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フランクフルト焼いてください


『フランクフルトを焼いてくれませんか?』というあの時の言葉があったからこそ、私は今の生活があります。
また、見失いかけていた大切なことを思い出させてくれたのもこのフランクフルトがきっかけでした。

数年前、当時勤めていたサービス付き高齢者向け住宅(この記事内では以下「施設」とよばせて頂きます)においての夏のすごく暑かった頃のお話です。

恒例イベント「納涼祭」の準備期間の頃でした。

この施設では納涼祭が毎年行われており、屋台風の模擬店を出店したり、「花笠音頭」等を踊って頂いたりして入居されている高齢者様に夏祭りの雰囲気を楽しんで頂いておりました。



✅突然の依頼…からの気づき

介護の施設では一般的に、介護職員は入居者様のお手伝いをするため、入居者様のお部屋や浴室や食堂などの「現場」にいることが多いです。
それに対し、施設長や相談員やケアマネージャー等はデスクワークがあるため、事務所内での勤務が大半です。

私はこの時は施設長として勤務しておりましたので事務所内にいることが多かったのですが、今思えば当時は様々な業務を担っていたこともあり、事務所内でピリピリ感を醸し出してしまっていたことと思います。私の器量不足に他なりません😖

この頃の私は、おそらく話し掛けにくい存在であったかと思います。きっと周囲の人たちに余計な気遣いをさせてしまっていたであろうことを今更ながら反省しております。

8月のある日、私はいつものように事務所内で仕事をしておりましたところ、女性の介護職員が事務所に入ってきて私に話し掛けてきてくれました。

『ぴーすちさん、今回の納涼祭でフランクフルトを焼く係をやっていただけませんか?』との依頼でした。

前年の「納涼祭」で私は、最初と最後にご挨拶だけさせて頂き、他のタスクは全てお任せしてしまっていました。
入居者様と一緒の時間をほんの少しだけ過ごさせて頂き、事務所に戻って通常時の業務を行ったりしていたのです。

そのため今回も「ご挨拶だけ」と勝手に決めつけていたこともあり、私の中でフランクフルト係をやるというのは想定外のことではありました。

しかし、よくよく考えてみましたら、施設長になってからは入居者様と直接接することが極端に少なくなっておりましたし、介護職員の皆さんとのコミュニケーションの機会も限られたごく少ない時間しかなかった、ということに気付きました。

職種ごとの役割もありますので、施設長が常に入居者様と接することは現実的ではないかと思います。
しかし、少しでも入居者様と関わることによって見えてくることもありますので、貴重な機会だと思っておりました。
しかしそのように思ってはいても、業務の忙しさを理由にやってこなかったのが事実でした…。

職員間のコミュニケーションにつきましても、朝礼や夕礼や会議の機会はあるのですが、その時間は結果的に「申し送り」になってしまっていることが多く、決して双方向のコミュニケーションは十分には取れておりませんでした。

もちろん日頃から各部署のリーダークラスの職員とミーティングをしていたことから色々な情報が入ってくるので助けれられていましたが、直接に自分自身が現場で見聞きすることが出来ておりませんでした…。

当時の私は管理職であったことから、数字とにらめっこしたり資料作成の業務が多くなっておりました。
目標とされる数字を達成することに注力する必要がありますので稼働率や収支額等の管理業務はもちろんのこと、訪問営業活動も行いました。
その他にも、採用活動や勤怠管理等の人事関係業務や、各種会議も頻回にあるため、頭の中が常に混沌としてしまっており、朝出勤したら気がつくと夜になっているというくらいの業務量だったと記憶しています。

そのことを理由に大切なことをおざなりにしてきてしまったのです…。
お客様や職員のことを知ろうとしなかったのです。

ただ、この時の経験は本当に貴重な財産だと思っています。
自分自身の事業を立ち上げ運営するにあたりましては、まだまだ不十分ではありますが、これらの経験は何一つ無駄ではなかったのだと身にしみて感じています。


✅焼かせてください!

現場を知らなくても管理者業務は行えるのかもしれませんが、「全くもって知らない」ということは私にとってNGであることにこのタイミングで気付きました。

入居者様とも職員とも触れ合えるし、これはやるしかない!

と目覚めたのです。
フランクフルトを焼きたくなりました。

納涼祭当日に向けて、打ち合わせのためのミーティングにも参加させてもらいました。
施設長が参加することにより余計な気遣いをさせてはならないと思いましたが、一緒にジュースを飲んだりプリンを食べたりしながら楽しく打ち合わせができました!心の距離が縮まった気がしました。
職員同士の関係性も垣間見えたりするので、現場を知る上でも貴重でした。


✅納涼祭当日

みんなで協力しながら、朝からフランクフルト、お好み焼き、焼きそばを作るための準備に取り組みました。材料の準備や炭火起こしの準備を一緒に取り組むことで、職員との会話が自然体になってきた気がしました。

そして焼き上がったフランクフルトを入居者様と一緒に食べたりしながら美味しく楽しく過ごさせて頂きました。

お一人お一人個別にお話をさせて頂くことができ、色々と聞かせて頂けました。施設への入居が決まり思い出のつまったご自宅とお別れする際のことや、戦争時のことや、教科書にはない歴史のことなど、後世に語り継ぎたいと思った貴重な内容が盛りだくさんでした!

もちろん、施設へのご意見やご感想などの生のお声もたくさんお寄せ頂けましたので、事業所として有益な情報も得ることができました。

☑️職員との心の距離が近くなった気がしました
 →対話の機会が増えました
☑️入居者様の生のお声を聴くことができました
 →業務改善につながりました


このように、短時間であっても、face to faceという直接のコミュニケーションから得られることの大切さを改めて認識できました。


現在におきましては感染対策の観点からも、上記のような直接的なコミュニケーションの機会は当時と比べて少なくなっているかもしれません。


✅会議室ではなく現場?

この経験もあり、当事者と直接のコミュニケーションを取り要望を正確に汲み取るようにし、或いは、隠れているニーズを引き出した上で的を得た対応を心掛ける、という考え方が仕事上の基本スタンスとなりました(まだまだ未熟なため、的を外してしまっていることも多々あるかと思いますので頑張ります😓)。

このことは当たり前のことではあるかもしれませんが、当時の私は忙しさにかまけてこのことがズバっと抜け落ちてしまっていたのです。

今は施設から離れた業務をしておりますが、デスク上で考えることももちろん重要ですが、現場からしか得られないものもあるかと思います。
このことを忘れないよう心掛けています。


✅クライアント

冒頭に登場しましたフランクフルトの依頼人クライアントの女性介護職員ですが、ご紹介が遅れてしまいましたが、この女性は私の妻になってくれた人物です。
当時はもちろん交際関係ではなく通常の同僚でした。特に仲が良かったわけでもなく、職場で会ったときに挨拶をする程度の間柄でした。

上司と部下という関係でしたが、フランクフルトが結びつけてくれたと思っています🍖


✅家族のはじまり

『フランクフルト焼いてくれませんか』をきっかけに妻と会話をするようになり、連絡先を交換してフランクフルトの焼き具合やケチャップの付け方について意思疎通を図ったりプチ反省会をしたりしました。
そこから仲良くなっていきました。

結婚を機に妻は退職しましたが、職場の皆さんから祝福してもらい、とても嬉しく思っています🧑👩

詳細にご紹介させて頂きますと長くなってしまいますのでここでは概略とさせて頂きます。

✅結びに

この時の「フランクフルト焼いてくれませんか」のおかげで仕事上においての価値観を体得できましたし、妻と結婚し大切な家族を得ることができました。

このことは一例に過ぎませんが、ちょっとした会話が仕事や日常生活に影響を与え、更には人生を左右し得るのだということを、フランクフルトを振り返ることにより考えられるようになりました。

家庭でもビジネスでも会話の機会はたくさんありますが、その一つ一つから何かが生み出されるのだと思うと、全てを大切にしなければならないのだと感じました。

私は、何かに取り組んでいる最中に会話をするときはついつい「ながら会話」になってしまう傾向があるので、一旦手を止めて丁寧に会話に向き合うよう気をつけようと思います。

最後までお読み頂きありがとうございました。
また次回もよろしくお願いします。



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ぴーすち
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