おやじパンクス、恋をする。#068
「なあ、無理かな。梶さんって人、会ってくれねえかな」
「お前……」カズは呆れたように言った。「なんか思考が涼介みたいだぞ」
「おい、そりゃ言い過ぎだろ」俺は笑って言った。「あんなキチガイと一緒にすんなよ」
ふっとカズも笑って、そして首をひねり、うーん、どうかなと言った。
「いや、会えるか会えねえかで言ったら、別に会えると思うよ。さっきも言ったけど問屋町に居るってのは分かってるわけだし、まあ、親父の名前でも出せばアポも取れるだろ」
「そうか。それ、お願いできるか?」
「いやいやちょっと待てよ。だから、会えるは会えるけど、問題はそこで何を話すかってことだろ? もう爺さんだとしたって、それなりに熱い爺さんだぜ。いきなり訪ねてきたガキンチョに舐めた事言われて、ニコニコしてるような人じゃねえよ」
「いや、別に舐めてねえよ、舐めてねえけど……」
俺が俯いてブツブツ言っていると、ふっというカズの笑い声が聞こえた。
「まあ、でも、面白いからいいか」
「え?」
「黒幕の登場、ラスボスとの対決」
「なんだよそれ」
「バツイチモヒカン四十男の、初恋応援プログラム」
「バカにしてんのか?」俺は言いながら、笑った。
「まあ、しばらく時間くれよ、何とかすっから」
カズはそう言ってビールを煽ると、回りの客が顔をしかめるくらいでっけえゲップをした。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。