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コーヒーのサプライチェーン③…C-Marketについて[コーヒーの生産コスト]
こんにちは、ROUTEMAP COFFEE ROASTERSです。
引き続き「コーヒーのサプライチェーン」について。
前回は【C-Market】の「コモディティ」と「先物取引」、そして「買い手主導」による取引の生産者側の影響について書きました。
生産コストを考慮されない取引価格と、長年続くC-Market取引価格の低水準により、小規模コーヒー生産者は毎年厳しい状況の中でコーヒーを育て、世界各国に流通させています。
今回の内容では具体的に、「コーヒーを生産するのに必要なコスト」を内訳から解説し紹介して、現在のC-Market価格と比較してみようと思います。
内容が内容だけになかなか読みづらくなってきていますが、世界各国のコーヒー関連記事で発信された内容をもとに情報をさらに精査し、まとめ上げています。
非常に有益、かつ、今後のコーヒー産業の発展につながる内容となっているはずです…ので、どうぞお付き合いくださいませ。。。🙇♂️
3)コーヒーの生産コストと取引価格の比較
生産コストを考慮されないまま買い手主導で取引されるコーヒー豆。
では実際、コーヒーを生産するのに、一体どれほどのコストが必要なのでしょうか?
C-Marketで取引されている価格と比べ、コーヒー生産者にどれほどの負担がかかっているのか、調べてみました。
3-①)コーヒーの生産コスト内訳
中南米を中心に活動するコーヒーインポーターCaravela Coffeeは、コーヒーの生産に必要なコストの内訳を以下の項目の通りに挙げています。
①Adiministraition Cost/管理コスト…病害虫などの農園管理、土壌開発費
②Harvesting Cost/収穫コスト…コーヒーチェリーの収穫にかかる費用
③Other Labor Cost/その他人件費(施肥、販売プランニング)
④Input Cost/設備のアップグレード
⑤Other Cost/減価償却費など
⑥Planting Renovation Cost/コーヒー栽培にかけるコスト
以上の項目を足し合わせ、「その年のコーヒーチェリー収穫量」で割ることで、コーヒーチェリーの「生産コスト」が計算できます。
(画像引用:Perfect Daily Grind/Examining coffee production costs across Latin America)
大規模農園ではチェリーを精製し、出荷するまでの工程を一貫して行うことが可能ですが、3〜5haあたりの小規模農園(東京ドーム1個分が4.7ha。1haあたりコーヒーの木が4500〜5500株栽培される)は、設備上限られた工程まで=「チェリーを収穫するまで」の量で生産コストを割り出すとされています。
現在ではコーヒーの需要に伴い、チェリーの栽培、収穫、精製、出荷などそれぞれのセクションでいろいろな方法が取り組まれ、応じてそこにかかるコストも様々となってきていますが、平均的な費用内訳は上の図のようなイメージとなります。
3-②)品質基準ごとの生産コスト
収穫されたコーヒーは、バイヤーたちによりロットごとの品質を評価されます。クオリティは点数で評価され、基本的に85点以上のロットは最高品質として評価され、取引されます。
(写真はグアテマラ、サンタクララ農園にて、実際のクオリティチェックの様子。この日は多分40〜50カップくらい味をみたような…)
近年スペシャルティコーヒーの普及から、多くの農園でコーヒーの品質向上を目的としたリノベーションが行われています。
その取り組みには、設備投資、土壌の改善/開発、コーヒーの品種開発、栽培、そしてチェリーの精製方法にも新しい技術が導入されています。当然、品質向上に応じていく分、投資にかかる費用もだんだんと高額になっていきます。
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コロンビアのHuila地方にあるコーヒー農園Finca Los Angelesでは、コーヒー1lbあたりの収入は約2.5USドル。1kgあたりで約5.5USドルの収入が得られます。
しかし、「Collaborative Coffee Source」の2017年〜2018年調査によると、世界の70%は最高品質基準(スペシャルティコーヒーとして流通されるもの)を満たしているが、それらの品質を生産するのにかかるコストは約1.55USドル/lb(約3.42USドル/kg)。
基準を満たしていない30%のコーヒーを生産するのにも、0.95〜1.27USドル/lb(約2.1〜2.8USドル/kg)コストがかかると言われています。
先ほど例に挙げたコロンビアのFinca Los Angelesにおける収穫量に対する利益は、最高品質基準のコーヒーを毎年栽培したとしても、生産コストに対し半分以下の利益しか得られないのです。
また、コーヒーを生産する国ごとで為替レート、そして土地、栽培土壌、流通などの栽培環境が異なるため、コーヒーの生産にかかるコストは大きく変わります。
例えば、中南米のエクアドルで栽培されるコーヒーの生産コストは平均1.73USドル/lb(3.82USドル/kg)ですが、同じ中南米の国ニカラグアでは0.95USドル/lb(2.10USドル/kg)と、1lbあたりで約0.8ドルの差があるのです。
(※90点を超えるクオリティだと、1kgあたり平均13.5〜15.0USドルものコストがかかると言われています。)
以前「先物取引」について書いた記事から、この利益率を見てみると、コーヒーを生産することがいかに生産者の生活に不安定さをもたらしているか、実感できると思います。
3-③)Caravela Coffee によるラテンアメリカ(中南米地域)のコーヒー農園生産コスト統計データ
Caravela Coffeeは、生産者が生産コストの詳細を把握していないという問題を解決するために、独自に統計アプリを開発し、中南米の主要6ヵ国(コロンビア、エクアドル、ニカラグア、ペルー、グアテマラ、エルサルバドル)でのコーヒー生産にかかるコストの統計データを算出しました。
前述したとおり、国ごとで為替レート、最低賃金、農園ごとの構造や生産方法の条件が異なるため、完全に正確なデータ計算はできないですが、Caravela Coffeeは、コーヒー生産に関する3つの仮定を立てました。
①)農園の規模は3haとする…1haあたりのコーヒーの木の株数は、エクアドルで最小4500株、コロンビアで5500株なので、その中間規模で設定。さらに3haという規模は、小規模農園の家族が生活するために必要な最低限の収穫範囲であるからとされます。
②)各農園では1haあたり25〜30袋分のコーヒーを収穫できるとする
③)各生産者は、毎年栽培面積を15%改修中であるとする…農園は常にその年の収穫エリアごとで栽培環境の様子を見ており、農園内の一定のスペースのコーヒーの木をケアすることで、毎年の収穫量を安定させているため。
そして、これらの条件を基に算出したデータがこちらです。
文字が小さくなってしまいすみません・・・
表のデータのコストガイドを各国ごとで以下のようにまとめました。
【データから読み取れる国別生産コストガイド】
○Colombia…管理費、収穫費がそれぞれ3分の1を占める。労働力不足や労働者の権利の変更が大きな影響を与える可能性があることを示している。○Ecuador…この中で最も生産コストが高く、中でも管理費が大きい割合を占める。 ○Nicaragua…生産コストがC-Marketの価格を下回っている。 ○Peru…収穫コストが最も高いが、実質的な支出はエクアドルよりも低い。○Guatemala…エクアドルについで生産コストが高い国。どのコストも他の国と比べ実質的な金額はどれも低くない。 ○El Salvador…生産国として比較的安価な国だが、リノベーション費、インフラにかかる費用はどの国よりも高い。
中米6ヵ国平均で生産コストは1lbに対し平均約1.35USドルとなります。
コストの割合では、管理費、収穫費などの人件費が大きな割合を占めていますが、国ごとの最低賃金水準(ニカラグアは最低賃金が比較的低水準なため、賃金の高いエクアドルでは人件費がより多きな影響を与える)や、弁護士費用、保険料などの公的費用なども要因として含まれることから、コーヒー生産にかかるコストの調整は、実際に生産者の手に負えないことが多いのです。
なお、Caravela Coffeeはこのデータを算出するアプリについて、「生産者はこのデータから自分たちが毎年どれくらいのコストをかけてコーヒーを生産し、生計を立てているのか。キャッシュフローの重要な部分を理解してもらうことが理想である」と述べています。さらにこのデータの結果について、「すべてのものにどれだけのコストがかかるのかを理解するだけでは不十分であり、具体的には、なぜそれが品質や収益性、持続性にどれだけ影響するのかを理解する必要がある」としています。
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では、現在のC-Marketの価格に対して、生産者にはどれほどの利益が還元されているのでしょうか?
コーヒーのサプライチェーン④へ続きます。
【コーヒーのサプライチェーン③まとめ】
○コーヒーの生産コスト内訳
→Caravela Coffeeによると、大まかに6項目に分けられる。
①Adiministraition Cost/管理コスト…病害虫などの農園管理、土壌開発費
②Harvesting Cost/収穫コスト…コーヒーチェリーの収穫にかかる費用
③Other Labor Cost/その他人件費(施肥、販売プランニング)
④Input Cost/設備のアップグレード
⑤Other Cost/減価償却費など
⑥Planting Renovation Cost/コーヒー栽培にかけるコスト
これらを足し合わせ、「その年のコーヒーの収穫量」で割ると、生産コストが計算できる。
○品質ごとで生産されるコーヒーのコストが異なる。
→良い評価を得るためにはそれなりのコストがかかり、利益にしたとしてもコストは収入分の半分以上かかる。
→栽培環境や流通、賃金などで各国のコスト/利益に差が出る。
○ラテンアメリカ地域の生産コスト統計
→6カ国平均で1lbあたり平均約1.35USドルの生産コストがかかる。
→主に大きな割合を占めるのは「管理費」と「収穫費」などの主要人件費である。
→しかし、どのコストも生産者が自身で調整できる領域ではない(保険料、弁護士費用、公的費用など)