駆け抜ける坂道 2nd stage ーSector22-
2nd stage ーSector22-〈信頼と勇気〉
ブーン…
ブン、キャァァァァァ…
〇〇:速い…セミプロって言うけど
プロでも通用するだろ。
ブーン…
〇〇:でも離される訳にはいかない…
ブーン…
美月:しっかりついてくるね…
ブン、キャァァァァァ…
美月:でも負ける訳にはいかない!
ブーン…
--
ひかる:霧…晴れないね。
保乃:なんなら少しずつ濃くなってるな。
土生:こんな中バトルってちょっと怖いですよね。
保乃:でも2台ともフォグランプ付いてたで?
大丈夫ちゃう?
ひかる:それでも全開はキツいね。
--
祐希:美月大丈夫かな…
美波:まぁ、大丈夫でしょ。
この時期、この峠の霧は珍しくないしかなり走ってるからね。
祐希:86くんはどうなんだろう…
美波:わかんない。
でも、ただで終わるわけではないと思う。
--
ブーン…
〇〇:速いけど…ペースはかなり落としてるな…
この霧だから仕方ないか。
ブン、キャァァァァァ
美月:ペースを上げられない…
こりゃ長期戦か再試合かな…
--
由依:峠を走る時、誰でも100%では行けない。
ひかる:確かに…
対向車が来るかもしれないですからね。
由依:でも経験次第で
それを100に近づけることは出来る。
保乃:なるほど…
由依:腕はともかくもう一つ必要な要素が
あるけど何か分かる?
ひかる:ん〜
保乃:腕以外だと…
土生:あ!心ですか?
由依:そう。
対向車が来るかもとかそう言った
恐怖心が本能的にブレーキをかける。
保乃:ホームじゃないコース、その上この霧。
こりゃ厳しいな…
土生:せめてコーナーの先が
どうなってるかわかればなぁ〜
--
美波:どんどん濃くなってるね。
祐希:もう下の方見えないよ。
美波:これじゃブラインドコーナーに
立たせてるマーシャルが見えないな…
祐希:事故らないように祈ろう。
--
ブーン…
美月:また霧が濃くなってきた…
ブン、キャァァァァァ…
美月:どんどんペースが落ちてる。
ブーン…
美月:86も離されずについてくる…
とりあえず耐えないと!
ブーン…
〇〇:もう前がかなり見えなくなってきてる…
ブン、キャァァァァァ…
〇〇:かなり集中しないと、ワンミスでドカンだな。
ブーン…
〇〇:Zの方も苦しいはず。
こっちが苦しい時は向こうも同じだ!
ブーン…
--
ひかる:もうすぐ半分かな。
保乃:あそこのストレートも
この霧だと全開は怖いなぁ。
ひかる:この峠、ただでさえ全開で走れる
長いストレートはあそこしかないのにね。
保乃:後ろからの追い抜きは無理に等しいな。
土生:…あれ?ゆっかーは?
ひかる:そう言えば…
保乃:バトル始まる少し前から見てへんなぁ。
由依:ゆっかーは今、〇〇くんが
考えた作戦を手伝って貰ってる。
土生:作戦?
--
ブーン…
友香:近づいて来てる…
友香は峠の中間地点にある、ストレートの脇にいた。
友香:あの感じだと2台もつれてるのかな…
ブン、キャァァァァァ…
友香:でも、私が見るのはこのコースの先。
タイミングを見逃さないようにしないと…。
友香はスマホを握りしめてコーナーの先を見つめた。
--
ひかる:〇〇くんの考えた作戦ってなんですか?
由依:さっき恐怖心の話をしたよね?
今その恐怖心を取り除く為にゆっかーは動いてる。
保乃:恐怖心を取り除く?
由依:その方法はね…
--
ブーン…
美月:この先は折り返し…
あのストレートで離せるかな…
ブーン…
美月:せっかくパワー上げても、
これじゃ意味ないもんね…
ブン、キャァァァァァ…
〇〇:この次のコーナーを抜ければ、
あのストレートだ…
ブーン…
プルルルル…
〇〇:!?よし!!
--
由依:ゆっかーは今、中間地点の
ストレートのとこにいる。
そしてその先の対向車を確認してる。
ひかる:対向車を?
由依:あのストレートの手前は
ほぼターンするくらいのコーナー。
前は晴れてても全く見えない。
保乃:確かに…。
由依:立ち上がってまず気にするのは対向車。
霧で前が見えない状態で全開にするのは
かなりの勇気がいる。
今ゆっかーは〇〇くんにとっての"勇気"になってる。
土生:勇気?
--
ブン、キャァァァァァ…
美月:!?
美月が折り返しのコーナーを立ちあがる。
美月:前が…見えない!!
その先は霧が濃すぎて前が全く見えなくなっていた。
美月:くっ!?仕方ない…
ブーン…
美月は対向車が来てもいいように左側により、
ペースを落とした。
美月:流石に追い抜きは…
ブーン…
美月:えっ!?
〇〇:いっけぇ!!!
〇〇は美月が空けた右側を全開で走った。
〇〇:ナイス友香!!ジャストタイミング!!
美月:恐怖心ってものは無いの!?
〇〇は美月を抜いて前に出た。
美月:なんで…
前が見えないのに全開で行けるのよ!!
--
ひかる:先の情報を着信有り無しで伝えるって…
保乃:一歩間違えれば負けるどころか大事故やで?
由依:そこはお互いの信頼関係によるものだね。
正直、霧じゃないとこの作戦は通用しない。
運が味方してくれたね。
--
ブーン…
〇〇:このまま最後まで突っ走る!!
ブン、キャァァァァァ…
美月:負けた…すごいな、私にはあんな事出来ない…
ブーン…
--
〇〇:ありがとうございました!
美月:こちらこそ!
でもよくあそこで全開にできたね。
〇〇:道路脇に仲間を立たせて対向車が来なかったら着信を入れてもらうようにしてたんです。
美月:あったまいいね〜。
〇〇:…正直、今日が霧じゃなかったら勝てなかったと思います。
それくらいに上手かったです。
美月:それは分からないよ。
実際抜かれたあともジリジリ離されたからね。
〇〇:山下さんもプロになるんですか?
美月:なる。なってみせる。
目標にしてる人がいるからね。
〇〇:そうですか。
美月:〇〇くんも絶対プロになってね?
リベンジするから!!
〇〇:はい!
美月:よしっ!じゃあ頂上に戻ろう!
Next Sector…
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