『国土強靭化計画』 では足りない!『国土安全化計画』 プラス
暴力的に強大化する豪雨、台風などの気象災害。そして今後予想される巨大地震など自然の猛威に対して、何かを造って身を守るという対処方法には限界があると考えます。私たちは近年充分それを思い知らされてきたと言えるでしょう。多くの人命、専ら弱者が犠牲になりました。中には救えた命があったのではないか、と誰もが自分に問い続けてきたことと思います。
構造物を造ることが主眼の計画を『国土強靭化計画』とするなら、私は『国土安全化計画』も必要だと訴えたいのです。
それは、自然の猛威を受ける環境から物理的に遠ざかる、という考えに基づきます。
令和2年9月に発表された全国地価において、直前までに浸水や堤防決壊、土砂崩れなどの発生した土地は評価額を下げました。そしてその場所は、自治体作成の水害ハザードマップと極めて正確に重なっていたのです。
例えば、河川改修の行われていない蛇行部の外周側には、考えられないほどの力が作用するため、あっという間に越流や提体崩壊を起こし人の命、家屋、財産を奪い得ます。河川の蛇行は、人間生活にとっては都合の悪いことが多いですが、地球にとっては自然に起こることです。
そんな人間が、地上に住むにあたって極めて脆弱な地域というのは明確に存在しています。にもかかわらず、法の整備が経済優先であることにより違法でない限り建設許可がおります。さらに地震国であるわが国において耐震には厳しい基準(建物に限る)がありますが、もともと風水害にも極めて脆弱なのです。
皮肉にも、合法的に家を建てて良いために悲惨な事故が起こると言えます。
国土強靭化計画は今年で二期目になる肝いりの政策です。ここで国土強靭化計画についての資料の1つを見てみます。ここで特徴的な言葉に出会いました。しなやかさとはなんでしょう?
「しなやか」とは「たわむ」の意味だそうです。「しなやかさ」、となると①弾力があって柔軟なさま②考え方や対応が柔軟なさま、とあります。
国土強靭化は正三角形のイメージであらわされていて、その基礎は、人命を守る、経済社会の致命的な被害をうけない「強さ」でできています。その上に、迅速に回復する「しなやかさ」があって、平時からこのシステムを構築しておくことが重要だと説明しています。
ふむふむ、なるほど。いいじゃないですか。「安全」も計画に含まれているんですね。ただやはり国家規模となるとどうしても巨額の費用とかマッシブな構造物を連想しますし、全文でも「脆弱性の分析・評価」をし、「国家として致命的な、起きてはならない最悪な事態を想定」するとなっています。では、しなやかさとは具体的にどういうことでしょう。
同ページ全文
解り易くするために、イメージイラストを見てみましょう。
国土強靭化計画のイメージ
国土強靭化は、大きく3つの領域に分けて考えられています。山から海に向かって、集水域⇒氾濫域⇒河川区域です。河川区域は河川そのものですから人は住めません。集水域は山から平野の手前までのイメージ。日本は世界でも有数な急峻な地形で知られています。簡単にいうと山に降った雨が短距離で海に達するんです。貯まっている暇がない。セーヌ川やメコン川と真逆です。ここでダムが登場します。
ダムは法律によって用途が限定されています。利水ダムと治水ダムについて簡単に説明すると、利水ダムは専ら水力発電など商用に使い、治水ダムは流域の水量を調節するために使います。菅政権が手始めにやったのが利水ダムの治水ダムとしての利用を認めることでした。画期的なことで、これによって河川の氾濫抑止に一定の効果が生まれましたが、それだけですべてが解決するわけではありません。
さらに理解を深めるために、日本国土の特徴について数値をざっくりまとめてみましょう。国土技術研究センターの資料です。河川の特徴が図だとよくわかりますね。
次に氾濫域です。ここが今回のnoteの最も重要かつ改善要素のあるエリアです。なぜなら、国民のほとんどがこの範囲に住んでいるからです。
特に驚くべきことは、標高1m未満に何と298万人が住んでいるのです。
出展:
繰り返しますがこのnoteで最も訴えたいことは、人が家を建てて安全に生活できる土地は限られているということです。人口の増加に伴ってむやみに宅地化させていた時代はもう終わってますし、天災特に風水害から逃れられる土地は、地震と違って明確にわかるんです。人口減の今は、建築許可、宅地開発、不動産取引において重要事項説明の拡充以上に安全の担保が必須となっていくでしょう。そのためには法整備も必要です。
国土安全化とは、国土強靭化策のうち、「しなやか」に相当する部分を、より強固にする考えです。「国家として致命的な、起きてはならない最悪な事態」に立ち向かう手段として、水防法ハザードマップ以上の立地の安全確保、より安全な土地への移転、危険な土地の取引禁止を法制化することまで踏み込んだ独自の考えです。もちろん簡単では無いし、時間もかかります。でもやらなければ多くのものが失われ続けるのです。
内閣府の説明資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/pdf/r01_08yosan.pdf
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/5kanenkasokuka/pdf/kakutaisaku4.pdf
内閣府 予算
安全化の考え方・具体的な意見
SNS上には同様に考えられている方がいます。一部を紹介します。
※大変参考になったため、あえて掲載許可を取っておりません。不都合があれば個人が特定できる部分を消しますので、tomuro.r.i@gmail.comまで連絡お願いします。
緊急追記:とうとうこんな特殊な構造を備えた住宅まで登場しましたが、トムロ総研は懐疑的です。部分のアイディアは素晴らしいですが、地震の際基礎と建物の耐震性が担保できないことを理解したうえで、2回3回流されてもそこに住み続ける自信がある人にしか売れないのでは?そもそも3m浸水の想定される土地に住宅を建てられること自体がおかしいと考えます。(技術と販売を否定するものではありません)