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会社から社員に資格取得を指示したら、給与を払わないといけないの?

会社から社員に資格の取得を指示した場合、給与を払う必要はあるのでしょうか。

給与が発生する労働時間とは、会社の指揮命令下に置かれた時間を指します。
したがって「会社の業務命令で行動している」という時間が、労働時間です。
この中には明示的な命令だけでなく、黙示的な命令も含みます。

給与を支払う必要性の有無は、会社の業務命令と判断するかどうかが争点になるのです。

判断基準として

  • 資格の取得や試験に向けた、会社が関与する程度

  • 勉強時間や内容、方法について、会社が具体的な指示をしたか

  • 資格取得を強制する度合い

などが挙げられます。


労働時間性を有している=給与を払うべきと考えられるケース

業務命令として一定の拘束性を有している

  • 会社が勉強会や講習会の参加を命じる

  • 会社が勉強や模試のスケジュールを明確に指示する 

(例)
「試験日まで毎日夜9時就寝、朝2時起床」
「出勤時刻まで受験勉強」
「試験日までの土日祝、夏季休暇、すべて勉強」
「受験者に過去問の答案提出を促したり、論文の添削を義務づけたりする」
「模擬試験や模擬面接を義務として実施する」

資格が取得できなかった場合に不利益が生じるなどの強制力がある

  • 「一定の資格保持者が必要になった」といった理由から資格試験の受験、受験勉強、講習会へ参加させた

  • 自由参加としながら、参加しないと何らかの不利益がある

  • 資格が取得できなかった際、減給などの不利益がある

これらの場合は一定の強制力があるため、業務命令であると判断するのが妥当だといえます。

労働時間性を有していない=給与は発生しないと考えられるケース

会社の奨励・支援による資格取得

会社が資格取得を奨励し支援措置を提供するものの強制ではないため、資格を持たない社員に不利益は生じない。

 資格を持つ社員の労働条件の優遇

  • 資格取得により手当等で給与がプラスされる

  • 資格取得を昇給の要件にする

上記の場合は資格を持たない社員に不利益が生じません。
したがって、資格取得にかかる時間は労働基準法上の労働時間に該当しないと考えられます。
つまり、業務命令ではないと判断するのが妥当です。


資格取得を命じた社員から「業務指示だったら仕事ですよね?」と聞かれた際は、労働時間性をもつ業務命令かどうかを確認しましょう。

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