見出し画像

駆け抜ける坂道 Sector9

駆け抜ける坂道 Sector9<刹那>



森田:そろそろ半分を過ぎたところかな…。


菅井:神本くん…。大丈夫かな…。


田村:多分そろそろかな…。由依さんが仕掛けに来る…。

菅井:えっ!?

田村:あそこはコーナーが右左と連続するところ…。
   由依さんが○○くんの“弱点”に気づいてるなら…
   そこで勝負に来る。

菅井:神本くんの“弱点”…?

――

○○:さっきまでの気配とは違う…。何か来る!!


小林:狙うは…右!

右コーナーに差し掛かる前に2台が並ぶ。

○○:なに!?

ブレーキングで小林が前に出る。

小林:よし!

○○:しまった!!

コーナー立ち上がる頃には小林の車が
5メートルほど前にいた。

○○:あっさり前に行かれた…。

小林:君の“弱点”はそこだよ!

――

プルルルル

ピッ


理佐:もしもし?

理佐後輩:理佐さん!
     今複合コーナーのあたりにいるんですけど。

理佐:なんかあったの?

理佐後輩:今由依さんが前に出ました!

理佐:ほんと!?

理佐後輩:はい!そのままじりじりと離していってます!

理佐:わかった。ありがとう。

ピッ


天 :由依さん、前に出たね!

理佐:うん!これで作戦通り!

――

田村:抜かれたか…。

菅井:神本くんが…。

森田:あっさり…。

田村:やっぱり見逃してくれへんかったか…。

菅井:あの…さっき言ってた、神本くんの“弱点”って…。

田村:それはな…“右コーナー”や。

菅井:“右コーナー”?

田村:右コーナー全部ってわけじゃないで。
   私が言ってるのは先が見えない右コーナーの事。

菅井:なんでそこが弱点になるんです?

田村:センターラインの右側って言うのは
   普通対向車が来るからな。
   誰でも100%では行けない。
   でも経験や熟練度で100%に
   近づけることはできる…。

森田:○○くんもそれはわかっていたはずだけど…
   やっぱり経験の差が出たね。

田村:でもそれだけじゃない。
   由依さんの神がかり的なドラテクが
   あったからこそできた芸当。
   一発で決めるなんて…。

土生:これで戦況は一気に不利…。

菅井:でも神本くんなら勝てる!!

田村:ふふっ笑 ゆっかーはほんまに○○くんのこと
   好きやな~。

菅井:えっ、いや、その~///

田村:まぁでもそやな!○○くんはこのままで
   おわらへん!

――

小林:よし!このまま突き放す!

○○:くそっ…!右が甘くなるのはわかってたけど
   あっさり抜かれた…。

2台は10メートルほどの差のまま3/4を
終えようとしている。

――

ピッ

天 :お姉ちゃん。今どうなってる?

理佐:差は広がってない見たい。
   むしろ縮まってるらしい。

天 :どういうこと?

理佐:わからない…。何が起こってるの?


――

菅井:縮まってる?

森田:うん。今後輩から連絡があって、そういってたよ。

田村:なるほどね…。

菅井:どういうことですか?

田村:ここからが○○くんの本領発揮や!

――

小林:追いついてきてる…。
   さっきよりペースは上がってるのに…。

2台の差は5メートルくらいまで縮まっていた。

小林:なんで?作戦は完璧だったはず…。

○○:なんでだろう…。
   抜かれて焦るはずなのに不思議と集中できる…。

小林:焦っちゃダメ!とにかく集中しないと…。

――

森田:本領発揮って…保乃どういう事?

田村:○○くんはいつも私達と走る時、
   先行してる時よりも後追いの方がペースが速い。
   だから抜かれたことは
   マイナスなことだけやないってこと。

森田:確かに…。

田村:しかも…由依さんが抜いたタイミングが
   すこし早い気がすんねん。
   その場合、○○くんは抜かれたってことから
   立ち直る余裕ができる。

菅井:てことは神本くんにもまだチャンスは…。

田村:まだあるで!なにより○○くん本人が
   諦めてへんやろうからな!

――

○○:なんだろう…。集中できてるとはいえ、
   差が詰まってるのなんでだ?

ズルッ…

小林:くっ…!

○○:タイヤか?

小林:きついな…。

○○:気のせいじゃない…。
   向こうのタイヤが滑ってきてる!

小林:前半の○○くんのラインのトレースが
   ここにきてタイヤに響いてきてる…!
   彼のタイヤは問題ないの!?

○○:幸いこっちのタイヤはまだ食いついてる…。
   どこかでまだチャンスはある!

小林:タイヤはどうしようもない…。
   とにかくこのまま逃げ切るしかない!

○○:あれ…やるか。ひかるさんの時やった
   立ち上がり重視のコーナリング。
   四駆相手に通用するかわからないけど
   やるしかない!

――

理佐:天?

天 :どうしたの?お姉ちゃん。

理佐:もしゆいぽんが負けたらどうなると思う?

天 :由依さんが負けるわけない!

理佐:私もそう思ってる。
   でも、始まる前のゆいぽんの顔…
   なんか引っかかるんだよね…。

天 :なんで?

理佐:なんかこう…覚悟を決めた?そんな感じの顔…。

天 ;覚悟?

理佐:ゆいぽんはチームを作りたいって言って
   そのドライバーになろうとしてた。
   でも○○くんを見てから少し変なんだよね…。

天 :まさか…。

理佐:とにかく…このバトル…
   ゆいぽんにとって大きいものになると思う…。

天 :…

――

3連ヘアピン前…。

小林:この3連ヘアピンを抜ければゴールは近い…。
   なんとか耐えて!インプレッサ!

○○:勝負は最終コーナーの一個手前…。
   そのためにはこの3連ヘアピンで
   ピッタリ張り付かないと!

○○は立ち上がり重視でコーナーをクリアしていく。

小林:さすがにキツイ!もうちょっとだから!

3連ヘアピンの最後…。

○○:たのむぜ86!!お前が頼りなんだ!

コーナーの立ち上がりで小林に並ぶ○○。

小林:な、何!?

○○:いっけぇ!!!

最終コーナー一個手前。
○○はややオーバースピード気味で突っ込んでいく。
それのおかげで前にでる○○。

小林:オーバースピードだよ!曲がれっこない!

○○:曲がる!曲がってくれ!!俺の86!!!

小林:くっ!行けるか!?

ギリギリのところでコーナーをクリアしていく…

――

ブーン…

理佐後輩:きたぞ!!

後輩の目に先に飛び込んできたのは86だった。

理佐後輩:そんな由依さんが…。

――

ピッ

理佐:ゆいぽんが…負けた…。不敗神話が崩れた…。

天 :由依さん…。

――

森田:やった―――!○○くんが勝った!!

土生:よかったね!ゆっかー!!

菅井:だから言ったでしょ?勝つって!!

土生:なんでゆっかーがどや顔するの?笑

田村:まぁよかったな!私達も下るで!

菅井:はい!


Next Sector…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?