友香:ほら、行くよ!
○○:うん!
いつか人生の頂点に登ってやるから!!
Fin
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