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おやじパンクス、恋をする。#038

この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

 ビビってんのか、という売り文句には、DQNだったらそれなりにビビッドに反応するもんだ。つまり、カッと頭に血がのぼって、挑発に乗ってしまう。

 だがコイツは予想以上の腰抜けらしい。

 さらに怯えた顔になってゴクリと生唾を飲み込んだ。俺はなんだかうんざりしてきた。

 だが、こちとらここで引くわけにはいかねえわけで、ああクソ、と思いながらも俺は再度、つまり三回目だが、チェーンを解除して扉を開けるようこのバカに言った。

 「わ、わかったよ」とバカはやっと同意した。

 俺がブーツを引き抜くと、バカは上目遣いに俺をチラ見して、扉を閉めた。また鍵かけちまうかな、鍵かけて電話で仲間に連絡して応援に来させたりすんのかなって当然考えたんだが、扉の中からはチェーンを外す音が聞こえてきて、俺はもうなんていうか、拍子抜けしちまった。素直過ぎだろ。なんなんだよコイツ。

 キイ、って音を立てて扉が控えめに開けられたので、俺は再度ドアノブを引いてやった。今度はバカがびっくりしねえようにゆっくりと、だ。もう俺の中で、小学生とかのガキを見るような感覚になってたんだよ。

 バカは俯いてそこに立ってた。その向こうの一番奥、赤いカーテンのかけられた窓枠に寄りかかるようにして、こちらを見ている彼女がいた。バツの悪そうな表情をしている。扉の外にいるのが俺だって分かってたんだろうな。

 俺は俺で、一応は玄関まで入って後ろ手に扉を閉めてみたものの、怒りの落とし所を見失ったっていうか、何をどう言っていいのか分かんねえような気まずい感覚はあって、要するにそこにいた三人全員が、何となく嫌な沈黙の中にあったわけだ。

 その時、どっかから笑い声が聞こえて、ああ、俺がこんなよくわかんねえ気まずさに耐えてる時に呑気な奴もいたもんだなと思ったが、その笑い声はどんどん大きくなって、俺の背後、つまり扉の前までやってきた。

 直後、扉が躊躇なく開けられて、そこにニヤニヤしたあいつらが立ってた。


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LOVE IS [NOT] DEAD. 目次へ

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