『ウェイトトレーニング勘違いあるある①』
スポーツパフォーマンスを向上させるために、ウエイトトレーニングはとても重要なトレーニングの一つです。
そして、その理論や方法は日々アップデートされており、
過去の常識とは真逆のことが、現在の常識であったりすることもあります。
アスレティックトレーナーという立場は、
ウエイトトレーニングに対する選手や指導者が持つ誤解や間違いを修正し、アップデートさせていく役割も担っています。
そこで今回は、現場で実際に遭遇したウエイトトレーニングに対する誤解や間違いを取り上げ、併せてそれに対して私が選手へ実践、提示していることを書いてみようと思います。
(今回と次回に分け、3つの誤解について書いていきます)
~その1~
ウエイトトレーニングをすると体が重くなり足が遅くなる?
昔から、ウエイトトレーニングをすると体重も増えてスピードが落ち、足が遅くなるという説があります。
過去にも選手から「そのような指導をされた」「今までウエイトトレーニングしたけど、そのような実感があったのでやりたくない」という声をかなり聞きました。
実感として足が遅くなったという選手が存在する。
では、ウェイトトレーニングが原因というのは真実なのでしょうか?
いいえ違います!
例えば、トップレベルでプレーするラグビー選手や短距離の陸上選手は筋骨隆々ですが足が遅いでしょうか?
いいえ、そうではありませんよね。
では、なぜ足が遅くなると実感した選手の声を聞くことが絶えないのでしょうか。それは、「トレーニングの方法」が間違っているからです!!
ウエイトトレーニングの目的は、大きく分けて下記の4つの要素があり、
競技やポジションの特性によって選択していきます。
①筋肉を大きくする(筋肥大)
②強い力をつける(筋力向上)
③瞬発力・スピードをつける(パワー向上)
④持久力をつける(筋持久力の向上)
足が遅くなるという選手の多くは、
①筋肥大、②筋力向上のトレーニングのみに集中している傾向があります。
つまり、①の胸がムキムキに大きくなった!脚が太くたくましくなった!と見掛けに満足したり、
②のベンチプレスが100㎏上がった!スクワットをあと10㎏上がるようにしたい!などの数値結果ばかりを求めてしまうケースです。
実は①と②のトレーニングを主として続ける弊害として「スピードの低下」があります。
スポーツにおいてスピードが低下するのは致命的な状態です。
なぜなら、多くのスポーツは走る、止まる、切り返す、ジャンプなどに求められる「パワー」が重要だからです。
「パワー」とは、
パワー = 力 × スピード
で表され、力(最大筋力)だけでなくスピードという要素はとても大事です。
では、足が遅くならないウエイトトレーニングとは・・・。
つまり、パワーを向上させるということですが、
私は選手に指導する際に、下記の1〜3のトレーニングを組み入れます。
1.最大筋力の約60%の重さで素早く上げる
例えばスクワットの最大筋力が100㎏の場合。
60㎏ぐらいの重さを一気に素早く上げます。
回数は3〜10回程度で3〜5セット。休憩時間は2分程度でしっかりと。
2.軽い重さでジャンプ
自重、又は軽めのダンベルを持ってのスクワットジャンプや、
ランジジャンプ(足を前後に開いた姿勢からジャンプし、空中で足を入れ替える)を10回程度。これを3〜5セット。
上半身を鍛える場合は腕立てジャンプが有効です。
難しい場合は膝つきで行ったり、余裕があれば足をベンチや壁にかけて行うなど負荷を調整すると良いです。
3.接地時間を短く連続ジャンプ
ミニハードルや低い馬跳びのようなジャンプを連続で行います。
その時、接地時間はなるべく短くするのがポイント。
このようなトレーニングをプライオメトリクスといいます。
障害物の高さが高すぎたり、間隔が開きすぎてしまうと、接地時間が長くなってしまうので注意が必要です。
これらのトレーニングを、筋肉を大きくし(筋肥大)、筋力を高めた(筋力向上)後に行うと足が遅くならないばかりか、パワーが向上し今まで以上の身体能力が身に付きます。
ウエイトトレーニングの目的である4つの要素のうち、自分の競技特性やポジションでは何を高めることが求められているのか。
その比重を間違わなければ、必ずパフォーマンス向上にウェイトトレーニングはプラスに作用します。
決して足が遅くなるということはありませんので、積極的に取り入れていきましょう!
次回は、ウェイトトレーニングに対する誤解に関して、ウェイトトレーニングの組み立て方と中学生や高校生のウエイトトレーニングについて書いていきます。
⇒次回(9/8)『ウェイトトレーニング勘違いあるある②』