もしも…クールな同期に"ある"お願いをされたら…
〇〇:はぁ…
俺は壁に張り出された営業成績を見ていた。
後輩:先輩!どうでした?
〇〇:また2位だよ。
後輩:またって…1位の人って…
〇〇:あぁ、あいつだよ。
後輩:やっぱすごいっすね〜"小林"さんは。
〇〇:そうだな…
入社して4年、俺は同期である小林由依を
超えることが出来ていない。
後輩:仕事をできて信頼も厚い。
その上あんだけ美人なんですもんね…。
そんな話をしていると…
後輩:あ、小林さんだ。
〇〇:また1位だってよ。おめでと。
由依:ん。ありがと。
それだけ言って去っていった。
後輩:なんて言うか…小林さんてすごいクールですよね…。
〇〇:入社した頃からずっとあれだ。
後輩:彼氏とかいるんですかね?
〇〇:さぁ?
同期と言ってもプライベートの話はあんまりしないしな。
ただまぁ、あんだけ美人なんだ。
いても不思議じゃないだろう。
ーー
数日後…
〇〇:さて…帰るか…
由依:〇〇?
〇〇:ん?小林か。どした?
由依:今日これから暇?
〇〇:暇だけど…
由依:飲みに行かない?
〇〇:お前から誘うって珍しいな。
由依:ちょっと相談も兼ねてね。
〇〇:まぁいいけど。
ーー
俺たちは会社近くの居酒屋に入った。
〇〇:それで?相談ってのは?
由依:その…すっごい言いづらいんだけど…
〇〇:?
由依:私の…彼氏のフリしてくれない?
〇〇:…は?
由依:お願い!
〇〇:…ごめん。話が見えないんだけど…
由依:それがね?うちのお父さんがいい加減彼氏でも作れってうるさくてね。
〇〇:はぁ。
由依:それでつい言っちゃったの。「彼氏ぐらいいるわ!!」って…
〇〇:ほぉ。
由依:そしたら「何?じゃあ紹介してくれ!」って…
〇〇:なるほどね…。
由依:だからお願い!
〇〇:事情は分かったとして、なんで俺?
由依:そ、それは〜…会社で気軽に話せる男の人って〇〇くらいだし…
〇〇:まぁわかったよ。やるよ、その役。
由依:ほんと!?
〇〇:仕事で助けてもらったりしてるしな。
由依:ほんっとにありがとう!
〇〇:でも彼氏の役ってどうすれば…
由依:う〜ん…
2人で悩んでいると…
??:ふっふっふ… 話は聞かせてもらいましたよ!
〇〇:!?
由依:美青ちゃん!?
美青:そう言う事ならこの的野にお任せ下さい!
〇〇:てかなんでいるの?
美青:由依さんは私の憧れなんです!
由依さんいる所に私ありです!
〇〇:(それってストーカーじゃ…)
美青:とりあえず、お二人が本当のカップルに見えるようにすればいいんですよね!
〇〇:ま、まぁ…
美青:そしたら!一回デートに行くべきです!
由依:デ、デート!?
美青:だってお二人共、会社での姿しか知らないですよね?
〇〇:まぁ…
美青:そんな状態でお父様にあったってボロが出るだけです!
由依:はぁ…
美青:そこで!一回デートに行って、お互いのプライベートを知るべきです!
由依:なるほど…
〇〇:一理あるな…
美青:と言う事で!善は急げ!由依さん!こっちのテーブルで作戦会議です!
由依:えっ、ちょっ…
美青:あ、〇〇さんは適当に帰って大丈夫です。
小林は美青ちゃんに連れて行かれた。
〇〇:はぁ…。
小林の彼氏役か…
確かにあいつは美人だ。
実際周りの男性社員から人気が高い。
ただ、あの感じだから近づきづらいんだろう。
--
後日、俺は待ち合わせ場所にいた。
〇〇:少し早かったかな…
待っていると…
由依:ごめん!待った?
〇〇:いや?全然待って…
振り返るとそこにはいつもの雰囲気とは違う小林がいた。
由依:ん?どうかした?
〇〇:い、いや?なんでもない…
そこにいる小林はモデルと見間違うくらいに綺麗で不覚にもドキッとしてしまった。
由依:行こっか。
〇〇:あぁ。
ギュッ
〇〇:へ?
小林が手を握ってきた。
由依:こ、こうするといいって美青ちゃんが///
〇〇:そ、そう…///
美青ちゃん…何教えてんの…
俺たちは手を繋いだまま目的地へ向かった。
--
近くのショッピングモールにやって来た俺たち
〇〇:んで?今日は何すんの?
由依:お買い物。
〇〇:うい。何買うの?
由依:お揃いのもの…
〇〇:え!?
由依:そういうものがあった方が説得力があるって美青ちゃんが…
〇〇:また美青ちゃんか…
由依:それと…
〇〇:ん?
由依:今日だけでいいから…由依って呼んで…
〇〇:…それも美青ちゃんから?
由依:う、うん!
〇〇:わかったよ…
由依:そ、それじゃ行こっか!
--
俺たちは雑貨屋に入った。
〇〇:どれがいいかな…
由依:これは?
由依はサングラスを掛けていた。
〇〇:ん〜由依は似合うけど俺がな…
由依:〇〇も似合うと思うけどな…ボソッ
〇〇:ん?
由依:な、何でもない!
なんだろう…
会社の時はクールでカッコいいイメージだけど…
今日の由依は何だか…可愛らしい…
由依:あ!このマグカップなんてどう?
〇〇:うん。実用的でいいんじゃない?
由依:うん!これにしよう!
俺たちはお揃いのマグカップを買って店を出た。
--
時間は夕食時、俺らはお店を探していた。
その間も手は繋いだままだった。
由依:あ!ここどう?
〇〇:うん。いいと思う。
お洒落な雰囲気のレストランを見つけた。
入った俺たちは注文済ませ、料理を待った。
由依:どう…だった?
〇〇:ん?
由依:今日の…デート…
〇〇:うん。楽しかったよ。
由依:よかった…。
〇〇:由依はどうだった?
由依:私も楽しかった。これで本物のカップルっぽくなったかな…
〇〇:だといいけど。
由依:私…デートとか初めてだから…
〇〇:へ〜意外。
由依:ほら、私って近寄りがたいって言うか…
冷たい感じじゃない?
だからか、そういうのにあんまり縁がなかったんだよね…
〇〇:ほー。
由依:そりゃそうだよね。普通男が好きになるような子ってもっと明るくて優しい子だよね。
〇〇:まぁそれは人それぞれだろ。
由依:でもなぁ〜…
〇〇:それに。由依は十分優しいと思うよ?
由依:へ?
〇〇:俺とか後輩の子が仕事で困ってる時、すぐ助けてくれるだろ?
面倒見がいいって言うか、それもいいと思うけどな。
これは慰めでもなく俺の本心だ。
俺の部署で仕事の効率は1番いい。
困った時や行き詰まったとき、由依はすぐに助けてくれる。
本当に頼もしくてカッコいい同期だ。
でも今日目の前にいる由依は仕事時とは全く違う、
1人の可愛らしい女性だ。
〇〇:俺はいいと思うけどね、そういう女性。
好きだよ。
由依:えっ!?
店員:お待たせしました。
料理が運ばれて来た。
〇〇:うまそ〜。ほら、早く食べよ!
由依:う、うん///
--
食べ終えた俺たちは店を出て少し歩いていた。
〇〇:はぁ〜美味しかった。
由依:う、うん…
〇〇:そろそろ帰るか…
ギュッ
〇〇:ん?
由依が元々繋いでた手をもっと強く握って来た。
由依:今日はありがとね…。
〇〇:どういたしまして。
由依:そ、それでさ。その…
〇〇:どした?
由依:き、今日は彼氏役の為ってことで来たけど…
彼氏"役"じゃなくて彼氏になってくれませんか?
〇〇:へ?
由依:入社してちょっとした時に私が仕事でミスった時あったでしょ?
〇〇:あぁ…。
それは俺が唯一、由依を助けた時だ。
由依が発注をミスって商品がとんでもない量が来た。
その在庫を、俺のお得意様に頼んでどうにかミスを帳消しにした。
由依:あの時の〇〇を見て思ったの。
こういう仕事できるようになりたいって。
〇〇:…。
由依:最初は恋愛感情とかじゃなくて同期として追いつきたいって思ってた。でも、いつからかそばにいたいって…〇〇のことが好きってなったの…。
〇〇:小林…。
由依:今日、由依って呼ばれて…手繋いで…お揃いのもの買って…一緒にご飯食べて…すごい幸せだった。
この幸せ…もっと続けさせて下さい!
〇〇:…俺もさ、1つ言っておきたいことがある。
由依:何…?
〇〇:小林のことは同期の中で1番頼りにしてる。
こないだの彼氏役の提案もびっくりはしたけど…何だか嬉しかったんだ。
由依:…。
〇〇:そして今日1日一緒にいてわかったことがある。
由依:…。
〇〇:俺…お前のことが…好きだ。
由依:え…。
〇〇:仕事の時の雰囲気も好きだけど、今日みたいな感じも好き。
だから俺を小林の本当の彼氏にしてください!
由依:…って呼んで。
〇〇:え?
由依:彼氏なんだから…由依って呼びなさいよ!
〇〇:由依…。
ギュッ
〇〇:うおっ!?
由依は俺の胸に飛び込んできた。
由依:これからよろしくね?
〇〇:うん…。
ギュッ
俺は由依を抱きしめ返した。
由依:えへへ。なんだか幸せ。
〇〇:うん…。俺も。
こうして俺たちは付き合うことになった。
美青ちゃんに報告したら…。
美青:由依さんを泣かせたら承知しませんからね!
と言われた。
由依のお父さんに会いに行き少し話していると、
気に入っていただけたみたい。
次に来る時は…別の報告かな。
Fin
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