2023 9/20 335 P.Uとクラクード
今日のVaz Lobo地区での師匠の稽古は、Uberも何もなかった昔のスタイルで、バスのみで行くことにした。
オールドスクールというやつだ。
とにかく交通費を節約するために、多少遠くても歩きで、お望みのバスが通るところまで行き、そこからなるべく1本で目的地まで行く。ひどい時は3時間近く乗る。
若い時だから出来た部分もある。
しかしながら街を知るにはこの方法が一番良いし、いろんな刺激を受ける。
今回の滞在では最初で最後、一緒に行く生徒さんの勉強になればと、バスのみで行くことにした。
滞在先のサンタ・テレーザから歩くこと20分弱。
ここはセントロのチラデンチス広場。
相変わらずバス停の列のカオスがすごい。
リオのセントロのバス停共通の砂糖が焦げる匂いと、ベーコンの匂いが懐かしく香る。
(この匂いだけは昔から変わらないなぁ)
ここで355(チラデンチス広場発-マドゥレイラ行)に乗るのだけど、
乗るはずだった車両は故障してレッカー待ちの状態で、担当の運転手が機嫌悪そうにずっとスマホをいじっている。
小1時間待ってやっと来たバスに乗り込むとその時点で80%満。
ちょうど18時で帰宅ラッシュのスタート。
この先120%満になる事をこの体は覚えている。
震えるぜ。
バスはセントロの渋滞を抜けるのでとにかく時間がかかったが、ブラジル大通りに出てしまえば少しだけ速くなる。
さぁ、このブラジル大通り。
ある地点から東側はずっとファヴェーラになる。
直訳してみると面白い。
カジュー(カシューナッツの果実の方=カシュー)、ヴィラ・ド・ジョアォン(ジョアォンの村)、ノヴァ・オランダ(ニュー・オランダ)、パルキ・ウニアォン(団結の公園)、バイシャ・ド・サパテイロ(靴職人の低地※諸説あり)。
まだまだ続く、バヘイラ・ド・ヴァスコ、マンデーラ、シャヴィス、アマレリーニョ、ケウソン、コスタバホス、エテルニッチ、パウメイリーニャ、ムキッソ、ヴィラ・バタン、ヴィラ・ケネヂ、カロビーニャ etc…
ブラジル大通りの時点でバスの中は超満員。
無理な体勢で、これまた無理な体勢の生徒のヒロさんに目配せをして一言。
「ようこそ。リオデジャネイロへ。」
郊外のカリオカであるということは、戦士であるということだ。
生きていくという事は本当に険しいことなんだなと、このバスに乗って噛み締めていた頃が昨日の頃のようだ。
さて、ブラジルには残念ながら麻薬が横行している。
だからギャングもいるし、ファヴェーラはあるし、マシンガンもあるし、戦争や強盗が耐えない。
使わないのであまり詳しくはないが、ファベーラに長らく住んでいるといろんな事を教わったり、自分で学ぶことになる。
リオの犯罪組織の名前や、主要なファヴェーラとその組織とボスの名前、武器の名前、薬の名前、ギャングたちの使う専門用語などなど。
今回は薬物について少し触れる。
まず街中でも一番目にすることが多いのが大麻。
貴賤問わず広まっている。
品目も多く、成分を強めたスカンクというものもあり、油断は出来ない。
次がチョロチョロとした科学的なもので、メタンフェタミン系の興奮するやつ。クラブで若気の至りみたいな使い方をしているイメージ。
その上に行くとやっぱりコカインがある。
コカまで行くともう人間やめた感じがする。
ちなみにヘロインは聞いたことがないんだな。
さて。
上記に挙げたもの以外に、これこそ手を出したら人間じゃなくなるものがある。それが今回話したい、クラッキ(クラック)だ。
人からザックリ聞いた話だと、コカインの純度が低いカスみたいなもので、安い。そしてその不純物の毒性でいずれ死ぬらしい。
近くにクラクード(クラック常用者)がいた時に甘い匂いがしたのを覚えている。
このクラック、使うと本当にウォーキングデッドのゾンビのようになる。
さきほど挙げたファヴェーラの中のParque União(パルキ・ウニアォン)、通称P.U(ペー・ウー)だが、その入り口や、車線を挟んで向こう側の中央分離帯にこのクラクードがウジャウジャいる。
本当にネットフリックスのウォーキングデッドみたいで、雨の日に通ると、雨ざらしのダンボール小屋がポツポツと中央分離帯やスロープの真下に見える。
バスがちょうどペー・ウー前で乗客をおろしていると、路上に10人くらいのクラクードたちが互いに寄りかかる感じで、俺の大好きなグァラカンピ(甘いガラナの飲み物)に鼻を突っ込んでその中をライターで炙っている。
すかさずヒロさんに見せてみる。
「これがクラックだよ。」
クラコランヂア。
この言葉はクラックランドと言う意味。
ちなみにディズニーランドはポルトガル語ではヂズニランヂア。
ブラジルでクラコランヂアというとサン・パウロ市が有名なようだが、俺にとってのクラコランヂアはペー・ウー。
P.U前のこの光景を見る度に思う。
クスリ、ダメ、ゼッタイ
バスは通りからペニャ・シルクラールに入り、その30分後に無事道場へ到着。
「今日はガンバー(ヒロさん)は355を体験したよ。」というと、
道場の仲間は「ようこそリオデジャネイロへ」と言っていた笑
余談だが、明らかに外国人のお兄さんが同じバスに乗っていてペニャ・シルクラールで降りていったっけど、あんなとこで何してんだろ。外国人が来るようなところじゃないんだけどな。
混んでいるバスあるあるで、降りようとしているのにドアが閉まって、バスが動いてしまう状態になっていた。
なまりのあるポ語で更に声がひっくり返って「Pera aí, motorista!(ウンテンシュサン マッテ~!)」と言うも、届かず。
外国語を話す時のコツは「伝えよう」という覚悟なのだよ。
見ていたまえ。
「VAI DESCER, MOTOR!(運ちゃん!降りるってよ!)」
(プッシュー)
無事に降りって行った。
人助けは気持ち良い。
だが時に、運転手さんが乗客に強めに言われすぎていて、少し可愛そうになる。