World Coffee Research 新5ヵ年戦略④
こんにちは、ROUTEMAP COFFEE ROASTERSです。
こちらの記事で今回のテーマの最後となります。
今回のテーマでは、World Coffee Researchが公表した『新5ヵ年戦略』の内容を噛み砕きながら解説する内容となっております。
こちらの記事では、
について詳しく解説しています。
ホームページで掲載されている資料と併せて読む方がおすすめですので、ダウンロードされていない方はこちらからどうぞ。
8)WCRが提供するもの
8-1)一貫して取り組み続ける課題
WCRの生産技術面で重要としているポイントについては、WCR設立以来常に一貫しています。
それは、分子レベルからの改良に取り組み品質や生産性を向上させること、それにより農家の収益性を高めること、そして気候変動によって受けた被害に対応し、回復する力を強化することです。
WCRがコーヒー生産者に提供するシステム(=農業イノベーションへのパイプライン)は、品種改良から実地試験、種苗床、種子の流通市場へのアクセスに至るまでに及び、各システムに数年かけて農園が品種改良に対応できるような土台環境を整えていきます。
これらを踏まえ、WCRはこの5ヵ年戦略を通じて今後も農業関連の技術や実践的知識の開発の方向性を定め、農業イノベーションを推進するために必要となるグローバルネットワークの発展を最優先事項とし、取り組んでいきます。
8-2)新品種の創出
WCRは将来の生産システムの課題や機会を視野に入れながら、次のような新品種の創出を目指します。
・焙煎業者や消費者にとってより高品質な品種
=事業者と消費者、双方のニーズに応えるクオリティ、ユニークさを有する品種
・農家の収益性を高める品種
=生産のリスクやコストが低く、毎年同じクオリティを生み出せる品種
・気候変動回復力を備えた品種
=これからも続く異常気象によって受ける影響(病害虫も含む)に耐性があり、かつカップクオリティが高い品種
9)農業研究開発が与えるそれぞれの影響
9-1)コーヒー農業への大きな影響
WCRは農業研究開発への投資を行い、研究報告などを通じてコーヒー農業への投資を提唱しています。
これまで、コーヒー農業が現下に陥っている危機と、改善されることで現れるコーヒー農業の可能性について述べてきました。
この戦略を通じて行う役割や実際に取り組んでいる活動、その将来性についてもこの計画書からWCRが主張し続けているように、農業研究開発への投資は、コーヒー農家の経済的・環境的サスティナビリティと気候変動への対応力、生産力、そして品質の向上に大きく貢献します。
特に品種改良への投資は、こうした側面に大きな影響を与えるのです。
9-2)それぞれの影響について
①生産性の向上は、コーヒー農家の経済的サスティナビリティをどのように進展させるのか?
…農家がより少ない肥料・農薬の投与で毎年同じ量のコーヒーを生産できる場合、あるいは同じ投与でいつもより多くのコーヒーを生産できる場合には、農家の生産性は向上します。
コーヒーのようなコモディティ作物の場合、生産性の低い農家は低価格の環境下においてコストをカバーすることができず、それが負債の増加やコーヒー農業からの離脱につながる可能性が高いため、生産コストの削減、生産量の増加によって生産性が向上すると、そのまま所得の増加に直接関係することが多いのです。
②生産性の向上は、気候変動にどのように適応・緩和するのか?
…生産性の向上は、所得増の一因となり、それにより農家は貯蓄を増やしたり、他分野の経済活動や農業への投資を可能にします。それにより、気候関連の衝撃や混乱による負担を分散させ、影響を防ぐこともできます。
さらに、地域的・世界的規模で生産性が向上すれば、総じて少ない土地からより多くのコーヒーを生産することが可能となり、コーヒー農業の気候変動への重要な要因である土地の用途変更や森林破壊を回避することができるのです。
21世紀中に生産性を向上させるためには、炭素排出量を削減し、二酸化炭素の吸収に貢献する生産システムを理解することが重要です。
③品質の向上は、コーヒー産業の経済的サスティナビリティをどのように促進するのか?
…ある地域で改良された品種が広く生産された場合、それは地域の差別化に貢献する可能性があり、またその地域自体に『付加価値』がつくため、生産能力に劣る農家は価格改善の恩恵を受けることができます。
高品質の品種があれば、農家は市場のニーズがあると確信して栽培することができるのです。
それにより、収穫後の精製システムが確立され始めるといった状況が生まれ、商品のさらなる差別化が可能となります。
④品種改良は、経済・環境的サスティナビリティにどのように大きな影響を与えるのか?
…コーヒー輸出が多額の輸出歳入を生み出す低所得国や下位中所得国にとって、コーヒーがビジネスチャンスの創出に大きく貢献する可能性があります。
つまり、農業イノベーションによって与える影響は、小規模農家の多い低所得生産国において最大となります。
これらの国には、コーヒー生産を中心に利益を得て生計を立てる農家もいれば、コーヒー生産を諦め、他の収入源を求めるかの判断に迫られている農家など、さまざまな状況におかれている小規模農家が多く存在しています。
今後の10~15年間にコーヒー生産国の多くにおいて経済構造の転換が予想されることを考えると、コーヒー農業を堅固なものにし、かつ農家にとって商業的に魅力のある選択肢にすることが重要となるのです。
そのために、国レベルでの品種改良プログラムを強化し、新しく、より生産的な、気候変動に対応力のある品種を生み出すことが現下の最重要課題です。
それは、これらのコーヒー業界の長期的なサステナビリティの確立にとっても重要であります。
⑤品種改良が、経済的・環境的サスティナビリティに大きく影響する最良の投資であるのはなぜか?
…WCRのような世界的な組織にとって、品種開発への投資が最も戦略的な投資であるのは間違いありません。
第一に、資源の少ない農家にとって農作物の品種というものは、干ばつや高温、病気などによるストレスへの耐性を高めるための重要な資源です。
改良された品種(病虫害への抵抗特性を持つものなど)により、他の経営的戦略が実践できない農家は自分の作物を守ることができるようになります。
さらに品種は、農家が生産性の向上を通じて成功し、その成功を維持するための重要な一助となるのです。
さらに品種は、多くの生産地域において高収量と安定的なパフォーマンスをもたらす可能性があり、特定の地域に限定することなく生産国全体に展開することができます。
経営状態を最適化した後のコーヒー生産を持続的なものにするには、改良によって生み出された新しい品種によって達成されます。
しかし、品種の開発は10〜30年を要する取り組みであるため、コーヒー生産国にとっては、将来の競争力やサステナビリティを確実にするために、より強力な品種改良のパイプラインを構築することが急務となります。
WCRは、業界の農業研究開発投資の価値を保証するために、他の作物で実証済みの、実績のあるツールや手法を用いてコーヒーの品種改良の進展を加速させます。
⑥インクルーシブデザイン(包括的設計)は、“農家の多様性にとってイノベーションが重要であり、生産に価値をもたらすということ”を、どのように保証するのか?
コーヒーを栽培する人と豆を焙煎する人の意見を取り入れて設計され、改良された品種は、両方のエンドユーザーに価値と利益をもたらす可能性がかなり高いといえます。
また、インクルーシブデザインは、信頼や安定性にもつながります。
農家がある品種について買い手のニーズがあることを知っており、かつ、その品種が農家のニーズを満たすことを買い手が知っている場合には、双方が安心感を抱いた状態で取引が行われる可能性が高いからなのです。
これにより、農業イノベーションの重要性が保証されます。
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かなりのボリュームになってしまいましたが、以上がWorld Coffee Researchが提唱した2021年〜2025年のコーヒー5ヵ年戦略の計画になります。
この計画が折り返しとなった現在から、今後コーヒー産業はどのように発展していくのでしょうか。
引き続きWorld Coffee Reseachのレポートをチェックし、多くの方に読んでいただけますよう要約と解説をこちらで行なっていきたいと思います。
これからのコーヒー産業が良い未来になっていくことを願い、コーヒー業界全体にどう貢献していくべきなのかを、日本のコーヒーショップとしてともに考え、共有していきたいと思います。
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