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おやじパンクス、恋をする。#096

 くだらねえと思うか?

 そうだよな。くだらねえよな。

 けど俺は単純だから、彼女の顔を見たら多分、雄大やら嵯峨野やら梶商事やらのことを考えちまうって、分かってたんだ。

 いやそれ以前に、俺はどっかで、彼女の顔を見ること自体にビビってた。

 わざわざ思い出すまでもなく、彼女と会ったのは俺らが彼女の家を突撃したあの日、一度だけだ。

 彼女は俺らと一緒にバスに乗って、一緒にこの店に来て、一緒に飲んで、飲み過ぎてつぶれた俺を残して、帰っていった。

 メッセージの書かれたフライヤーに、連絡先はなかった。

 彼女は俺を、通過していった。

 俺がどう思っていようと、それは俺の勝手な都合だ。

 そもそも彼女には梶さんっつう「男」がいて、雄大やら嵯峨野やら、やっかいな野郎がその回りをうろついてる。

「知るかバカ」

 俺は言って、彼女の写真、俺の手元にある彼女の唯一の写真を、画面に表示させた。

 久々に見た彼女は、その画質の悪い写真の中で、笑っていた。

 酔っ払った涼介タカボンと、俺と一緒に。

 俺は思わず頬が緩むのを感じた。

 結婚して所帯を持ってるようなダチは、どんなに疲れていても、どんなに気分の悪い時でも、自分のガキの顔を見れば無条件で微笑んじまうって口を揃えて言う。

 あんまりピンと来なかったが、今は何となく、分からなくもない。

 見てるのはガキじゃなくて大人の女、いや、紛うことなき「おばはん」なんだが、俺はもう、否定しようがないほどニコニコしちまってるわけでさ。

 だけど、ふと、今までとは違う感じを受けた。

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LOVE IS [NOT] DEAD. 目次へ

この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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