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もしも…入院先の看護師がラーメン好きだったら…




〇〇:いちま〜い、にま〜い…

あ〜なんて暇なんだ。

こんな時はどっか出かけたいな〜

でも出来ないんだ。なぜかって?

だってここ、病室のベッドの上だぜ?

会社に向かう途中、目の前の交差点で
子供が車に轢かれそうだった。

車のドライバーも気づいてブレーキを踏んでいたが
間に合わなそうだった。

危ないっ!って思って俺はその子供を突き飛ばした。

そこまでは良かったけど止まりきれなかった車が
〇大ラグビー部よろしくハードなタックルを
決めて来た。

そのせいで左腕と左脚がボキってなった。

〇〇:さんま〜い、よんま〜い。

お陰で今は病室のベッドから見える木に
生えている葉っぱを数える生活になった。

〇〇:はぁ〜…

コンコン

??:失礼しま〜す。

〇〇:はーい。

??:お加減はどうですか〜?

〇〇:そこの木の葉っぱを
数えるくらいには元気です。

??:あはは笑
めっちゃ元気ですね笑

この女性は看護師の的野美青さん。
ものすっごい美人だ。

美青:まぁ骨折ですからね〜

〇〇:気持ちは元気ですからね笑

美青:でも子供を助けたんですよね!
かっこいいじゃないですか!

〇〇:ありがとうございます//

美人に褒められて悪い気はしない。

あの子と〇大タックル決めて来た
あのドライバーにはお礼を言っとこう。

美青:はいっ!お食事です!

〇〇:はい…

骨折して入院して全く自由が効かないこの状態。
その上、この食事…

もういや…

〇〇:はぁ…

美青:あんまり美味しくないかもしれないですけど、早く食べないと治るものも治りませんからね!

〇〇:はい…

美青:〇〇さんって好きな食べ物ってなんですか?

〇〇:まぁ、ありきたりかもしれないけど
ラーメンですかね。

美青:えぇ!?ほんとですか!?

〇〇:そんな驚く?

美青:私もめっちゃ好きです!
よく同期の看護師の子と食べに行くんですよ♪

〇〇:へぇ〜。

プルプル

その時、的野さんの携帯が鳴った。

美青:はい、はい…わかりました。

ピッ

美青:じゃあ私行きますね!
お皿、後で取りに来まーす!

ガラガラ

そう言って的野さんは病室を出て行った。

--

翌日…

〇〇:ごま〜い、ろくま〜い…

コンコン

??:失礼しま〜す。

〇〇:は〜い。

ガラガラ

??:お食事ですよ〜。

的野さんとは違う看護師が入って来た。

〇〇:あれ?今日的野さんじゃないんですね?

??:今日美青ちゃんは非番なんです。
私は山下瞳月です!

〇〇:あぁ、よろしくお願いします。

瞳月:美青ちゃんに聞いたんですけど、
ラーメンが好きなんですか?

〇〇:えぇ、まぁ…

瞳月:ちなみによく行くお店ってあるんですか?

〇〇:よく行くのは…〇蘭かなぁ〜

瞳月:ほんまですか!?

〇〇:え。

瞳月:私と美青ちゃんもよく行くんですよ!

〇〇:へ〜

瞳月:あ!そうだ!
〇〇さんが退院したら一緒にいきましょうよ!

〇〇:え?

プルプル

瞳月:はい…わかりました。

ピッ

瞳月:じゃ、私は行きます!
〇蘭、約束ですよ〜!

ガラガラ

--


〇〇:ななま〜い、はちま〜い…

ガラガラ

美青:失礼しま〜す…

的野さんがやって来た。

美青:はい、お食事です。

心なしか的野さんのテンションが低い。

美青:〇〇さん。
私、怒ってます。

〇〇:え?

美青:どうして〇蘭好きなの
教えてくれなかったんですか!!

〇〇:え?え?

美青:しかも、退院したら一緒に行くって言ってたし…

〇〇:まぁ…

美青:〇〇さんは私の担当なのに!!

〇〇:えぇ…

プルプル

美青:はい…はい…わかりました。

ピッ

美青:じゃあ!私行きますから!!

バンッ!

的野さんは怒りながら病室を出て行った。

てか、電話何回鳴るんだよ。


--

〇〇:あ〜寝れね〜。

なぜ病院の消灯時間はこんなに早いんだろう。

健全な日本男児はこんな時間で寝れる訳ないだろう。

〇〇:昼は葉っぱ数えて夜はひつじを数えるのか…

ガラガラ

美青:〇〇さ〜ん…

〇〇:え?的野さん?

通常この時間は呼び出さない限り看護師さんはやって来ない。

それに的野さんは私服だ。

美青:ふふっ笑 こんばんわ!

〇〇:ど、どうしたんですか?

美青:私、やっぱり許せないんです。
〇〇さんが私より先に瞳月とお出かけするのが。

〇〇:はぁ…

美青:それで…
こうやって忍び込んで
先に"既成事実"を作っちゃおうと…

〇〇:へ?

美青:病院側には内緒ですよ?
だから音立てちゃだめですからね?

〇〇:へ?へ?

き、既成事実?
それってつまり、
これから俺と的野さんで🤬🤬🤬するってこと!?

〇〇:ま、的野さん…それは流石にまずいんじゃ…

美青:それはわかってますよ?
でもそれはそれで燃えません?

あーだめだ。
もう完全にヤる気だわ…

〇〇:で、でも…

美青:はいっ!これ〇〇さんの分です!

〇〇:え?

美青:〇蘭のカップラーメンですっ!
私の貴重なストックから持って来たんですよ〜。

〇〇:え?え?

美青:〇〇さんもきっと恋しいでしょうし…

〇〇:え、あ、いや…

美青:早速作りますね!

な、なんか…想像してるものが違った…

美青:はいっ!出来ました!

あれよあれよとカップラーメンが出来上がった。

美青:それじゃ…いただきます!

ズズッ…

美青:ん〜!!美味しっ!!
ほら、早く食べないと伸びちゃいますよ?

〇〇:え、あぁ、はい…

ズズッ…

〇〇:ん!うまいっ!

美青:ですよね〜!

久しぶりの好物…
きっと的野さんは純粋に食べせてくれたのだろう。

数分前の自分を市中引回しの上打首獄門にしたい。

パシャッ📷

〇〇:ん?写真?

的野さんがスマホをこちらに向けていた。

美青:こ、これはあ、あれです!
瞳月に先に一緒に食べたって言う証拠の為です!

〇〇:え、あぁ…

そーいや、既成事実を作る為だったっけ。

美青:えへへ〜…

それにしてもなんか嬉しそうだった。

--

〇〇:はぁ…はぁ…

あの深夜のカップラーメンから数日後…

脚もなんとか動くようになり、
今はリハビリでルームランナーの上だ。

美青:はい、じゃあもう少し速度あげますね〜。

ピッピッ

〇〇:え、あ、ちょっと!!

美青:〇蘭に行くには体力つけないとですよ〜!

〇〇:そんな過酷じゃないでしょ!!

美青:頑張れ〜!!

〇〇:う、うぉぉぉぉぉぉ!!

美女の応援はそれだけでありがたい。

男ってほんと単純だ。

--


そして退院の日…

美青:うっ…うっ…寂しいですぅ…

〇〇:あはは〜…

的野さんは片付けを手伝ってくれている間、
ずっと泣きじゃくっていた。

美青:うっ…せっかく…ここで一夜を共にしたのに…

うん、その言い方は語弊があるね。

美青:また一緒に…ラーメン食べたい…

〇〇:ま、まぁまた一緒に食べれますって…

美青:うっ…ほんと?🥺

〇〇:は、はい…

プルプル

美青:はい…わかりました。

ピッ

ほんと、どんだけ電話なるのよ…

美青:すみません…呼ばれちゃったのでいきますね…

〇〇:はい…お世話になりました。

美青:はい…それじゃ…

的野さんはトボトボと病室を出ていく…

美青:あ!

と思ったら綺麗にターンを決めて戻って来た。

美青:〇〇さん!!

的野さんは俺の手に紙を握らせて来た。

美青:これ、私の連絡先です!
ラーメンのお誘い待ってます!!

〇〇:は、はい…

美青:それと…

チュッ

〇〇:ふぇっ!?

美青:私が食べたいのはラーメンだけじゃなくて…


"〇〇さんかもね?"


--

退院後、俺は的野さんに連絡を取った。


無事、ラーメンを食べて食べられました。


めでたし、めでたし。



Fin

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