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CCUSの近況と、広げた風呂敷は意地でもたたまない国のこと④


くどいのは好みでは無いのですが、もう毎回繰り返しますよ。CCUSの第一目的は建設作業者の年収アップ・処遇改善です。今回は4.「CCUS官民施策パッケージ」の進捗状況、5. 6.ですが枝葉がたくさんついてしまい普段の3倍の文字数ですがどうぞお付き合いください。

この連載のテーマはCCUSの粗探しではなくて、良いところは良いと紹介することでもありました。良い所探しは最後まで続けますが、どうも調べるほどシステムの掲げた目的から遠ざかり、官僚に都合の良い部分ばかりが透けて見えるんですよね。とりわけ4.はその印象が強いです。ここがペケだと全部ペケなんですけど建設業界のかた、そうじゃない業界のかた、多くのかたの目に留まり、考えるきっかけになってくれればと思います。また、大手ゼネコンや業団体の中のかただとSNSに書けないこともあるでしょう。私には一切しがらみがないので、代弁できれば幸いです。このページの一番下には匿名でコメントすることもできますし、トムロ総研のTwitterのDMもオールOKです。あと、言葉使い気をつけます。読み返すと今までちょっと荒れてましたね。


4.「CCUS官民施策パッケージ」(R2.3.23)の進捗状況

「CCUS官民施策パッケージ」(R2.3.23)なんて言葉があったとは。官民一体でやるって意味かな?いや、やれって意味かな。過去のnoteやtweetで触れたことがあるんですが、一見わからないですが本当の全体構想はさらりと書かれた言葉でカムフラージュされています。今回はそのあたりをあぶりだすのでよく読んでくださいね。ではまいりましょう。

解説ポイントはオレンジ線で囲い、緑色の①~⑩がついたところです。かなり長くなりますがどうぞお付き合いください。

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令和5年4月からは、公共工事だけでなく民間工事も問答無用でCCUSの対象になります。その2で、民間工事のCCUS導入工事比率のほうが多かったですね。あとは手続きに慣れるしか無さそうです。民間工事は建築が圧倒的に多いでしょうからあと1年6か月で完全導入となると相当混乱度合の高い期間があるでしょう。あとで触れますが、慣れるという部分でより深刻なのは皮肉にも公共工事の方なんですが。

同じページには収まっているのでもはや難癖レベルで申し訳ないのですが、「完全実施の3つの具体策と道筋」に”レベルに応じた賃金”が入っていないのは直接介入できないからだと思われますがどうも気に入りません。設計労務単価以上のことはできませんから、最後は各社の努力や体力にゆだねられるということになります。ちゃんと言わないのは逃げです。結果を求めるなら国交省の本気を丁寧に伝えることが重要だと思います。


まず建退協についておさらい。そんなの十分知ってるよって方は飛ばしてください。

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厚生労働省が掌握する『建設業を対象に、「中小企業退職金共済法」という法律により、国が作った退職金制度です』一定規模以上の会社員なら使用者側が掛けるので気にする必要はありません。

ここで重要なのは、建設業の職種・国籍に関係なく加入できるということと、条件付きで一人親方も加入できることです。退職金がいらない人は入らなくてもよいです。

今年の10月から10円値上げしますが今1日310円です。12げつ(252日分)あるいは24げつ以上の加入義務があり、12げつで退職すると約20,000円もらえます。5年(1,260日換算)以上勤めないと損します。源泉徴収票をもらわないと受け取り時に所得税が引かれます。元請けが個人別の手帳に赤か青の共済証紙をペタペタ貼ります。めんどくさいです。システム連携による改善点をこの後③で説明します。

個人のCCUSデータと建退協データを結び付けて電子申請できるようにします。合理的ですよね。ペタペタ貼らなくてよくなります。令和2年12月から試行され令和3年4月より本運用されています。それまでの経過を簡単に説明しますと、昨年10月に建設業振興基金に巨額の赤字があることが発覚。そのままだと次年度までに赤字が100億円に膨らむと試算され、国交省が頭を下げたことにより業団体が16~20億円出捐しました。そのおかげで建退協システムとの連動ができたのです。当初より試行時期は遅れましたが。最初の入力はどれも結構大変です。複数のツールをダウンロード、マニュアル読むのかなりめんどい、元下間のデータのやり取りめんどい。その分、提出書類の作成は少し楽かな?DXって言っていいかもしれないけど、簡易じゃないし二度は読みたくない、建退協本部の公式マニュアル貼っておきますね。「電子申請方式簡易マニュアル」


④更なるといってよいかは個人で感想が違いそうですが、③は今年度から簡素化・円滑化について検討するとのこと。後付けのシステムは厄介っていわれてますんでどうかな。今のシステムでもUIはあまり良くない印象です。難易度高そう。私は登録作業したくないと思うくらいには。

20年以上前から、公共事業労務費調査でも社会保険料は毎回確認するようになっています。当初の目的は日額や月額に手が加えられていないかを確認するためでした。毎年所得金額ごとにおよその保険額が決まるからです。

特に日給月給のかたは払っていないケース、多かったですね。しかしそれを放置してきたのは他でもない。国土交通省であり財務省です(当初は建設省、運輸省、農水省、大蔵省)。昭和45年から調査が行われていますが、社会保険料の納付に極めて厳しくなったのはこの10年くらいでしょうか。ゆるかった期間は通算およそ40年です。人口ピラミッドを見れば1980年には年金制度の破綻は簡単に予想できました。個人的にはいまさら何をと思います。良し悪しは理解していますが、その時の手取りが多ければよいと考える建設労働者が多かったのも事実です。私としては監督官庁の怠慢は許し難いですが、将来より今の手取りを選ぶ生き方はありだと思います。ただ現状はコンプライアンスと少子化が大きな問題となり、社会保険の支払いはもともと義務、年金制度が揺らぎ始めたため労働者側も意識を変えていかなければならない時代です。CCUSに年金機構が組み込まれ社会保険の納付を管理することは大変合理的だとは思います。

国直轄のCCUS義務化モデル工事なんですが、まずは言いだしっぺの自分たちの発注分でCCUSの有効性を確かめようということですが、さっぱり上手く行っていません。全てではありませんがモデル工事であるにもかかわらず、CCUSカードを作っていない、作業員数に対してカードリーダーが圧倒的に足りない、タッチしないなど散々な結果で、ここは自ら襟を正さないと全く格好がつかないところです。総研は極めて厳しく監視しています。


ここは泣けるほど同情するところで、直轄工事もままならないのに地方自治体には正規導入に向けてガンガン圧力がかかっています。①の冒頭で匂わせたのはこのことです。通常業務として安定するまでは大迷惑でしょうね。建設業振興基金のバックアップがどこまでできるかが問われるところです。鳴り物入りで立ち上げたCCUSアドバイザーが投入されるのではないでしょうか。まだ30人しかいませんが(現在2期目の30人を募集中)。

令和2年当初の自治体の対応はこんなかんじでした⇩

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その後、令和3年3月末に47都道府県で「検討」以上を表明することとなりました。令和5年にはすべての工事がCCUS対象となるのですから、発注者が知らない訳にはいかないですし、検討中や導入といった対応状況が国交省により随時全国横並びで晒されるのですからそうせざるを得ない。県土整備部や街づくり課の労働力は無限大なんでしょうか。今は非正規公務員も沢山いますし会計年度任用職員制度の施行で皮肉にも増員可能の裏付けができました。この非正規公務員というのも根深い問題なのですが趣旨が異なるので別の機会に書きたいと思います。

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(緑線筆者)


建設技能者のレベルに応じた賃金支払の実現

ここに、5.建設技能者の能力評価について+各職種における賃金目安(年収) 6.能力評価制度に係わる今後の対応を含みました。

私の意見や過去の経緯など織り交ぜながらダラダラと皆さんの貴重な時間とギガ泥棒していて申し訳ないのですが、CCUSの現状と問題点は国交省のこの資料一枚があれば済んじゃうんですよ。もとは各業団体が取りまとめたもので、公表されてからもう一年くらいになりますね。ただ、周辺の仕組みばかりに注力して効果はゼロと言っていい。何度も何度もいうとおり、CCUSの目的は年収アップです。あとは些末なこと。それらは発注者側の利便性にしか寄与しないのですから。

詰まるところ、CCUSでは目標年収は達成できません。目標を定めるところまでがCCUSなんですよ。

賃上げ、年収アップは個別の企業が行うものです。また、よほどの覚悟がない限り建設業だけ賃金が上がることもありません。周辺の仕組みは作り込み次第では省力化されるものもあるでしょう。しかしそれでごはんが食べられるまで影響が及ぶわけではありません。

連載冒頭に書いたとおり国交省、業団体は年2%づつ賃上げ目標を定めましたが、下の表にある年収に達するのに何年かかるでしょうか。それを待っている間に干からびかねないでしょ。企業が独自に決断しなければいけないのです。自分たちではできないのに、これを言わないのが国交省の小ズルいところです。

まずは公共工事・民間工事に係わらず契約時にはこの表をたたきつけるところから始めましょう。

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レベル判定システムについて”建設業許可申請PROセンター”さんのページが上手にまとめられていたので引用します。出典元は「建設技能者能力評価制度推進協議会」です。


更なる利便性・生産性向上

え?CCUSカードとマイナンバーカード+マイナポータルと連携?何が便利になるのかな?それって登録者側じゃなく非登録者の利便性で、登録者情報丸見えじゃないか。 狙いは確実に社保と年金w もれなく、ねんきんネットと社会保険庁が紐づきます。主語はちゃんと書いて欲しいものですねっ。


建設DXに向けた環境整備の実施

予算の一次補正で公金が入った以上は結果を出さねばなりません。CCUSと建退協の連携で書類作成は大幅に減るのでこの目標は達成できるはず。最初は大変でしょうが慣れは必要。グリーンサイトとはもう連携しているので安全書類系は達成済です。書類の削減だけがDXではありませんが、まだまだ書類は多いのでできるところからやりましょう。

幸い大きな節目となり得る技術はそろってきています。CCUSにおけるプライバシーデータなどの秘匿性と改竄を担保するブロックチェーン技術の利用。もはや説明もいらないBIM/CIM、xR技術の積極的な採用。土木建築とはとても相性が良いのでどんどん進めて欲しい唯一の政策です。ここだけは大風呂敷を広げてもいいよ。


今回は以上です。まだまだ重要な項目が残っていますね💦頑張ります。



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戸室  信一
ありがとうございます