孤独な私を孤独にしなかったのは孤独でした。
部長:急で申し訳ないんだが、
来月から北海道に転勤だ。
ひかる:…え?
ーー
ひかる:はぁ…
たった今、絶望に打ちひしがれてる
森田ひかるです。
この会社に勤めて早2年。
東京から北海道への転勤を言い渡されました。
ひかる:どうしよう…
??:どうしたの?
ひかる:由依さ〜ん…
ーー
由依:そう…北海道に…
ひかる:そうなんですよ…
この方は3年先輩で私の教育係の小林由依さん。
ひかる:これっていわゆる…
左遷ってやつですか?
由依:ううん、違うと思うよ?
ひかる:でもいきなりなんて〜…
北海道なんて知り合いもいないし…
由依:ん?いや、あいつがいるわ。
ひかる:誰ですか?
ーー
一ヶ月後…
私は新千歳空港に降りた。
ひかる:ここが北海道…でっかいどう…
明日から出社なのでこっちで借りた部屋に向かった。
ひかる:こっちは少し肌寒いな…
4月の北海道…
東京に比べて7〜8度くらい低い10度前後。
ひかる:冬はもっと寒いんだろうな…
そんな事を考えていると、部屋についた。
中に入ると東京から送ってもらった荷物が置かれている。
ひかる:とりあえず必要なものだけ出そっかな。
荷解きをしていると夜も遅くなって来た。
ひかる:初日から遅刻する訳にも行かないし…
早く寝よ。
私は夕飯を近くのコンビニでお弁当を買って済ませ、早めに寝た。
ーー
翌日…
ピピッピピッ…
ひかる:ん、ん〜…
今日から北海道支社での仕事…
知り合いなんていない…
でも由依さんが言うには…
由依:"あそこには私の信頼できる同期がいる。
そいつを頼りな。私も助けられたから。"
ひかる:上手く行くかなぁ…
私は不安を胸に会社にむかった。
ーー
課長:東京から来た、森田ひかるさんだ!
みんなよろしくな!
ひかる:森田ひかるです!
よろしくお願いします!
パチパチ…
課長:それじゃ森田さんは〇〇係長と
一緒に仕事してもらうから!〇〇!
〇〇:は〜い。
課長:森田さんをよろしくな!
〇〇:りょーかいです。
課長は係長に私の事を任せてデスクに戻った。
ひかる:〇〇係長!よろしくお願いします!
〇〇:肩書はいいよ笑 ここは人も少ないしね。
確かにこの支社には十数人しかいない。
〇〇:それより小林から聞いてるよ。
森田さんのこと、よろしくねって。
ひかる:由依さんが言ってた同期の方って
〇〇さんだったんですね!
〇〇:なんか言ってた?
ひかる:すごい信頼できるから頼りなって!
〇〇:頼り…か。
ひかる:? どうしました?
〇〇:いや、なんでもないよ。
一瞬…〇〇さんの顔が寂しそうだった…
〇〇:それじゃ今日は社内の案内と業務内容の確認かな。
ーー
〇〇:…であそこが社食。
北海道なだけあってすごい美味しいよ!
ひかる:へぇ〜
グゥ〜…
ひかる:///
〇〇:あはは笑 いい時間だし、お昼にしよっか!
ひかる:はい///
ーー
〇〇:おっ、今日は豚丼がある。
これおすすめだよ!
ひかる:じゃあ、それで…
〇〇:おばちゃーん!豚丼2つ!
おば:はいよー!あら?新人さん?
〇〇:今日東京から移動になった森田ひかるさんだよ。
おば:まぁーそら遠くから。あんたと一緒だねぇ〜
〇〇:まあね…
おば:しかもこんなべっぴんさん!
あんたも仕事はかどるでしょ笑
〇〇:だぁーもういいから早く作って!
この後も仕事あるから!
おば:はいはい笑
〇〇:ったく…
ひかる:仲良いんですね!
〇〇:ほぼ毎日お世話になってるからね笑
ーー
お昼を食べた後、ここでの仕事内容を教わった。
〇〇:…って感じかな。
ひかる:はい…
〇〇:不安?
ひかる:はい…
〇〇:まぁ始めのうちはみんなそんなもんだよ。
しばらくは俺と一緒にやるから
そんな気負わなくていいよ。
ひかる:ありがとうございます!
〇〇:そしたら今日はもう上がりな。
明日から取引先に挨拶にいくから。
ひかる:はい!お疲れ様でした!
〇〇:うん。お疲れ。
ーー
私は家に着き、お風呂に入りながら
今日のことを思い出していた。
ひかる:〇〇さん…優しい人だなぁ…
仕事の内容を細かくかつ分かりやすく教えてくれる。
あの若さで係長になるって
相当仕事できるんだろうな…
ひかる:なんとか…上手くやっていけるかな。
ーー
異動2日目…
ひかる:おはようございます!
〇〇:おはよう。
今日は昨日言った通り取引先に行くから。
ひかる:はい!
ーー
〇〇さんの運転する社用車で向かったのは牧場。
ひかる:すっごいのどかな風景…
〇〇:東京に比べたらすごいゆったりしてるよ。
ひかる:でもなんか癒されます。
〇〇:リラックス出来てるならよかった。
これから行く牧場のオーナーもすごいいい人だから。
ひかる:牧場…ちょっと楽しみです。
ーー
〇〇:オーナー!こんにちは!
オーナー:おお、〇〇さん!あれっ?横の方は?
〇〇:昨日から私と一緒に担当になりました
森田です。
ひかる:森田ひかるです。よろしくお願いします!
オーナー:よろしくお願いします!
いや〜綺麗な人だ!
ひかる:あ、ありがとうございます///
〇〇:どうですか?最近の調子は?
オーナー:おかげさまで順調だよ!
あ、美味しいチーズ出来たから持っていって!
〇〇:いいんですか!?
オーナー:こうやって仕事が上手くいってるのも
〇〇さんのおかげよ!
はい!森田さんも!
ひかる:ありがとうございます!
美味しそう…
〇〇:前にも貰ったけどほんとに美味しいよ!
オーナー:またよろしくね!
〇〇:はい!よろしくお願いします!
ーー
牧場を後にした私達は会社に向かった。
〇〇:どうだった?
ひかる:すごいいい人そうでした!
牛さんとかも可愛かったですし!
〇〇:よかった。
さっきまで不安そうにしてたから楽しそうでなにより。
ひかる:はい!頑張れそうです!
〇〇:まぁ無理はしないでね?
基本、俺のサポートだから俺が管理するけど。
ひかる:いや〜
正直、こっちに異動になったのって左遷かと…
〇〇:まぁ普通はそうおもうよな。
俺もそうかと思ったよ。
ひかる:どうしてこっちになったんですか?
〇〇:俺らの部署が立ち上がる時に
その統括を頼まれてね。
自慢じゃないけどその当時、
営業成績がトップだったから。
ひかる:へぇ〜
〇〇:この部署も本社の肝入りだったみたい。
だから森田さんも期待されてるって事だと思うよ?
ひかる:そうなんですかね…。
〇〇:小林が太鼓判押してるんだ。
期待してるよ!
ひかる:はい…。
ーー
午後にもうひとつの取引先に行き挨拶を終えた。
取引先は有名な蒸留所でウィスキーを頂いた。
これも〇〇さんの人柄によるものだった。
〇〇さんって色んな人に信頼されてるんだなぁ…
〇〇:さて、今日はこんなところかな。
ひかる:〇〇さんって本当にすごいんですね!
〇〇:え?
ひかる:相手にものすごい
信頼されてるんですもん!
〇〇:まぁ、大きい仕事だからね。
相手がいないと俺らも仕事できないし。
ひかる:やっぱり由依さんが言う通りですね!
〇〇:そう…だな…。
まただ。
由依さんの話をすると少し寂しそうな顔をする。
ーー
異動して一ヶ月…
こっちでの生活も慣れて来た。
仕事も〇〇さんに手伝ってもらいながらだけど
上手くこなしていた。
プルルルル
ひかる:?由依さんからだ。
ピッ
由依:お疲れ様〜
ひかる:お疲れ様です!
由依:どうそっちの仕事は?
ひかる:なんとか慣れてきました!
由依:〇〇はどう?
ひかる:すっごい頼りになって、
いっつも助けてもらってます!
由依:やっぱりね。ほんとにいいやつだから。
ひかる:取引先の人にもすごい信頼されてます!
由依:あいつと仕事してればひかるに
とってもプラスになるから!
ひかる:はい!頑張ります!
由依:うん!頑張って!
ピッ
ひかる:よーし!頑張ろ!
ーー
ひかる:ふぅ…
〇〇:緊張してる?
ひかる:はい…
今日は取引先に新しいプロジェクトの
プレゼン。
〇〇:大丈夫!あんだけ準備したんだから!
ひかる:はい…
〇〇:何かあったら俺がフォローするから!
ひかる:心強いです!
〇〇:よし!行こう!
ひかる:はい!
ーー
ひかる:ありがとうございました!
〇〇:失礼します!
バタンッ
〇〇:よしっ!
ひかる:やったー!
プレゼンは無事成功!
途中〇〇さんのフォローもあったけど…
ひかる:ありがとうございました!
フォロー入れていただいて!
〇〇:ううん、ほとんど何もしてないよ。
ほぼ全部森田さんの実力だよ!
ひかる:そんな…
〇〇:自信持って!
〇〇さんはそう言って肩をポンポンと叩いた。
ひかる:っ!?ドキッ
〇〇:よしっ!この調子で頑張ろう!
ひかる:は、はい///
なんだろう…
肩をポンポンされた瞬間にどきっとした…。
なんか…あついな…
ーー
冬…
この日私は1人で取引先に行っていた。
ひかる:うぅ…寒っ…
さすが北海道…雪がすごい…
ひかる:ハァー、ハァー…ん?
街を歩いていると…
ひかる:綺麗…
大きな木にイルミネーションの装飾がされていた。
その周りにはカップルがいっぱいいた。
ひかる:いいなぁ…
私も彼氏が居たらここに来るんだろうな…
そんな想像をしてると、
何故か〇〇さんの顔が浮かんできた。
ここ最近、〇〇さんと仕事をしてるとドキドキする。
緊張というか…これは…
ひかる:私…〇〇さんのこと…好きなのかな…
ーー
〇ひ:かんぱーい!
ひかる:ゴクッゴクッぷはー!
〇〇:じゃんじゃん飲んじゃって!
今日は奢るから!
ひかる:いいんですか!?
〇〇:プチ忘年会ってことで!
ひかる:ありがとうございます!
〇〇:どう?
こっちの仕事も随分経つけど慣れた?
ひかる:はい。おかげさまで!
〇〇:よかった笑
俺、ここ来た時は1人だったからさ、
孤独だったんだよね笑
ひかる:私もすごい不安でした笑
〇〇:だよね笑
ひかる:でも〇〇さんのおかげで
1人じゃなかったです!
由依さんの言う通りでした!
〇〇:そっか…
あっ…
やっぱり由依さんとなんかあったのかな…
ひかる:…〇〇さん?
ひとつ聞いていいですか?
〇〇:ん?
ひかる:由依さんと…何かありました?
〇〇:え!?
ひかる:由依さんの話をする時、
なんか寂しそうな顔するので…
〇〇:あぁ、ごめんね!
別に大したことじゃないんだけど…
ひかる:?
〇〇:知ってるかわかんないけど、
小林って彼氏いるよな?
ひかる:あぁ、△△さんですよね?
〇〇:実はさ…
俺も小林のこと好きだったんだよね…
ひかる:えっ!?
〇〇:小林といると気を使わないって言うか…
居心地がよかった。
それで仕事を頑張って
一人前になったら告白するつもりだった。
ひかる:…
〇〇:そんな時にさ小林から相談があったんだ、
△△の事が好きだってね。
ひかる:!?
〇〇:それを聞いた時はすごいショックだったな…。
叶わぬ恋なんだって…。
ひかる:…。
〇〇:んでもって△△の方も
小林のことが気になってたみたい。
あいつもすごいいい奴だしさ。
だから俺は身を引いた。
その間には入れないって思ったからさ。
だから2人をくっつける為に必死にアシストしたさ笑
ひかる:そんなことが…。
〇〇:でもいざ2人が付き合ったらさ、
仕事のモチベーションみたいなのが
無かったんだよね。
そのタイミングで北海道の異動の話が出た。
2人を見てるのも気まずいから俺はそれを引き受けた。
ひかる:…。
〇〇:その時はまだ受け入れられなかったけど、
今は素直に応援してるよ…。
ごめんね?しんみりさせて。
ひかる:いえ…私が聞いたことなんで…。
〇〇:さぁ!この話はおしまい!
さぁて次は何飲もうかな〜
ひかる:あ、あの!
〇〇:?
ひかる:私、〇〇さんには本当に感謝してるんです。
異動で不安だった私に親身になって教えてくれたり、プレゼンとかでフォロー入れてもらったり…
感謝してもしきれません!
〇〇:そんな大袈裟だよ笑
ひかる:それに最近気づいたんです。
〇〇:何に?
ひかる:私…〇〇さんのことが…好きです!
〇〇:え!?
ひかる:仕事が上手くいったらすごい褒めてくれる。それが嬉しくてもっと頑張ろって思えたんです!
もっと〇〇さんと居たいって!
〇〇:…。
ひかる:〇〇さんの隣…私じゃだめですか?
〇〇:…森田さん?
ひかる:はい?
〇〇:こないださ、札幌の雪祭りの前を
通りかかったんだよね。
周りにはカップルがいっぱいいてさ。
ひかる:はい…
〇〇:それを見てて頭にさ…
森田さんが出て来たんだよね。
ひかる:え!?
〇〇:だからさいつか行きたいと
思ったんだよね。
雪が積もる頃に、森田さんと。
ひかる:それって…
〇〇:森田ひかるさん、
これからは僕の隣に居てくれますか?
ひかる:はい!
ーー
パパパーン
〇〇さんと付き合って半年後、
由依さんと△△さんの結婚式に来ていた。
ひかる:由依さんおめでとうございます!
すっごい綺麗です!
由依:ありがとう!
ひかる:いいな〜
由依:ひかるもそのうち着れるでしょ?
〇〇の隣で笑
ひかる:着れるんでしょうか…。
由依:こないだ電話で少し話したけど
ほぼ惚気話だったよ笑
ひかる:そうなんですか!?
由依:うん。もうベタ惚れだってさ笑
ひかる:///
ーー
神父:汝は相手を…
ひかる:すごい綺麗ですよね…。
〇〇:な。2人はほんとお似合いだよ。
ひかる:まだ由依さんに未練あります?
〇〇:まさか笑 今はひかるだけだよ。
ひかる:///
〇〇:言わせといて照れるな笑
ひかる:私も…大好きです///
〇〇:お、おう///
ひかる:〇〇さんだって照れてるじゃないですか!
〇〇:う、うるさい!ほら!
ブーケトスだってよ!
結婚式の集合写真。
〇〇さんの隣には…
花束を持った私が笑顔で写っていた。
Fin
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