見出し画像

その日まで…

俺は増本○○。櫻学院大学付属高校に通う3年生。
この学校は世間一般で言えば金持ち学校だ。
生徒の大半がどっかの社長の子供だったり、
政治家の子供だったりする。
この俺の親父も増本建設という国内最大手の建設会社の
社長である。

○○:はぁ…。つまんないの…。

??:いいから、仕事して!“副会長”!

そう、今呼ばれた通りに僕はこの学校の生徒会副会長を
している。

○○:だって毎日書類整理ばっかなんだもん。“守屋”

茜 :そういう仕事!もうあきらめて!


この人は守屋茜。生徒会で書記を務める。
1年生の時、同じクラスで学級委員をしていた時は
鬼軍曹と言われていた。

○○:大体、なんで俺が副会長なわけ?
   守屋の方が向いてるでしょ。

茜 :会長のご指名でしょ?仕方ないでしょ。

○○:で、その会長は何処へ?

茜 :もうそろそろ来ると思うけど…。

??:おつかれ~

○○:おせーぞ!“友香”!


今来た人が菅井友香。現生徒会長で幼馴染。
実家が世界有数の大企業の菅井ホールディングスである。
俺の親父と友香のお父さんが古くからの知り合いで
小さいころからの仲だ。

友香:ごめん!ちょっと先生と話してて!

○○:ったく…。仕事たまってますよ。会長。

友香:よし、じゃ頑張ろ!

茜 :友香、この書類なんだけど…。

この学校の生徒は将来社長など周りを引っ張っていく
立場になる人ばかりだ。

そんな学校の生徒会になりたい人はわんさかいる。
俺はそんなにやる気はなかったが、
友香が会長になった際指名された。
その理由を聞いたら慣れた人だからと簡単な理由だった。

ーー

キーンコーンカーンコーン…。


友香:今日はここまで!お疲れ様!

○○:さて…。帰るk…。

??:お兄ちゃん!!

○○:なんだよ…。“綺良”。


この騒がしいのは妹の綺良。1年生。
これでも学級委員長らしい。

綺良:帰るよ!

友香:きら坊~

綺良:友香さ~ん。


友香と綺良は親分と子分の関係らしい。
綺良が学級委員長になったのも友香の影響らしい。


茜 :こら綺良!部屋に入るときはノックしなさい!

こっちの関係は親子みたいだ。

○○:はぁ…。帰るぞ。

綺良:友香さんも茜さんも帰りましょ!

友香:うん!帰ろ!

茜 :ごめん!この後用事が…。

○○:家のパーティーだっけ?

守屋の家も有名な化粧品メーカーだ。

茜 :そうなの~。お父さんがどうしても出ろって。

友香:仕方ないね。

茜 :また一緒に帰ろ!じゃあね!

守屋はそう言って急いで帰った。

綺良:じゃ私達も帰ろ!

○○:へいへい。

――

俺たちは親父たちのおかげで高級住宅街に
住まわせてもらってる。
友香と俺の家は隣同士だ。

友香:じゃ、また明日!

○○:じゃあな。

綺良:お疲れさまです!

――

家に入り、晩御飯の準備をする。
両親は1年前から海外事業拡大の為、アメリカにいる。
なのでこの家には俺と綺良の2人だけだ。

○○:綺良~できたぞ~

綺良:は~い。

○綺:いただきます。

綺良:ところでお兄ちゃん。高校卒業したらどうすんの?

○○:そのまま内部進学かな。

綺良:だよね。お父さんの会社入るんでしょ?

○○:うん。普通に建築に興味あるし、
   大学も建築科にいく。

綺良:友香さんと茜さんもかな?

○○:だろうな。

櫻学院大学は名門だ。そこに入るだけでも印象が違う。

綺良:私も目指す!

○○:なら成績おとすなよ、学級委員長。

――

9月…。

この季節になると進路面談の時期になる。
といっても大体の人が内部進学だ。

○○:失礼します。

??:おう。来たか。

○○:土田先生。この面談って意味あるんですか?


土田:まぁ、形式的なものだ。お前も内部だろ?

○○:はい。建築学科に行こうかと。

土田:お前の成績なら問題無いな。どうだ?生徒会は。

○○:まぁ、退屈はしてないですね。
   書類整理ばっかですけど…。

――

一方、○○のいない生徒会室…

綺良:失礼しま~す。

友香:おっ、きら坊!


綺良:あれっ?お兄ちゃんは?

茜 :進路面談中~。


綺良:そうなんですね。
   お兄ちゃん内部って言ってましたけど、
   2人もですか?

茜 :私も内部だよ。

友香:私は…。

綺良:?

友香:まだ○○には言わないでね?実は…。

綺良:…えっ!?

ーー

○○:お~い。ご飯できたぞ~。

綺良:はーい…。

○○:どうした?元気なさそうだけど。

綺良:ううん!なんでもないよ!

○○:そっか。

綺良:(友香さん…。)


――

12月…

○○:う~さむっ…。

この時期3年生は受験やらで月一の登校日以外は
基本生徒は登校しない。

○○:綺良もいないし、やることないしな~。

ピンポーン

○○:誰だろ?

ガチャ


友香:よ!

○○:友香?どうしたの?

友香:暇だから来た!出かけよ!

○○:寒いからやだ。

友香:いいから!行くよ!

○○:わかったよ…。

俺は防寒対策をしっかりして出た。

○○:どこ行くの?

友香:いいから!付いてきて!

そう言ってきたのは小高い丘にある小さな公園だった。

○○:久しぶりに来たな…。

友香:小っちゃい頃、よく来たよね。

○○:こう見ると、景色が変わって見えるな…。

友香:…あのね○○。

○○:どうした?

友香:○○は卒業したらそのまま内部進学だよね。

○○:うん。友香もだろ?

友香:ううん、私はね…。




留学するの。




○○:…は?

友香:だから同じ大学には行かない。

○○:嘘だろ…。

友香:ずっと言えなくてごめんね。

そういわれた時、なぜか怒りの感情が出てきた。

○○:なんで相談してくれなかったんだ!

友香;え…。

○○:俺らは幼馴染じゃなかったのかよ!

そう言って俺は公園を飛び出した。

――

家に帰った俺は自分の部屋にこもっていた。

コンコン…。


綺良:お兄ちゃん…。入るよ…。

ガチャ

綺良:お兄ちゃん…。友香さんから聞いたんだね、
   留学の話。

○○:うん…。

綺良:さっき友香さんに会ったよ。
   お兄ちゃん怒ってたって…。

○○:…。

綺良:なんで怒ってるの?

○○:わかんねーよ。ほっといてくれ。

なんでこんなにイライラしているのか自分でも
わからかった。

綺良:友香さんから相談なかったから?
   急に言われたから?

正直留学を相談されたところで俺に
どう出来る話ではない。

止めることは…。



ん?止める?




綺良:なんで相談なかったかわかる?

○○:…。

綺良:これ。

綺良から手紙を渡された。

綺良:それみてよく考えな。

バタン

○○:…手紙か。

パラッ


“○○へ

ごめんね?急な話で。

留学は夏の頃には決めていたの。

なんで留学を決めたかっていうのはね。
○○を見てたからなんだよ?

うちの学校の人、将来稼業を継ぐからと言って
あまり努力する人いないよね。

でもそんな中でも○○は努力を怠らずに目標に
向かって頑張ってる。

そんな○○に追いつきたいと思ったから留学を決めたの。

確かにそのまま内部進学でもいいと思った。

○○やあかねんもいるし、なれたところだからね。

こんな環境に甘える自分を許せなくなってしまう前に
決心したの。

今までのものはここに置いていこうって

そしてもう一つ理由があるの。

それは…○○のお嫁さんになること。

ずっと前から○○のことが好きだった。

生徒会長になったのも、副会長に指名したのも。

全部○○と一緒にいたかったから。

でも努力家の○○のそばにいて、
このままじゃ私が隣にいる資格がないって思ったの。

絶対、絶対、脇目も降らずにただ全力で進む、
その日まで。

ねぇ、ずっと私を待ってて…。

ごめんね、勝手なこと言って。

でも大人になる為には見送って…

○○、大好きだよ。

友香“




読み終えると、頬をつたうものがあった。

この胸に溢れる君への想いがもどかしい。

俺は手紙を握りしめてさっき別れた公園へ飛び出した。

空はまだ明るいのに突然雨が降ってきた。

俺はずぶぬれになりながら街を走った。

街を吹き抜ける風の中、何かの香りがしてたのに
振り返る余裕とか興味もなかった。


公園に着くと屋根のある所に友香はいた。


○○:はぁ、はぁ…。友香!!



友香:○○…。

○○:ごめん!!勝手に怒って…。

友香:ううん。私こそごめんね…。

○○:俺も!!友香のことが大好きだ!!!

友香:えっ…。

○○:やっとわかったんだ。
   なんであの時怒ったのか、
   それは友香がいなくなるのが嫌だったんだ…。

友香:…。

○○:でも手紙をよんで、友香が俺のことをそんな風に
   思っててくれてたってわかったら
   すごい嬉しかった。
   だから今は素直に留学を応援するよ。

友香:○○!!

友香が走って抱き着いてきた。

友香:私も嬉しい!

○○:友香…。

友香:○○!大好きだよ!

君に会った瞬間、何か取り戻したように
俺らの上空に虹がかかった。

夕日で照らされた俺らの二つの影が一つに重なった。

友香:○○…。

○○:ん?

友香:私、悲しくなんてないよ。
   だっていつかはあえるでしょ?

○○:うん、俺も。だから祈ってるよ。
   俺たちの幸せな未来。

友香:だから…サヨナラはその日まで…。


――

数年後…。

綺良:お兄ちゃん?大丈夫?


○○:人生で一番緊張してる。

綺良:しっかりして!
   あれこれ考えてもなるようにしかならないし。

○○:はぁ~

綺良:ほら!早く友香さんのとこ行ってきなさい!“新郎”

○○:うん…。

――

コンコン

○○:失礼します…。


茜 :あ!来た来た。新郎くん!

〇〇:守屋…

茜 :じゃゆっかー!またあとでね…


友香:○○…。

○○:友香…。きれいだよ。

友香:ありがとう。○○もかっこいいよ。

○○:やっとこの日を迎えられたね。

友香:うん…。

俺たちはなぜここで見つめあっているのかって、
不思議なことだと今改めて思ったかもしれない。
広い世界には多くの人がいるのに同じ時間を
共有するなんて…。

それを奇跡で片づけるのはもったいない。

これが運命なのだろう。

○○:友香、愛してる。

友香:○○…私も愛してる。

○○:これから2人支えあって歩いていこう。
   自他ともに世界で一番幸せな家族と言われる…。




“その日まで”


Fin


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?