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おやじパンクス、恋をする。#045

この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

 パンクスおやじ四人を引き連れる、女王様。

 俺たちに混じって通りを歩く彼女は、そんな感じだった。

 やっぱ、彼女は独特の存在感があった。

 美人だってのもあるんだろうが、そういうことじゃねえ。なんていうか、オーラみたいなもんがあるんだよ。昔、割と有名な女優を間近に見たことがあったけど、ああいう感じ。その人の回りだけちょっと空気がキリッとしてるみてえな、うまく言えねえけど、とにかく存在感があるんだ。

 その一方で、強気で断定的な物言い、俺らに対して物怖じしないどころか、昔からの友達同士みたいな気兼ねない態度に、俺だけじゃなく涼介タカボンも、すっかり馴染んでいた。

 彼女が俺の誘いにあっさりとオーケーを出したので、俺なんかはむしろ緊張しちまったんだけど、バス停でバスを待ってる頃には涼介を涼介って呼び捨てしてるくらいで、まあすげえ女だ。

 つうかその涼介って呼び方もどこか「リョースケ」って感じで、顔立ちが外人風だからか、外人が当たり前に敬称をつけてないってだけな感じで、全然違和感がねえ。

 とにかく俺たちは俺たちは仲良くバスに乗って隣町まで戻り、俺のやってるバーまで移動した。

 その道中で、なんとなく互いの近況を確認し合ったんだけど、彼女が語ったのは、最近のブームはハワイ風のカフェでパンケーキを食うことだとか、手が小さいから大きな画面のスマホは操作しづらいとかそういうことばっかで、やっぱりあのバカやバカの親父のこととか含め、いわゆる“プライベートな話”はほとんど出てこなかった。

 まあ、人間四十路も過ぎれば皆いろいろあるわけで、言いたくねえことを無理に聞き出そうだなんて無粋はしたくねえ。だいたい、さっき彼女の部屋でボンが言ってた通り、“初恋の相手”と再会できたってだけでもう大事件だ。

 ってことで、俺たちは超久々に会った仲良しグループみてえに、ああでもねえこうでもねえって大笑いしながら歩いていった。

 辺りはすっかり夜で、時計を見たらもう七時半だ。居酒屋やライブハウスやレストランはとっくに開いてる時間だ。まあ俺のバーだってぼちぼち開けてなきゃいけねえんだが、まあ開店時間なんてあってねえようなもんだ。集まる客だってテキトーな奴が多いし、気にするこたねえ。

 それに今日は、できればもう、他の客が来なければいいと思ってた。

 せっかく、彼女が来てくれたんだから。

「ほら、ここだよ。ここが、俺の店」

 俺はそう言って、入りやすいとはとても言えねえ金属製の扉を指さした。


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LOVE IS [NOT] DEAD. 目次へ


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