ろうきん森の学校とは?
ろうきん森の学校事務局です。
この度、noteによるWEBマガジンを創刊しました。
【ろうきん森の学校とは】
ろうきん森の学校は、2005年10月、労働金庫連合会(以下、労金連)50周年記念社会貢献活動として「森づくりから始める人づくり、地域づくり」を理念にスタートした、森林環境教育活動です。※公式サイトはこちら
全国3地区(福島、富士山、広島)でスタートした活動は、2015年4月から新潟・岐阜の2地区が加わり、全国5地区で活動を展開しています。2021年3月末時点で、のべ21万8000人が活動に参加しました。
「ろうきん森の学校」は、労金連が活動資金を支援し、NPO法人ホールアース研究所を主管団体として、全国5地区(福島地区=NPO法人いわきの森に親しむ会、新潟地区=NPO法人かみえちご山里ファン倶楽部、富士山地区=NPO法人ホールアース研究所、岐阜地区=NPO法人グリーンウッドワーク協会、広島地区=NPO法人ひろしま自然学校)で実施しています。
企業がNPOを支援する活動はよく聞きますが、同一団体に対して10年以上にわたって一貫して支援している「ろうきん森の学校」は、非常に珍しい事例といってよいでしょう。
また、「森づくりから始める人づくり、地域づくり」の基本理念を共通にしつつも、各地区の特性やNPOの特徴を活かした、独自の活動を展開しているのも、ろうきん森の学校のユニークな点です。
例えば、福島地区の「NPO法人いわきの森の親しむ会」は、定年後の会員が中心で森づくり活動を行っています。一方、岐阜地区の「NPO法人グリーンウッドワーク協会」は、生木を加工する木工=グリーンウッドワークを中心に、里山整備で出た材の新たな活用法を提案しています。新潟地区の「NPO法人かみえちご山里ファン倶楽部」は、上越市の中山間地をフィールドに、地域課題の解決に正面から取り組んでいます。
このように、ろうきん森の学校のNPOは独自の活動を展開しつつ、共にろうきん森の学校に取り組んでいます。
【ろうきんって何?】
「ろうきん」を知っていますか。ろうきんとは「労働金庫」の愛称のことで、1950年(昭和25年)に岡山県と兵庫県で最初に設立された≪はたらく人のための≫協同組織の金融機関です。現在、全国には13 のろうきんが存在し、「ろうきんの理念」に基づく運営がなされています。
今では想像しづらいのですが、ろうきんが設立された70年ほど前は、勤労者が金融機関からお金を借りることは難しく、お互いを助け合うために資金を出し合ってつくった金融機関です。労働金庫法に基づき営利を目的とせず、公平かつ民主的に運営されており、会員は全国で約1000万人います。
ろうきんの業務内容は預金やローン・各種サービスなど、一般の金融機関とほとんど変わりありませんが、唯一のはたらく人のための福祉金融機関です。
【なぜ金融機関が森の学校なの?】
ろうきん森の学校は、金融機関である労金連が10年間に亘って地域のNPOを通じた森の学校活動を寄付という形で支援する全国的にみてもユニークな活動です。ではなぜ、このような取り組みをするに至ったのでしょうか。開校時の労金連の理事長である岡田康彦氏は次のように語りました。(5周年記念シンポジウムより)
「CSR(企業の社会的責任)の定義は3つの段階がある。最初はコンプライアンス(法令遵守)。2つ目は自社事業を通じた社会的課題の解決。3つ目は社会共存していくためのもう一歩踏み出した活動。例えば社員のボランティア参加や寄付といったものだ。金融機関を例にすると、環境問題に対する取り組みに積極的に融資する、金利を優遇するというもので、かつてのメセナのように収益に連動してやったりやらなかったりするのはいけない。
しかし、ろうきんは設立の経緯から見て勤労者のための金融機関という理念がある。そのため、ややもするとろうきんは活動そのものがCSRであるという議論になりかねないがそれは違うと思う。設立50周年の記念に何かやりたいと思い(中略)結果的に環境分野に取り組もうということになった。
その際、3つ目の一歩踏み出した活動に取り組むことになった。ろうきんは法律や定款でできることが決まっており、自分たちでやりたくてもできなかったため、既存のNPOの活動を支援しながらそのフィールドを借りて、職員や顧客である労働組合の方に使わせて頂くという方式をとることにした。」
つまり、様々な歴史的・社会的背景から、勤労者のための金融機関であるろうきんにふさわしいCSRとして検討を重ねた結果、一歩踏み出した環境活動として「ろうきん森の学校」が始まったのです。
【ろうきん森の学校の活動と特徴】
「ろうきん森の学校」の活動の柱は以下の3つです。
1.森を育む(植樹、間伐、下刈り等の森林整備活動)
2.人を育む(森づくりや環境教育リーダーの育成)
3.森で遊ぶ(里山を活用した自然体験・環境教育プログラムの開発と実施)
従来、企業がCSR活動として取り組む森づくりや、里山整備は「木を植える」ことが中心でした。確かに荒廃した場所や、津波被害を受けた沿岸部に植林することは大切です。しかしながら、日本には放置された里山・植林地が数多くあり、こうした森を適切に整備することで、生態系の多様性を取り戻し、また、人々が憩う空間としても活用できます。
ろうきん森の学校で取り組む「森を育む」は、植樹だけでなく、間伐・除伐といった積極的な整備に重点を置いています。また、「人を育む」は、そのために必要な技術や、整備後の森林空間を活用した環境教育プログラムを企画・運営することができる人材育成に取り組みます。そして、最大の特徴の1つは、「森での遊び」を通した楽しい体験を提供することです。そうすることで、活動への興味関心を高めるきっかけとなるだけでなく、「楽しいから続けられる」という参加動機の継続が期待できるのです。
さて、ろうきん森の学校のもう1つの特徴は、個性あふれる各地区NPOの担当者、そして活動を支えていただいている地域の皆さまといった、まさに「人」にあると言って過言ではありません。名前の通り、ろうきん森の“学校”には、多様で多彩な人々が集っているのです。この道20年以上のベテランから、都会から飛び込んできた若者、子育て中の親世代、、。それらの人々が、どのような想いで活動に取り組んでいるのか、どのような経緯で活動を始めたのか。10年単位という長期的な活動である、ろうきん森の学校ならではの、「人が育つ」「人が変わる」プロセスを目の当たりにできるのが、ろうきん森の学校の特徴です。
【オンライン版ろうきん森の学校だよりをはじめます】
ろうきん森の学校は、これまで毎年夏に「ろうきん森の学校だより」という年報を発行していました。これは主に、ろうきん森の学校の関係機関・団体や、活動参加者に配布していました。全国5地区にわたる活動を俯瞰することができるだけでなく、共通課題や時事問題のコラムも掲載してきました。
しかし、2020年にはじまった新型コロナウイルスによる感染拡大が与えた影響は大きく、各地区の活動は縮小・休止せざるを得ない状況が続いています。広報誌の配布機会が大きく減っただけでなく、対面でのコミュニケーションすら、取りづらい状況が続いています。
そこで私たちは考えました。こんな状況だからこそ、できることは何か。それはオンラインのメリットである、手軽でスピーディーな情報発信や、SNSとの親和性による双方向・拡散性を活かした、新たな情報発信にチャレンジしようと。
このオンライン版「ろうきん森の学校だより」を新たな発信の場とし、ろうきん森の学校に関わる「人々の“今”」をお伝えしていきます。一人でも多くの方とつながり、共に何かを生み出すきっかけとなることを願っています。
ろうきん森の学校全国事務局(NPO法人ホールアース研究所) 担当:大武圭介