……今日は少々話が長くなる。
異端の魔女とされ『魔術学院レアルカリア』から追放された『魔術師セレン』について語る必要があるからだ。
彼女の居場所は分かっている……リムグレイブ中央に位置する『宿場跡』の地下室に潜伏しており、入り口の手前には『かぼちゃ兜の狂兵』が守りを固めている。
その奇妙で巨大な兜は、狂兵の恐怖心を抑えるために被っているらしく、蝕まれた狂人の精神を操っているのがセレンであるのか、真相は明らかではない。
だが、セレンにとって人の子は「実験体」の一つに過ぎず、己の研究のために犠牲を払うのは当然だと考える節があるため、かぼちゃの狂兵もその一人なのかもしれない。
『かぼちゃの狂兵の遺灰』の伝え聞きにもあるように、『蠅壺』や『蠅たかり』を放つことでかぼちゃの狂兵が混乱状態に陥るので、その隙に攻撃すれば効率良く倒せるだろう。
かぼちゃの狂兵を倒して奥へと進むと、そこには何食わぬ顔で佇んでいるセレンに会うことが出来る。
相変わらず口だけは達者な女だが、所有する輝石魔術はどれも使い勝手が良いため、魔術を極めたい者にとって彼女の教えは魅力に感じるだろう。
【魔術師セレンが所有する輝石魔術 ※順不同】
輝石のアーク(1500)
輝石のつぶて(1000)
輝石の流星(3000)
結晶連弾(1500)
魔力の武器(3000)
魔力の盾(2500)
……話は変わるが、セレンには二人の師がいる。
それは「最初の輝石魔術師」と呼ばれた『源流の魔術師、アズール』と『源流の魔術師、ルーサット』である。
今回はアズールについて詳しく話すが、彼は『ゲルミア火山』の『隠者の村』より北の崖付近へ向かうと、変わり果てた姿で生存を確認することが出来る。
その姿は煌めく輝石で全身を覆われ、頭部は伸び切った青緑輝石に置き換わっており、もはや生命としての尊厳は失われているようである。
アズールとルーサットはレアルカリアの「最高師範」としての地位を得ており、誤った道に進まなければ魔術師たちの尊敬を集めていただろう。
だが、彼らは輝石魔術の源流を追い求め、今ではその力に飲み込まれた哀れで無機質な存在へと成り果てたのである。
余談だがレアルカリアの『カロロスの教室』では、歴史ある魔術として『輝石の彗星』と『ほうき星』を教わる。
特にほうき星はカロロスの教室で得られる魔術として最上位に当たり、学院でも使える者は一握りだと言われていた。
しかしである……そのほうき星すら凌駕する輝石魔術を生み出したのがアズールなのだ。
ゲルミア火山でアズールに話し掛けると、『彗星アズール』という輝石魔術が手に入り、使いこなすには常軌を逸した魔術の知力が必要となる。
アズールは己の力に酔いしれ源流の暗黒を目にしたのだろう、いつしかその身体は変貌し、今では置物のように模糊とした日々を過ごしている。
そんな愚劣極まるアズールの意志を継いだのがセレンであり、私の数少ない友人をも実験体にしたのが彼女である。
……彼女の研究は危険だ、それだけは断言しておく。
<参考資料>