おやじパンクス、恋をする。#162
皆が、出たとこ勝負のコミュニケーションを重ね、傷ついたり失敗したりしながら少しずつ手に入れていく自己肯定感を、俺は攻撃されてもダメージを受けないこの69というステージの中で、あくびしながら貯めこんで、いっぱいになったからってその辺に投げ捨てていた。
そして、彼女という新しい場所へ一歩踏み出した途端、69や、69で俺を訪ねてくれるたくさんの客達から一歩離れた途端、俺はまるで全身火ぶくれの患者みたいに、ただ吹いてるだけの穏やかな風にすら痛みを感じうずくまっている。
情けない話だ。
だけど、驚きのほうが大きい。
俺はいつの間に、こんなに弱くなっていたんだろう。
いつの間に、出たとこ勝負のコミュニケーションから、こんなにも遠ざかっていたんだろう。
そして今、考えるのは雄大のことだ。
そう、そんな気はしていた。
俺はこうやって悶々としながら、雄大のことを考える気がしていた。
あいつは今、どこで何をしているんだろう。
そしてこれまで、どんな生き方をしてきたんだろう。
どんな気持ちで、彼女に俺と付き合うよう言ったのだろう。
なんだかへこんできた。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。